【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命

文字の大きさ
24 / 38

第21話 仲間の元同僚に圧倒される

しおりを挟む
 イザベラが後ろに飛躍し、俺から距離を取った。
 
 流石はエルフという軽い身のこなし。
 弓の構えはぶれていないし、矢先も俺をしっかり捉えている。

 俺は横にずれて射程から逃げることにした。狙いが定まらないように不規則に動きながら、相手との距離を詰めていく。

「流石です」

 イザベラはそう言うものの、表情には余裕がある。

 そもそも喋りながら戦えている時点で、相当な実力者であることがわかった。
 コンスタスの元同僚だということは、彼女は勇者パーティの者だろう。

 勇者パーティに関しては、前に言及した通り、安定していて平和だ。

 もし魔王なんかが出たらそれこそ命懸けにはなるかもしれないけど、他の魔族に関しては確実に倒せるように組織されて討伐隊が組まれる。
 給料も定期的に安定した額が払われるので、貧しくなることはまずないのだ。

 それに対して冒険者は過酷だ。

 地下迷宮ダンジョンの攻略を主な仕事とし、その成果で報酬が決まる。

 モンスター達を倒して手に入れた魔石を換金したり、運がいいと見つけられる財宝を手にしたり……そうして生きていくための資金を手に入れる。

 下の階層に行けば行くほど得られる対価は大きくなるけど、それだけ難しくなっていくので、リスクを伴うわけだ。
 
 まさに実力主義の現場。

 冒険と刺激を求める者にとっては最高の職業と言える。
 そのせいか、今では冒険者の方が勇者達よりも実力があると思われるのが一般的だそうだ。

 確かコンスタスは、勇者パーティはやる気がなかった、とか言っていたっけ。

 こうして闘技場での闘技大会トーナメントに出場するくらいだから、それなりにやる気はありそうだけど……賞金目当てなのかもしれないな。

 イザベラの矢が放たれる。

 すかさず避けるも、俺の頬をかすめて浅い切り傷を作った。

 学院時代に何度も痛い目には遭っている。
 今更ヒーヒー言うつもりもない。

 続けざまに放たれる矢を、卒業記念にもらった剣で払い除けていく。

「冒険者は厄介ですのね」

「それはどうも!」

 イザベラは軽やかに俺の頭上を飛び越えた。
 前に回転しながら、空中で華麗に弓を引く。

 凄い技だ。

 俺の反応があと少し遅れていれば、グサッと頭のてっぺんに突き刺さっていた。
 地面を転がって攻撃をかわす。

「魔法は使わないのでしょうか? 貴方様あなたさまの魔術、大変興味がございますわ」

「そうでございますか。じゃあお言葉に甘えて!」

 魔術師という職を選ばない限り、人間はひとつの属性しか魔術が使えない。
 それは生まれながらに決まっている、とかいうベタな設定ではなく、学院などの教育施設で、自分で適性を決めるところから始まる。

 俺は炎属性が好きだった。
 だって、名前はレッドだし、赤髪レッドヘアだし。

 それでいて炎系の魔術が使えなかったら、なんかキャラ違くね、ってなりそうだし。知らんけど。

 属性は6つあって、炎、水、風、土、光、そして闇。

 回復魔法ヒールに関しては特別で、その属性プラス、先天的な特性で使えるものだった。

「素敵な爆撃魔法、感動致しましたわ」

 イザベラが微笑む。
 俺と同じ金色の瞳の奥には、勝利の輝きがあった。

『やめろぉぉぉぉおおおお!』

 コンスタスの叫び声が闘技場に響いた。
 本当に叫んでいたとは。

 その言葉虚しく、気づいたら俺は炎に包まれ戦場フィールドの端に吹き飛ばされていた。壁に激突し、その衝撃で勢いよく吐血する。赤い血が、口から噴水のように散った。

「──ブハッ!」

 何が起こった!?

