超レア消費アイテム生産者の異世界つえー物語~今ならもれなく全紛失したら死ぬ特典付きです~

安居 飽人

文字の大きさ
28 / 42
第1章 異種族交流編

25. 入学試験

しおりを挟む
「オルタ様…高等魔術学園の入学試験受験票を、お届けに参りました」

 試験の数日前、スチュワードさんさんからある物を受け取る。
 それは、ようやく手元に届いた高等魔術学園の試験を受けることが出来る受験票だ。いたってシンプルな紙であるが、前世の大学受験のような感覚を思い出して物凄く緊張してしまった。

「そっか、いよいよだな…」
「そう気負わずとも兄様ならば大丈夫でしょう。むしろ首席合格も狙えますよ!」
「そうね、オルタなら間違いないわ」

 相変わらずアルナと母上から過度な期待をされている自分。因みに、父上からは優しい微笑しか向けられていていない。入学試験については、ゲーム内の生徒同士の会話で"筆記"と"実技"に分かれているのは知っている。その総合点数によってクラス分けをしているらしい。
 "筆記"はゲームの知識と勉強している分まだいい…問題は"実技"だ。全力でやるのは当然だが、全開でやるのは得策じゃない。まだ世間では秘奥義ともいえる"雷属性"は使わない方がいいだろう。結界魔術も同様か…

「この試験でイバール家にぎゃふんと言わせましょう!」
「ん?お前達、イバール家と出会っていたのか?」
「えぇ…というか向こうから挑発と因縁をつけられました…」

 思い出したくない記憶が蘇る。父上も、出来るだけイバール家とは避けてきたからな…
 だが、アルナの言う通りだ。ああいう奴らには実力で示してやるのが一番だ。

そして、試験当日。

「よぉオルタ、先に来てたんか」
「タケシか」

 魔術学園の校門前、そこで偶然にもタケシに出会った。しかもいつものようなチャラい服装ではなく、ビシッとビジネスカジュアルのような服装で来てる。

「自信はあるか?」
「あぁ、お前に勉強教えてもらって自信マシマシやで」

 タケシの様子に俺は感心している。
 試験前だというのに、俺と違って緊張している様子が見られない。あれか?この間貴族たちに馬鹿にされても何度でも立ち上がる不屈の闘志の持ち主か。この時点で精神面じゃ俺より上である。

「おや、やっぱり来たのか落ちこぼれども」

 そんな感動をぶち壊すような声が、別の所から聞こえてくる。
 振り返ると、そこにはクスクスとこちらを見て笑っているレシアとムーダーがいた。しかも、彼らのすぐ後ろには馬車が通り過ぎるのが見える。まさか、馬車でここまで来たのか?

 一般的に馬車で来るのは規則違反ではないが、馬車は貴族くらいしか所持していない。なので、この人達は貴族だとすぐにわかるし、平民出身からは余計な不安を持ちかねない。例えるなら、試験会場に場違いな高級外車でやってくるようなものだ。

「まぁ貴方たちが落ちるのは分かっておりますし、特別にその情けない瞬間を見てあげる」

 こいつら…試験前だというのに、この場にいる受験生全員に対して大声で禁句を言いやがった。俺達だけでなく全員にだ。空気ぐらい読んでほしいよ!

「そこまでよ」
「ッ!貴方は…」

 そこで、俺達に誰かが割って入る。どちら様だ?

「高等魔術学園では貴族平民問わず、受験者や生徒は皆平等。これを害する事は、優秀な魔術使いの成長の芽を刈り取る行為であり、これを破った者は厳罰に処する。王家が定めた高等魔術学園の校則であり、貴族であればより厳罰になるという事をお忘れかしら?」
「く、それは…」

 あの二人が急に大人しくなった。それにこの喋り方は…。

「それとも、先程の発言は学園のひいては王家に対する叛意なの?」
「そ、そんな事は!」
「ならばこれ以上騒がないことよ。ここは入学試験会場、受験者の心を乱す様な事をしないで」
「……………チッ」

 そう舌打ちしながら、彼女に怨みが篭った様な視線を向けてから立ち去って行った。

「貴方たちも早く会場に向かいなさい、あんな者を相手にするのは損よ?」
「女帝…」

 タケシの一言で、この女性の正体を看破する。

 "クレア・ブルーローズ"…
 現ブルーローズ帝国国王の一人娘、後の女帝となる人物だ。ゲームの設定と同じく生真面目な委員長気質の女性である。黒髪のロングヘアーでサファイアのような瞳を覗かせていた。
 
「ん? ああ、全然大丈夫だ。というか、数日前に因縁つけられただけだから何の問題ない」
「おいオルタ…!」

 今自分達と話しているのが、国の最高権力者の女性と気づいていないのかタケシが注意する。悪いなタケシ、俺はこの人を知っているからをとっているんだ。

「?変わってるわね貴方…ああ、自己紹介が遅れた。私の名はクレア。クレア・ブルーローズよ。一応ブルーローズ家の跡取りなんだけど」

「へえー貴方が…」

 俺のあまり驚かない態度に、目を丸くするクレアさん。

「本当に変わってる人ね。私が女帝だと知った人は途端に媚びてくる人か隠れて敵意を向けてくる人ばかりなのだけど」
「別に、内心は驚いてるよ」
「そう?話し方も変えようとしてなくて、自然体のように見えるわ」
「…さっきアンタが言ったじゃないか?ここはだと。だったら、いくら相手が女帝サマとはいえ、ルール上敬意を表したらそれこそ失礼になるんじゃないか?」

 会場全体に衝撃が走る。
 受験生の身分で、目の前にいる女帝をアンタ呼ばわり。普通ならば処刑ものだと誰もが覚悟した。

「ふふ、本当に恐れ知らずの変わった人ね。まるでを相手しているみたい」
「そりゃどうも…と、そろそろ時間か」
「それじゃ、お互い頑張りましょう。次に会うのは入学式ね?」
「はは、そうなる様に頑張るよ。というか、これから魔術を極める者同士、家に遊びにこない?」
「それはお誘い?生憎だけど、王族の身としては軽々しく出歩けないわ」

 そんな会話が終わり、受験前に女帝様とあり得ない普通の会話を目の前で見て呆然としてたタケシをすっかり忘れていたのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん
ファンタジー
ブラック企業で心をすり減らし過労死した俺が、異世界で手にしたのは『ポイント』を貯めてあらゆるものと交換できるスキルだった。 「今度こそ、誰にも搾取されないスローライフを送る!」 そう誓い、辺境の村で農業を始めたはずが、飢饉に苦しむ人々を見過ごせない。前世の知識とポイントで交換した現代の調味料で「奇跡のプリン」を生み出し、村を救った功績は、やがて王都の知るところとなる。 これは、ポイント稼ぎに執着する元社畜が、温かい食卓を夢見るうちに、うっかり世界の謎と巨大な悪意に立ち向かってしまう物語。最強農民の異世界改革、ここに開幕! 毎日二話更新できるよう頑張ります!

異世界転生した女子高校生は辺境伯令嬢になりましたが

ファンタジー
車に轢かれそうだった少女を庇って死んだ女性主人公、優華は異世界の辺境伯の三女、ミュカナとして転生する。ミュカナはこのスキルや魔法、剣のありふれた異世界で多くの仲間と出会う。そんなミュカナの異世界生活はどうなるのか。

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...