超レア消費アイテム生産者の異世界つえー物語~今ならもれなく全紛失したら死ぬ特典付きです~

安居 飽人

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第2章 学園下克上編

34. ざまぁになりそうな報告

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「では、定例会議を始める」 

 オルタ達が学園で授業と訓練を行っている頃、王城では名のある商会が集まった定例会が行われていた。
 毎月行われているその定例会では各商会長が月例報告をしており、それぞれの物品の売買を売り上げを財務局長に報告している。

「………。」
「………。」

 当然、ノーマンもエバーライフ商会長として毎月参加している。
 しかし、その顔つきはいつにもまして緊張しているようだった。そして、財務局長と一緒に国王も各商会の売り上げリストを確認しながらチラッと黙っているノーマンを横目で見る。

「さて次はノーマン殿だが……どうしたノーマンさん、何か問題でもあったのか?」

 カーネル=アーリマス…ブルーローズ帝国の財務局局長であり、この定例会議を取り仕切っている男から心配された。この男は財務局局長という立場に加え、金の流れについては厳しい人物で不正であれば1ゴールドでも見逃さないという意味で有名であった。

「ふん、どうせ売り上げが良くなかったのでは?」

 そう不満げに口を開いたのは、反対側に座っている男性。
 あの男はイバール商会の会長。そう、勇者ムーダー・イバールの父親なのだ。息子が勇者という大役に選ばれてから、それに乗じて商会の売り上げはうなぎ登りであった。今ではどの商品でも、イバール商会の取り仕切るものであるならば独占されてもおかしくない位だ。当然、今月も売り上げトップだと思っていたが…

「はい、では…こちらが我がエバーライフ商会の、今月の売り上げとなります」

 売り上げが書かれた羊皮紙を、恐る恐るアーリマス財務局長の元へと持っていく。

「…な、何ぃ!?」
「どうしました?財務局長殿」

 羊皮紙に書かれたリストを一通りに見て、アーリマス財務局長の顔が急激に変わっていった。


「こ、こ……今月の売り上げが、5億Gゴールド以上だとぉぉおお!?!?」

 思いもよらぬ報告に商会長達に動揺が走る。

「そ、そんな馬鹿な!?なんなんだその数字は!?」
「ど、どういう事ですか!?嘘ではないのですか!?」

 異常すぎる程の金額、ましてや億越えなど帝国が誕生して初の快挙と言ってもいい。

「ノーマン殿、この売り上げは一体…!」

 アーリマス財務局長がノーマンに厳しい目で質問をする。
 これほどの額の大金、裏で不正な事でもしない限りは一生かかっても手に入らないからだ。そうなったら、ノーマン会長を含むエバーライフ商会を様々な観点から調べる必要がある。下手をすれば、数少ない国王の古い付き合いを逮捕せざるを得ない。

「ご報告します。今月、我がエバーライフ商会の売り上げ……その要因は一つです」
「その要因とはなんなのだ、ノーマン殿…?」

 商会長たちが固唾を飲んで見守る中、意を決したようにノーマンは話す。

「…皆様もご承知の通り、私は"魔族共存派"の人間です。そう、白状しましょう。実はこの度ちょっとしたきっかけで、私の息子が"魔族"との商談の場を設けていただき、そこでの"商談"を成功させることが出来たのです」
「魔族との商談を、成功させたぁ!?」

 ありえない事実に会場全体がざわめく。魔族とは人間達の驚異であり、国を上げて対処しなければいけない問題だ。本来であれば刈られるだけの弱い立場である人間が襲われないどころか、ましてや話し合い、商談を成立させることなど不可能なのだから。

「ふざけているのかノーマン!そんなことを信じろと!?」

 イバール商会長が声を荒げる。
 知っての通り、彼を含め名のある貴族の8割がその魔族を嫌っている"根絶派"。そんな夢物語などをいきなり信じられないのは当然だ。

「信じられぬのも無理はありません。しかし、実際にこうしてこちらもを受け取っているのですから。こちらに」

 そう言って、ノーマンは兵士たちにある物を持ってこさせる。それは一つの宝箱。しかし、中に入っている物がギチギチに詰められて重いせいか、成人男性の帝国騎士3人がヒィヒィ言いながら持ってきた。
 それは国王の前に置かれ、騎士が蓋を開ける。するとそこには、大量に詰まれた輝かしい金貨とまるで黄金の海に埋もれている赤く光るルビーが数十個も入っていたのだ。

「何だと!」
「これは、本物なのか!?」

 その光景に商会長たちは目を疑う。しかしいくら目を擦っても、目の前に置かれた喉から出るほど欲しい宝はまぎれもなく本物だった。それを国王に献上するのだ、エバーライフ商会の株も上がるだろう。これには国王も黙っているわけにもいかない。

