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12話
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ダンジョンの階段を上る。
すると光がだんだんと差してきて、ついに外に出た。
無事に脱出できたようだ。
「「・・・・・・」」
「お二人とも、もっと笑いましょう?ね?ね?せっかく脱出できたんですし」
私とウィルの間にはとんでもなく重い空気が流れていた。
ヘレナはその空気を察して、必死に間を取りなそうとしてくれている。
敵ながら少しかわいそうだと思った。
「・・・・・・」
ウィルは私の事をにらみつけている。
私は彼が憎む貴族制を代表しているような人間だ。
加えて連合が打倒しようとしている帝国の、重要人物の娘だ
当然、彼からしてみれば気に入らないし、倒さなければならない敵である。
良い顔をされるわけがなかった。
彼ら二人は目を覚ましたあと、私が垂らした血液を追ってきたらしい。
ちょうど道しるべになって安全なルートを迷わず進めたとの事だった。
で、ボス部屋で倒れている私を見つけて、ウィルは退路の確保を、ヘレナは私の治療をしてくれたというわけだ。
とりあえずこの二人のフラグをへし折ることはできたということだろう。
心の中で思いっきりガッツポーズをする。
本来はこの後、ヘレナが思い出のピアスをウィルに渡すのだ。
ヘレナの母が、ヘレナに一生を捧げると誓った相手に渡しなさい、と言われたピアスを。
それがきっかけとなって二人は恋仲に落ちていく。
だが今、ダンジョンから脱出しても、ヘレナはピアスを渡そうとすらしていない。
とてもいい傾向だ。
これで二人の協力が遅れれば遅れるだけ時間が稼げる。
帝国を改善する猶予が増えるというものだ。
「では、私はこれで」
二人に一応あいさつのような言葉を残しつつ、立ち去る。
もう一緒にいる理由などないのだ。
ならば別れてもなんの問題もないだろう。
「あ、あの!マリー様!」
ヘレナの声が聞こえてくる。
けれど私は振り向かず、無視して歩み続けた。
「助けていただいて、ありがとうござました」
そのまま颯爽と野原を移動する。
学校までそう遠くはない。
夜になる前にはつけるだろう。
帰り道の気分はとてもよかった。
いろいろ誤算もあったけれど、終わりよければすべてよし。
ヘレナとウィルのフラグを折ることができたのだ。
特にヘレナは私が助けてくれたと勘違いまでしてくれている。
殺す前に躊躇してくれるかもしれないというのならば、大歓迎だ。
「・・・あれ?」
歩いていて、少し違和感を覚えた。
ポケットに、謎の膨らみがあるのだ。
なんだろうと疑問に思い、取り出してみる。
出てきたのはピアスであった。
白い綺麗な宝石がついたピアス。
当然、私のではない。
はて、いったい誰のだろうか。
・・・・・・。
「ああ!!」
気づいた瞬間に、背筋が凍りそうになる。
このピアスは、この白い奴は、ヘレナのであった。
本来ヘラナが、ダンジョンから脱出した後に、ウィルに渡すピアス。
それが、どうして私のポケットに入っているのだ。
目の前の出来事が理解出来ず、口をパクパクとさせる。
ポケットの位置的に、偶然入るモノではない。
だからこれは、ヘレナが、自分の意思で入れたモノだと考えるのが妥当だろう。
彼女は私に渡したのだ。
ヘレナの母が、ヘレナに一生を捧げると誓った相手に渡しなさい、と言われたピアスを。
これ、別のフラグが立ってるじゃねえか。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その日、夢を見た。
原作の物語のように革命軍により帝国が滅ぼされていく夢だ。
多くの貴族達は断頭台へと送られて、首をチョンパされていく。
でも、それなのになぜか、私は地下室に拘束されていた。
魔法を使えないようにする首輪を付けられて、ギロチン台の拘束部分だけある台に拘束されている。
「なに、これ」
