漆黒の夜は極彩色の夢を 〜夢日記ショート·ショート~

羽瀬川璃紗

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アドバイス ※子供の死亡表現あり

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 21歳になっていた私は、仕事であるイベントに参加する事になっていた。


 そのイベントは県が主催する『母親と乳幼児』がメインのイベントで、私の勤める会社も協賛していた。

 その為、『若い社員に異業種交流をさせる』という観点から、勤務3年目の私と勤務5年目の先輩:トヨハシが推薦され、参加する事になったのだ。


 イベントの準備中に、内部を見学する事になった。

「こちらが、ママさんとお子さん達の待合スペースです。椅子から転げ落ちないよう、椅子は置かずカーペットラグを敷いた床に、自由に座って過ごしてもらう予定です」

 ふと見渡すと、端に折り畳まれたベビーベッドが放置されていた。私は案内係に尋ねる。

「あのベビーベッド、当日組み立てるんですか?」

 案内係は首を傾げる。

「え? あれって、ベビーベッドなんですか?」

(いやいや、サイズ的にそうじゃん)

 案内係は近くで確認するとこう言った。

「うーん、多分そうですねぇ。でも、待合スペースにあると邪魔なので、後で撤去しますね」

「いえ、無いと大変ですよ? ここのトイレ、オムツ替えスペース無いですし、オムツ替えでベビーベッドを使うママさん居ると思いますよ」

 私が反論すると、案内係は子育て未経験なのか、頭にハテナマークを浮かべていた。
 共に見学をしていた、40代くらいの別の会社の女性は、大きく頷いた。

「そうですね。赤ちゃんと言っても寝返り打てない子から、ハイハイ出来る子まで様々だから、他の赤ちゃんの手が届く場所でオムツ替えしてると、汚れたオムツ引っ張っちゃう事もあるからねぇ。
もう1台あるといいと思います」

 案内係は眉根を寄せた。

「うーん、あと1週間以内にもう1台ですか…」

 私は提言する。

「買わずにレンタルは?」

「上と相談します」


 次に案内されたのは、赤ちゃんの遊び場兼相談スペース。そこも、現実世界で子育て経験のある私から言わせれば、対策が穴だらけ。

「せめて廊下への出入り口の手前に、ベビー用の柵がないと…。廊下出るとすぐ階段だから、うっかり出ちゃうと危ないですよ」

「ここのコンセント、コンセントカバーを付けたいですね」

「授乳スペース、もうちょっと長いカーテンで区切ってある方が…」


 見学が終わり控室で待機していると、トヨハシが口を開く。

「沢木って、子供居ないよな。甥とか姪、居たっけ?」

 未婚の私が、『子育て経験者』にしか分からない問題点を次々と指摘したので、訝しがっているようだ。

「居ないですよ。甥姪も居ないです」

 私はガラケーを弄りつつ、答えた。トヨハシは私だけ褒められたのが、お気に召さないらしい。

「はあ。予習が大事ってやつですかぁ」

「…いいえ」

 私はトヨハシに、窓辺のブラインドカーテンを指してこう言った。

「あそこに、ブラインドがありますよね。あれで、どんな危険があるか想像して見て下さい。簡単ですよ」

「えー? …窓開けて落ちるとか?」

「いいえ」

「想像出来ねえよ。どうでもいい」

(どうでもよくないんです、トヨハシ先輩)


 あなたは1年後に、今付き合ってる彼女とデキ婚するんです。
 いつもの様に携帯を弄ってる時に、1歳になったばかりの娘さんは、ロールカーテンの紐を首に絡ませて、窒息死するんです。

 あなたは手の届く場所で、娘さんが死んでいる事に、数分だけ気づかなくて一生後悔するんです。

 時が流れ、娘を連れた私と再会した時、あなたは泣きそうな顔で言います。
 『絶対に目を離すなよ。むしろ周りの物から起きてない危険を想像しろ』って。


(これは私からでは無く、未来のあなたからのアドバイスなんです)

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