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水の大陸編
強くなりたい、世界を知りたい
しおりを挟む飛び起きるように目を覚ました陽介は、フラムとアリエッタに深く礼を言って、急いで新たに取得したスキルを確認する。
絆の力:戦闘中一度だけ、同意を得られた場合のみ精霊の力を借りて使用できる。
「これならいける! 二人とも、力を貸してくれ。絶対にあいつをぶっとばす!」
燃える決意を宿した陽介の言葉に、フラムもアリエッタも、力強く頷いた。
短剣を握りしめる陽介の手に二人の手が重なって、剣先から光が立ち昇る。突き刺すように前に出すと、光線となってアルデバランめがけて放たれた。
「こんなもの! 来れ魔法弾幕マジックアロー、我が盾となれ魔法防御壁マジックバリア」
アルデバランは杖をかざし呪文を唱え、より強力な弾幕とバリアを張るが、矢は水に溶けるようにかき消され、バリアは突き破られて光線が直撃した。悲鳴を上げて激しく燃え上がり、姿が見えなくなった。
「……移動魔法ワープで逃げたか」
フラムは空をキッと睨みつけた。
「あー、死ぬかと思った~途中まで行ったけど」
緊張の糸が切れた陽介は、へなへなと腰を抜かし、その場に崩れ落ちた。
敵が去り静かになった湖の水たまりに、アリエッタの手が触れる。清らかな水が溢れ、枯れていた湖にコポコポと波紋が広がっていく。ある程度水位が上がると、自然と湧き出し川に流れていった。愛おしそうに水面を撫でるアリエッタは、無垢な少女の様だった。
目的を果たした一行は町へ戻って、治癒師の元で一晩を過ごした。不思議なことに、ぐっすり眠れば頭はすっきりして、体も調子が良くなった。この世界では、眠ることで体力や魔力が回復するらしい。
もしまたアルデバランと戦うとなれば、装備の強化は必至だとフラムに言われた陽介は、盾が壊れてしまったこともあり、修理店に行った。
「……珍しいこともあるもんだ。お客さん、こりゃダメだよ。ステータス見てみな」
そっけなくつき返された短剣の詳細をステータスから見ると、端っこの方に小さく「強化不能」と赤文字で書かれていた。
「そんな、強化できないなんて! どうにかならないですか?」
「普通、メルシィくらい価値のある短剣はこんな状態にならないんだけどねぇ。悪いが、うちじゃ無理だ。バックラーなら新品があるけど、もっと強い武器が欲しければ行商人を待つか、風の大陸に行くしかないね」
と、肩を竦められた。結局バックラーだけを購入し、とぼとぼ町を歩く。
「盾はともかく、武器の強化も不可能とは……エルメスめ、どこまでも陽介を不利な状態にするつもりか」
フラムは卑怯な手段に怒り、アリエッタが宥めている。
「だが、風の大陸に行けばいいのだとわかれば一石二鳥。早く──」
言葉の途中で、陽介は「待った」をかけた。この世界について、自分は何も知らない、二人がいなければ何もできない。早くエルメスを倒さねばならないのは理解しているが、頭と体を鍛える時間が欲しいと頼んだのだ。
一週間だけの約束をして、陽介は働きながら図書館で勉強したり、旅の冒険者に剣を習った。この世界の文字はひらがなを崩したようなものなので、読みにくいが書いてある事柄は理解できる。
所々ページが欠けている創生神話や説明部分が真っ白な精霊信仰についての本、魔族の図鑑など、日本には無いことが書かれたものを読んだ。わからないところはフラムとアリエッタに尋ね、改変されていないことを確認しながら。
剣術は素人な上に対応する職業でなく、スキルも無いので、ほとんど上達しなかった。強くなりたい気待ちの焦りもあり、思うようにならない。
「やっぱ、無理なのか……」
貸してもらった剣を投げ出し、大の字になって寝そべっていると、フラムがトコトコやってきた。陽介の隣に座り、高い空を見やる。
「練習は順調か?」
「ぜーんぜん。何回教えてもらっても、基本的な動きすら上手くいかないや」
そうかと応えてフラムは黙る。しばらく無言の時間が流れ、静寂を破ったのは、陽介の方からだった。
「フラムさんにはあんなこと言ったけど、スキルとかステータスとかで本当に全部決まっちゃうんだな、ここは」
「今はな。このまま諦めるか?」
「……」
陽介は言葉に詰まった。
「答えられないのは、心が燻っている証拠だ。また火をつければいい。諦めずに立ち上がれるのは、人間だけだぞ?」
フラムは前足でペチペチと陽介の頬を軽く叩くと、宿の方に歩いていった。
「やってやろうじゃん!」
陽介は体を起こして、投げ出した剣を拾って握った。
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