驚くほどリアルな夢であった。
拘束されている感触やらが、本物のように感じられる。
体も18歳のものになっているようだ。
「ああ、マリー様!あなたが生きていて本当によかったです。間違って、殺されていなくて」
私が驚いていると、後ろから声が聞こえてくる。
その声の主は、手を伸ばしてきて、私の体を触ってきた。
服をめくり、手を肌へと沿わせてくる。
「ヒッ!」
突然のことで、変な声が出てしまった。
「そんな可愛い声も、出されるのですね」
そして声の正体は、私の前に顔をだした。
ヘレナであった。
「ああ、私のマリー様。あなたは、ずっと私のもの。誰にも、渡さない」
「な、なんで」
声が震える。
そこにいるのは、私の知っているヘレナではなかった。
きちんと物語の終盤と同じ服装をしている。
でも、そこにいるのは原作にいるようなヘレナではないのだ。
「証を、上げます。マリー様の体が、頭から爪の先っぽまで私のモノであるという証を」
マリーはそういうとたくさんの道具をもってきた。
それは無数のピアスであった。
「これは、あなたの全身につけてしまいます。他の誰かがマリー様を見たときに、すぐに私のモノだって分かるように」
「や、やめて」
ヘレナの手が近づいてくる。
私の体をまさぐりながら。
「大丈夫です。治癒魔法があるので、すぐ終わりますよ」
「やだ!」
「うわああああああああ!」
自分の悲鳴で目を覚ました。
思わず自分の体を確認する。
12歳の体へと戻っていた。
そして、傷を付けられた形跡もない。
辺り見回す。
自分の部屋であった。
ダンジョンから帰ってて来て、そしてすぐに寝たのだ。
びっしょりと汗をかいていた。
服が肌に張り付いてくる。
それほどリアルで、嫌な夢だった。
(なにあれ)
あんなの、私は知らない。
原作で書かれていない。
ふと横を見る。
そこにはヘレナから貰った白いピアスが置いてあった。
あれは正夢なのかもしれない。
なんとなく、そう思った。
このまま進んだ際に訪れる、結末を教えてくれる夢。
ただの夢であってくれ。
そう、願うしかなかった。
すると光がだんだんと差してきて、ついに外に出た。
無事に脱出できたようだ。
「「・・・・・・」」
「お二人とも、もっと笑いましょう?ね?ね?せっかく脱出できたんですし」
私とウィルの間にはとんでもなく重い空気が流れていた。
ヘレナはその空気を察して、必死に間を取りなそうとしてくれている。
敵ながら少しかわいそうだと思った。
「・・・・・・」
ウィルは私の事をにらみつけている。
私は彼が憎む貴族制を代表しているような人間だ。
加えて連合が打倒しようとしている帝国の、重要人物の娘だ
当然、彼からしてみれば気に入らないし、倒さなければならない敵である。
良い顔をされるわけがなかった。
彼ら二人は目を覚ましたあと、私が垂らした血液を追ってきたらしい。
ちょうど道しるべになって安全なルートを迷わず進めたとの事だった。
で、ボス部屋で倒れている私を見つけて、ウィルは退路の確保を、ヘレナは私の治療をしてくれたというわけだ。
とりあえずこの二人のフラグをへし折ることはできたということだろう。
心の中で思いっきりガッツポーズをする。
本来はこの後、ヘレナが思い出のピアスをウィルに渡すのだ。
ヘレナの母が、ヘレナに一生を捧げると誓った相手に渡しなさい、と言われたピアスを。
それがきっかけとなって二人は恋仲に落ちていく。
だが今、ダンジョンから脱出しても、ヘレナはピアスを渡そうとすらしていない。
とてもいい傾向だ。
これで二人の協力が遅れれば遅れるだけ時間が稼げる。
帝国を改善する猶予が増えるというものだ。
「では、私はこれで」
二人に一応あいさつのような言葉を残しつつ、立ち去る。
もう一緒にいる理由などないのだ。
ならば別れてもなんの問題もないだろう。
「あ、あの!マリー様!」
ヘレナの声が聞こえてくる。
けれど私は振り向かず、無視して歩み続けた。
「助けていただいて、ありがとうござました」
そのまま颯爽と野原を移動する。