 俺の放った炎が服に燃え移り、俺の体を焼く。
 慌てて手で消火した。

「大迫力だったなぁ」

 呑気に呟く。

 それにしても、久しぶりの刺激だった。

 痛い痛い。
 火傷したところはすぐに治るだろうけど、背中の骨折を完治させるのには数日くらいかかるだろう。

 壁により掛かりながら倒れる俺のもとに、金髪金眼の神々しいエルフの美女が近づいてきた。

 勝ち誇った笑みを浮かべながら、ゆっくりと歩いている。
 モデルがランウェイを歩く時みたいに綺麗だった。無料でランウェイショーが見れたわけだし、今日はもう大満足ってところだな。

「さっきのは君の魔法?」

「はい、わたくし自慢の風魔法でございますわ」

 ──風魔法。

 俺の操る炎系の魔術とは相性が悪い。
 というか、風の方が有利だ。それなりの風力を持っていれば、炎をかき消すことができる。

 魔術を使うには魔力と集中力が必要だ。
 だから武器を使って戦うような戦士は好んで魔術を使わない。たとえ使えるとしても、本当にピンチの時に、武器での攻撃を捨てて使う。

 魔力を消費するということは、生命力を削っていることに等しい。

 一度魔術を使うだけで、相当な体力までをも奪ってしまう。

 意外と使い勝手がいいように誤解されがちな魔術も、この世界ではギリギリなのだ。
 
 俺は甘かった。
 やすやすと挑発に乗って魔術を放ったわけだけど、そのせいで相手イザベラのいいように戦況を傾けたわけだ。

 罪な男だぜ、俺は。

「でも、俺はまだ負けちゃいない」

「ええ、わたくしも、その程度でやられるようなお方ではないと存じ上げておりますので」

 剣を杖代わりにして、俺は立ち上がった。
 血はところどころ流れている。でも、死んでないなら、まだ全然戦える。

 言ったはずだ。

 俺は鋼のメンタル保有者であると!

「さっきの風魔法、結構な魔力を消費したんじゃないの?」

 俺がそう聞くと、イザベラがフフッと笑った。
 肩は震えていて、足もガクガクだ。

 図星だった。

「どうしてそこまでして、風魔術を使った? 俺がこれで倒れないことがわかっているなら、自爆覚悟の攻撃はしない方がよかったんじゃないのか?」

「仰る通りです、レッド・モルドロスさん。ですが、わたくしは見て欲しかったのです。あれから本気で強くなるために、必死になっているということを」

 そう言って、観客席の方を見上げるイザベラ。

 その視線の先には、小人族コビットの青年がいた。
 コンスタスは身を乗り出し、目を大きく見開いてこっちを見ている。

「やられた」

 俺は呟いた。

 このままイザベラが倒れれば、俺の勝ちは決定する。
 でも、心の勝負では、彼女に負けた気がしていた。

 このセリフ、いつか言ってみたいと思っていたから、ここで言わせてくれたイザベラに感謝だ。

 イザベラが俺に手を差し出してきた。
 繊細な白い手だ。

 俺もしっかりとその手を握り返す。

「コンスタスをよろしくお願い致します……」

「勿論」

「それと……わたくしのパーティの首領リーダーは……わたくしよりも遥かに強くなっていますので……」

 それだけ言って、イザベラは力なく地面に倒れた。

 その瞬間、俺の勝利と、2回戦進出が決定した。
 観客はタフな俺だけでなく、全力で戦ったイザベラにも、最大の敬意を示した。





《次回22話 シャロットの壮絶なエルフ事情を知る》
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

1つだけ何でも望んで良いと言われたので、即答で答えました

竹桜
ファンタジー
 誰にでもある憧れを抱いていた男は最後にただ見捨てられないというだけで人助けをした。  その結果、男は神らしき存在に何でも1つだけ望んでから異世界に転生することになったのだ。  男は即答で答え、異世界で竜騎兵となる。   自らの憧れを叶える為に。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた

歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。 剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。 それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。 そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー 「ご命令と解釈しました、シン様」 「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」 次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。

処理中です...