「ふむ、確かに本物のようだ。これほどの財宝、さぞかし有名な魔族だとみえる」

 手にしたルビーを見て、本物だと確信した国王。と言っても、彼は事前にエバーライフ邸に赴き、あの少年オルタから事情を聞いているのでそこまで驚かなかったが。

「はい、その魔族につきましては…後日、こちらの方で商談に応じたいと申し出がありました。後はこちらの返事を待つのみとなります。国王、いかがでしょう?」
「うむ。君の話が本当だというのであれば、トップである私も赴かなければ礼を欠ける」
「国王!こんな奴をいう事を真に受けるのは!それに帝国の中に魔族を入れるなど、それこそ「黙れ」…ッ!」

 イバール会長の横やりを、国王は一言で黙らせる。

「この定例会議で多くの者の前、ましてや私に対し堂々と宣言したのだ。虚言であるならば首を刎ねられるというのに。もし、本当に魔族と共生できるというのであれば、私自身の目で確認しないわけにはいくまい。ノーマンよ、魔族との商談…本当に上手くいくのだな?」
「陛下の前で誓います。魔族との共生は可能でございます、二言は御座いませぬ…!」

 下手をすれば、陛下を危険に晒されるかもしれないというのに…ノーマンは堂々とそう宣言をした。その本気の眼差しを見た国王は、すぐに通達する。

「ふむ。ではこの事は、極秘事項並びに王族の預かりとする。正確な情報が分かるまで、決して口外しないように。よいな?皆の者」
『御意!』

――――――――――――――――

「ふぅ、肩の荷が下りたわ」
「お疲れ様です、陛下」
「本当に疲れた」

 定例会議が終了し、国王とノーマン以外全員が去った会議室。いつもの陛下モードを解除した国王がノーマンにそう呟いた。

「イバール殿はどうあっても、国王に成りあがりたいのでしょう。息子が勇者と認められてから…」
「そうであろうな。そして、彼としてはに是非ともアレムーダーに王位を継がせたいのだろう」

 二人が気にしていたのは、イバール商会の今後の動向についてだった。
 現当主の父親は二人とは違い、騎士養成学園の生徒であった。その為騎士学園出身であるせいか、魔術やそれを扱う魔術師を軟弱者扱いしていたらしい。魔術が有効だと思い知ったのは、息子であるムーダーが勇者に選ばれたのがきっかけだ。
 それ以来、親子共々は勇者に選ばれた家系という自己満足を盾に、証拠はそこまでないものの貴族にあるまじき行為を繰り返しているらしい。

「そういえば、どの種族と商談をするのかを聞かずに出て行っちゃいましたね…」
「奴の考えている事だ。どうせ弱い魔族と手を組んだとしか思っていないのだろう」

 会議の最後に、悪あがきと言わんばかりに息子を使って国王の護衛を願い出ていた。「国王をお守りする為」と言っていたが、魔族との共生を証明するのを防ぐために買って出たのだろう。野心か本心かは定かではないが、一応お願いすることになった。「それで、商談する魔族ですが…」とノーマンが言いかけたが、「ふん!どうせ軟弱な魔族なのだろ。万が一陛下に何かあればタダでは済まないからな!」と相手の事を聞かずに、会議室を去って行ってしまった。

「商談当日は、何もなければいいが…」
 
――――――――――――――――

 場所が変わり、イバール家の屋敷。

「父上、何か御用でしょうか?」

 会議が終了し、当主は勇者として選ばれた息子ムーダーを呼びつける。対するムーダーも、真剣な表情をする父親に、余程重要な案件で呼ばれたのだと本能で悟った。

「先程、私が出ている定例会議が終了した、が……近々、王族が魔族との商談に応じるかもしれん」
「魔族との商談!?一体全体、どうしてそんな話が…?」
「あの忌々しいエバーライフ商会が、帝国の民ともあろう者が……魔族との商談に成功したとほざいておったわ。ありったけの金貨と宝石が詰まった宝箱を国王に献上したのだ」

 ムーダー自身も信じられない顔をしていた。何故そんなことに?と話を続ける。エバーライフ家が魔族共存派だという事はムーダーも知っている。魔族は人間を傷つける者、この世から排除するべき存在であると思っている彼も、父親と同じく根絶派で共存派と対立していた。

「あの商会が?どうして?」
「詳しい事情は分からないが、あやつの息子が魔族との商談成功に貢献したらしい。しかし、エバーライフは一人娘ではなかったか?何か知っているか?」

 ムーダーは思いついた。商談成功したのは、落ちこぼれのDクラスに入学したオルタ・クリムゾンの事だと。落ちこぼれの彼に、そんな商談をする能力は見当たらないと思っていた。だから必然的に、商談成功した魔族というのは余りにも弱い魔族なのだと思い込んだ。

「そこでだ…お前に国王の護衛を頼んでおいた。クズな魔族が国王に手を出さないよう、見張ってほしい」
「そういう事ならお任せください父上!どうせ力の弱い魔族ですので、私ほどの腕であれば問題はありません!」
「そうだな、お前が要れば安全だ。国王に何かあれば一大事であるからな」

 しかし、後日彼らは思い知る事となる…。
 オルタとエバーライフ家が商談成功させた魔族は、魔族では上位の存在で勇者であるムーダーよりも、現時点では遥かに強い黒竜こくりゅう族であることを…。
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