学校までそう遠くはない。
夜になる前にはつけるだろう。
帰り道の気分はとてもよかった。
いろいろ誤算もあったけれど、終わりよければすべてよし。
ヘレナとウィルのフラグを折ることができたのだ。
特にヘレナは私が助けてくれたと勘違いまでしてくれている。
殺す前に躊躇してくれるかもしれないというのならば、大歓迎だ。
「・・・あれ?」
歩いていて、少し違和感を覚えた。
ポケットに、謎の膨らみがあるのだ。
なんだろうと疑問に思い、取り出してみる。
出てきたのはピアスであった。
白い綺麗な宝石がついたピアス。
当然、私のではない。
はて、いったい誰のだろうか。
・・・・・・。
「ああ!!」
気づいた瞬間に、背筋が凍りそうになる。
このピアスは、この白い奴は、ヘレナのであった。
本来ヘラナが、ダンジョンから脱出した後に、ウィルに渡すピアス。
それが、どうして私のポケットに入っているのだ。
目の前の出来事が理解出来ず、口をパクパクとさせる。
ポケットの位置的に、偶然入るモノではない。
だからこれは、ヘレナが、自分の意思で入れたモノだと考えるのが妥当だろう。
彼女は私に渡したのだ。
ヘレナの母が、ヘレナに一生を捧げると誓った相手に渡しなさい、と言われたピアスを。
これ、別のフラグが立ってるじゃねえか。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その日、夢を見た。
原作の物語のように革命軍により帝国が滅ぼされていく夢だ。
多くの貴族達は断頭台へと送られて、首をチョンパされていく。
でも、それなのになぜか、私は地下室に拘束されていた。
魔法を使えないようにする首輪を付けられて、ギロチン台の拘束部分だけある台に拘束されている。
「なに、これ」
驚くほどリアルな夢であった。
拘束されている感触やらが、本物のように感じられる。
体も18歳のものになっているようだ。
「ああ、マリー様!あなたが生きていて本当によかったです。間違って、殺されていなくて」
私が驚いていると、後ろから声が聞こえてくる。
その声の主は、手を伸ばしてきて、私の体を触ってきた。
服をめくり、手を肌へと沿わせてくる。
「ヒッ!」
突然のことで、変な声が出てしまった。
「そんな可愛い声も、出されるのですね」
そして声の正体は、私の前に顔をだした。
ヘレナであった。
「ああ、私のマリー様。あなたは、ずっと私のもの。誰にも、渡さない」
「な、なんで」
声が震える。
そこにいるのは、私の知っているヘレナではなかった。
きちんと物語の終盤と同じ服装をしている。
でも、そこにいるのは原作にいるようなヘレナではないのだ。
「証を、上げます。マリー様の体が、頭から爪の先っぽまで私のモノであるという証を」
マリーはそういうとたくさんの道具をもってきた。
それは無数のピアスであった。
「これは、あなたの全身につけてしまいます。他の誰かがマリー様を見たときに、すぐに私のモノだって分かるように」
「や、やめて」
ヘレナの手が近づいてくる。
私の体をまさぐりながら。
「大丈夫です。治癒魔法があるので、すぐ終わりますよ」
「やだ!」
「うわああああああああ!」
自分の悲鳴で目を覚ました。
思わず自分の体を確認する。
12歳の体へと戻っていた。
そして、傷を付けられた形跡もない。
辺り見回す。
自分の部屋であった。
ダンジョンから帰ってて来て、そしてすぐに寝たのだ。
びっしょりと汗をかいていた。
服が肌に張り付いてくる。
それほどリアルで、嫌な夢だった。
(なにあれ)
あんなの、私は知らない。
原作で書かれていない。
ふと横を見る。
そこにはヘレナから貰った白いピアスが置いてあった。
あれは正夢なのかもしれない。
なんとなく、そう思った。
このまま進んだ際に訪れる、結末を教えてくれる夢。
ただの夢であってくれ。
そう、願うしかなかった。
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