超レア消費アイテム生産者の異世界つえー物語~今ならもれなく全紛失したら死ぬ特典付きです~

安居 飽人

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序章

13. 過度すぎる礼と封印作業

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翌朝……

 そんなこんなで久々に朝早くに起きて引っ越し作業です。異空間収納アイテムボックスがあるから荷造りとか楽なんだよな…。これを使った引っ越し屋さんだったら儲かるかもしれないぞ。

「おうオルタ君、おはよう」
「あっ、カイナさん」

 引っ越し作業も終盤というところで、昨日盗賊に斬られ重傷を負った護衛兵士カイナさんと出会った。出歩いている所を見ると、もう問題ないように見えるが…

「もう大丈夫なんですか?」
「ああ。正直暫くは寝込むと覚悟していたんだが、奥様の治療と君のくれたポーションのおかげですっかり元通りよ!」
「あんまり無茶しないでくださいね?緊急とはいえ、効果の過信は禁物ですよ」
「そうだな、だが君のおかげでこうして復帰できた。君は旦那様の言う通り、エバーライフ家皆の命の恩人だ。一度でも礼は言わないと気が済まなくてな…」

 正直言って、過度すぎる礼だと思うのだが。現代日本でもここまでは少数例しかないね。
 因みにこの家ログハウスはこのまま残しておくことにした。侵入者防止と状態維持の結界を施していくので劣化もしないし、いざという時の避難先としていつでも使用できるようにする。この家とも暫くお別れか…名残惜しいが、戻ってくる際はちゃんと掃除とかをしないとな。

 さて、次はイナヅマを小さくする結界魔術を披露する番だ。
 全員が朝食を食べ終えて、侵入者防止用の結界を解除した庭に集まっている。

「さてイナヅマ、準備はいい?」
《いつでもいいぞマスターオルタよ》

 イナヅマに確認を取り、準備に入る。因みにこの時のテレパシーのチャンネルは全員に聞こえるように設定している為、イナヅマから発せられたテレパシーに皆が仰天している。

「神獣の声なんて、初めて聴いたな…」
「心地よい声、それに会釈までも…」

 各々の反応を他所に、俺は封印術の準備を始める。

「オルタ君、これからどんな魔術を披露するのかしら?」
「これからイナヅマに行うのは、『血力封印ちりょくふういん』です。まあ昨日仰ったとおり、使い魔の負担を出来るだけかけずに体格と魔力を封印する術式です。無論魔獣使いビーストテイマーとの血の契約なので、解除すれば元に戻ります」

 アルリスさんにそう説明する。
 "アウェイクスピリットオンライン"でも封印術というのは存在していた。ほとんどがプレイヤーに対するものであって、使い魔に対しては極力少ない。これから街を歩く際に偶然見つけた封印術なのである。と言っても、夕食後に誰も見てないとき、スマホの"SHOP"から"SKILL"という項目が追加されていたのだ。
 その中には、ゲームでは実装未実装問わず珍しいスキルを取り扱っている。当然強力なものほどオーブの消費量は凄いが、今の所持量ならば試したいスキルが沢山あった。今回はそのお披露目だ。

 やり方は、まず巻物を目の前に広げる。
 そこには既に術式が組み込まれている。因みにゲームの方のオリジナルに当たる為、アルリスさん達から見れば未知の術式でコピーは難しいだろう。そして親指の皮膚を噛み、自分の血を出す。
 次にその血を巻物に塗り、てのひらを確認する。そこには、巻物に書かれた術式と同じ模様が描かれていた。これがいわばドアの《鍵》と《鍵穴》のような役割だ。第三者が利用する為には、術者の腕ごと斬る暴挙でしかないだろう。術者本人の血と手を奪えない限り、この魔術は成立しないのだから。

 そして、忍者のように軽い『印』を結ぶ。こうして、スキルを発動させることが出来る。

「封印術、『血力封印ちりょくふういん』!」

 スキルが発動し、巻物から青いスライムのようなぶよぶよとした物体が吹き出る。
 それらは真っ直ぐにイナヅマに向かって、体を徐々に包み込む。やがて全身が隠れると、今度は目がくらむようにイナヅマが光りだし、その姿はみるみるうちに小さくなっていった。

「なんと…!」
「イナヅマ様が、こんなに小さく!?」

 先程まで巨狼が経っていた場所には、人間の肩に乗れるくらいの子犬がそこにいた。
 勿論、イナヅマの特徴を大きく残している子犬である。デフォルトを幼体化したようなものである為、当然アルナは…

「可愛いです!!」
 
 このように目をキラキラ輝かせながら、興奮気味に萌えていた。
 因みにアルリスさんや他のメイドさん達も声には出していないものの、その愛らしい姿から顔を赤くしている。

「さて、これで良いのか?」

 支度も整え、初めての旅に出発するときだ!
 懐かしむ気持ちに区切りを付け、後ろを振り向く。そこにはこれから共に過ごす15名が待っていた。

「はい、行きましょう」
「それでは、行くとしよう」
「よし、出発だ!!」

 全員が馬車に乗り込み、離れていくログハウスを背に…俺は新たな一歩を踏み出した。
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