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5話
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「ルーク、話したいことがあるの」
それは空が分厚く真っ黒な雲に覆われている日のことだった。
サリアは神妙な面持ちでルークをテーブルへ座るよう促す。
ルークは彼女に言われるがまま、席に着いた。
「どうしたんだい、サリア?」
ルークは顔には笑みを作り、できるだけ優しい声でサリアに語りかける。
けれど彼女の顔が変わることはなかった。
数日前、彼女の大好きなチョコレートを買い、わざわざプレゼントしたというのに彼女の機嫌は直っていないようだ。ルークは面倒くさいな、と思いつつもそれを飲み込み、サリアに付き合おうとする。
「ねえ、ルーク。隠し事してるでしょ?」
再びサリアはそう告げた。
ルークは思わずため息をつく。
またか、と。
「それは前にも話しただろう?君の気のせいだって」
「そう?そうなのかしらね?」
ルークの言葉にサリアは食い下がっていく。
どうやら今日はうやむやに終わらせるつもりはないようだ。
ルークは背筋を伸ばし、姿勢を正す。
おんな心とは面倒だ。
少し間違えれば、すべてが壊れてしまう。
だから慎重に、丁寧に返していかなければ、今までの努力が無駄になる。
サリアは、隠し事があることを確信しているようだ。
だがそれはいったい何のことであろうか?
隠し事はある。
だが記憶喪失である以上、もっともばれたくない隠し事がばれているはずはない。
ルークが頭の中で、そう考えていると、
「・・・これ、なに?」
とサリアが何かを机の上に出してきて、ルークの前へと移動させた。
見てみると手紙だった。
ドクン、と心臓が跳ねる感じがした。
前に浮気相手に送ったものだ。
確か見たらすぐに処分しろと指示した奴。
どうしてこんなものがここにある。
ルークは思わずうろたえ、サリアの顔をみた。
「その反応、覚えがあるみたいね?」
「・・・どこでこれを?」
「・・・・・・」
サリアはルークの問いには答えなかった。
試されている、とルークは悟った。
わざとサリアは情報を伝えずに、こちらがしゃべるのを待っている。
そして矛盾点や、サリアの知らない情報を引き出そうとしているのだ。
ルークの額には冷や汗が浮かぶ。
あの馬鹿女。どうして手紙を処分していない。
そのせいで今、俺がこんなめに会っているのだぞ、と思いながら。
「ごめん。確かにそれは僕が送ったものだ。前に君以外に心が移りそうになったことがある」
ルークは必死に思考を回しながら、言葉を、ひとつ、またひとつ口にだしていく。
事実など、言えるわけがない。
だが、証拠を突きつけられている今、ウソも言えない。
ならば事実とウソを混ぜた物語を語る。
それがルークのだした結論であった。
こちらから先に謝り、本当に少しだけ事実をはなしておく。
そして後はウソで塗り固めるのだ。
「これはその時に送ってしまった手紙だ。本当にごめん。だがサリア!信じてほしい!彼女とはそれ以外会ってすらいない!僕が愛しているのは君だけだよ!」
サリアへの愛を叫びながらルークは目に涙を浮かべる。
我ながら問い演技だと、ルークは思った。
サリアはそんなルークをみて、
「そっか・・・」
と机に視線を移す。
そしてルークの目を見つめながら、
「わかった」
と微笑むのだ。
ルークはサリアの笑みをみて胸をなで下ろす。
どうやら上手くいってくれたようだ。
本当にチョロい女でよかったよ。
「じゃあ!」
ルークは笑いながら席を立ち、サリアの元に駆け寄る。
彼女の手を握りしめる。
急いでこの手紙は処分させよう。
そしてあの元浮気相手のゴミの所にいって、
まだ隠しもっているものがないか捜索して処分する必要がある。
サリアの記憶が戻ればやっかいなことになる。
今日の出来事は悲劇だが、それ以上の惨劇を防ぐ対策になったと、安心していた。
そしてそんな彼の顔を見つめながら、サリアは淡々と告げるのであった。
「うん。私達、分かれましょう」
「は?」
ルークは思わず声が漏れた。
「ごめんなさいルーク。実はね、もう私、記憶戻ってるの」
それは空が分厚く真っ黒な雲に覆われている日のことだった。
サリアは神妙な面持ちでルークをテーブルへ座るよう促す。
ルークは彼女に言われるがまま、席に着いた。
「どうしたんだい、サリア?」
ルークは顔には笑みを作り、できるだけ優しい声でサリアに語りかける。
けれど彼女の顔が変わることはなかった。
数日前、彼女の大好きなチョコレートを買い、わざわざプレゼントしたというのに彼女の機嫌は直っていないようだ。ルークは面倒くさいな、と思いつつもそれを飲み込み、サリアに付き合おうとする。
「ねえ、ルーク。隠し事してるでしょ?」
再びサリアはそう告げた。
ルークは思わずため息をつく。
またか、と。
「それは前にも話しただろう?君の気のせいだって」
「そう?そうなのかしらね?」
ルークの言葉にサリアは食い下がっていく。
どうやら今日はうやむやに終わらせるつもりはないようだ。
ルークは背筋を伸ばし、姿勢を正す。
おんな心とは面倒だ。
少し間違えれば、すべてが壊れてしまう。
だから慎重に、丁寧に返していかなければ、今までの努力が無駄になる。
サリアは、隠し事があることを確信しているようだ。
だがそれはいったい何のことであろうか?
隠し事はある。
だが記憶喪失である以上、もっともばれたくない隠し事がばれているはずはない。
ルークが頭の中で、そう考えていると、
「・・・これ、なに?」
とサリアが何かを机の上に出してきて、ルークの前へと移動させた。
見てみると手紙だった。
ドクン、と心臓が跳ねる感じがした。
前に浮気相手に送ったものだ。
確か見たらすぐに処分しろと指示した奴。
どうしてこんなものがここにある。
ルークは思わずうろたえ、サリアの顔をみた。
「その反応、覚えがあるみたいね?」
「・・・どこでこれを?」
「・・・・・・」
サリアはルークの問いには答えなかった。
試されている、とルークは悟った。
わざとサリアは情報を伝えずに、こちらがしゃべるのを待っている。
そして矛盾点や、サリアの知らない情報を引き出そうとしているのだ。
ルークの額には冷や汗が浮かぶ。
あの馬鹿女。どうして手紙を処分していない。
そのせいで今、俺がこんなめに会っているのだぞ、と思いながら。
「ごめん。確かにそれは僕が送ったものだ。前に君以外に心が移りそうになったことがある」
ルークは必死に思考を回しながら、言葉を、ひとつ、またひとつ口にだしていく。
事実など、言えるわけがない。
だが、証拠を突きつけられている今、ウソも言えない。
ならば事実とウソを混ぜた物語を語る。
それがルークのだした結論であった。
こちらから先に謝り、本当に少しだけ事実をはなしておく。
そして後はウソで塗り固めるのだ。
「これはその時に送ってしまった手紙だ。本当にごめん。だがサリア!信じてほしい!彼女とはそれ以外会ってすらいない!僕が愛しているのは君だけだよ!」
サリアへの愛を叫びながらルークは目に涙を浮かべる。
我ながら問い演技だと、ルークは思った。
サリアはそんなルークをみて、
「そっか・・・」
と机に視線を移す。
そしてルークの目を見つめながら、
「わかった」
と微笑むのだ。
ルークはサリアの笑みをみて胸をなで下ろす。
どうやら上手くいってくれたようだ。
本当にチョロい女でよかったよ。
「じゃあ!」
ルークは笑いながら席を立ち、サリアの元に駆け寄る。
彼女の手を握りしめる。
急いでこの手紙は処分させよう。
そしてあの元浮気相手のゴミの所にいって、
まだ隠しもっているものがないか捜索して処分する必要がある。
サリアの記憶が戻ればやっかいなことになる。
今日の出来事は悲劇だが、それ以上の惨劇を防ぐ対策になったと、安心していた。
そしてそんな彼の顔を見つめながら、サリアは淡々と告げるのであった。
「うん。私達、分かれましょう」
「は?」
ルークは思わず声が漏れた。
「ごめんなさいルーク。実はね、もう私、記憶戻ってるの」
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