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勇者祭編
その93 認められる実力
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観客席では先にグレイソンが場所を取ってくれていた。
階段を上がるや否や、満面の笑みで手を振り、自分の存在をアピールしてきたのだ。
意外だったのは、その隣にいる存在。
戦闘時に観客席の配置は確認していたので、グレイソンが誰の隣に座っているのかはわかっていた。とはいえ、こうして近くで見てみると、普段見ることのない組み合わせに驚く自分がいる。
グレイソンの隣にいたのは、優勝候補が注目している〈1-A〉の実力者、獅子王レオンだった。
俺がやってくるのを見ると、余裕そうな表情そのままに、席から立ち上がる。
「西園寺、あの手際でゴーレムを捌けば、あと三十体は倒せてた。つまりは、そういうことだな」
「何が言いたい?」
「オレはそれこそ精一杯やって百八十点程度。だが、お前はそれ以上得点を稼ぐ力と余裕があった。そう言ってるんだ。はっは! 完敗だ! 敵ながら天晴れだぜ!」
最初は責められているのかと思った。
エイダンが言うように、まだやれるなら本気で最後までやれよ、と。
だが、思っていたより素直というか、しっかり見ているというか、いい奴というか。相手の実力を認め、自分よりも凄いと称賛できるような人間は少ない。
獅子王は豪快にガハハと笑い、俺の肩をドンドンと、かなりの衝撃が来るほどのパワーで叩いた。
「同じクラスにこんな面白い奴がいたとはな! 久しぶりに本気で戦いたくなったわい」
獅子王はいつも以上に生き生きしている。
教室では、毎回の授業をどっしりと構え、退屈そうに聞いている印象があった。
「二次予選で戦おうぜ」
最後まで豪快に笑いながら、獅子王は通路を抜けて俺達のもとを去っていった。
別にこのままここにいても良かったのだが。
いつもひとりでいる様子を知る限り、こういう時に一緒に観戦するような友達はいなさそうだ。
だからこそ、彼がグレイソンと話しているのを見て驚いたのだった。
「獅子王君、オスカーの凄さに少しずつ気づいていっているみたいだよ」
俺が聞くより先に、グレイソンが説明してくれる。
自分から俺の話を聞きたくて、わざわざ声をかけにきたんだろう、と。
「もう流石に誤魔化せそうになかったから、キミの実力をはっきりと認めた発言をしたけど、大丈夫だったかい?」
「なに、奴はクラスメイトだ。もうクラスメイトに実力を隠す気はない」
ただ「かっこよさそう」だと思って実力を隠してるだけだから、とは言わなかった。
「それにしても、獅子王の方から接触してくるとは思わなかった。奴も相当な実力者だ。白竜アレクサンダーも彼に一目置いていたくらいだからな」
「あの副会長が? そういえば、オスカーのグループ、副会長が百点のミスリルゴーレムを倒して盛り上がってたよ」
「ミスリルゴーレムか。戦ったことはないな」
「そういえば、オスカーは副会長の実力に関してどう思ってるんだい?」
「未知数だ。彼が俺を未知数と評価するように、俺も同じく彼を未知数だと考える」
アレクが呼び出した強烈な稲妻のことを思い出した。
耳をつんざくような轟音と共に、魔王セトを倒せると思えるだけの、高威力の技を見せられたのだ。
あの芸当は俺にはできない。
彼の神能が関係していることは確実だが、あの威力の稲妻を使うとなれば、何らかの条件や制約を伴うはず。
それだけ、彼のあの稲妻は脅威に映った。
「その副会長は、どうやらグレイソンにも注目しているらしい」
話の隙をついて、さらっと補足する。
グレイソンも相当腕を上げている。
しっかり実力が認められ、あの実力者から警戒されているんだ、と知ってもらいたかった。
「え、僕!?」
「なに、驚くことでもない」
俺はそれだけ言って、軽く微笑んだ。
彼はこの勇者祭の準備のため、今まで以上に厳しい訓練を積んでいる。夏休み前よりも、また頭ひとつ分伸びたくらいに。
その努力を普段から見せられている身としては、もっと自分に誇りを持って臨んで欲しい。
闘技場に差し込む強い日差しが、昼の到来を告げていた。
今日はとんでもなく暑い。雲ひとつ見当たらない。
観客席は日陰になるように上手く設計されているが、実際戦う場所は炎天下なのだ。
刺客でも対戦相手でもなく、暑さにやられる生徒も続出するかもしれない。
「オスカー、キミが褒めてくれて調子に乗るわけじゃないけど……優勝を目指すよ」
少々遠慮がちだったが、迷いのない瞳がその熱い想いを物語っていた。
それでこそグレイソンだ。
決闘の時、俺は彼に高みを示した。それはすぐ近くにありながら、遥かに遠いもの。
『まずはお前に目指すべき高みを示そう。それは……俺だ』
その言葉に突き動かされるように、めきめきと実力を伸ばしていった。
俺はそんな彼を誰よりも誇りに思う。
そして――。
「そうか。なら俺も、その気持ちに応えるために、優勝を目指さなくてはならない」
俺はこの勇者祭での目的を再設定した。
階段を上がるや否や、満面の笑みで手を振り、自分の存在をアピールしてきたのだ。
意外だったのは、その隣にいる存在。
戦闘時に観客席の配置は確認していたので、グレイソンが誰の隣に座っているのかはわかっていた。とはいえ、こうして近くで見てみると、普段見ることのない組み合わせに驚く自分がいる。
グレイソンの隣にいたのは、優勝候補が注目している〈1-A〉の実力者、獅子王レオンだった。
俺がやってくるのを見ると、余裕そうな表情そのままに、席から立ち上がる。
「西園寺、あの手際でゴーレムを捌けば、あと三十体は倒せてた。つまりは、そういうことだな」
「何が言いたい?」
「オレはそれこそ精一杯やって百八十点程度。だが、お前はそれ以上得点を稼ぐ力と余裕があった。そう言ってるんだ。はっは! 完敗だ! 敵ながら天晴れだぜ!」
最初は責められているのかと思った。
エイダンが言うように、まだやれるなら本気で最後までやれよ、と。
だが、思っていたより素直というか、しっかり見ているというか、いい奴というか。相手の実力を認め、自分よりも凄いと称賛できるような人間は少ない。
獅子王は豪快にガハハと笑い、俺の肩をドンドンと、かなりの衝撃が来るほどのパワーで叩いた。
「同じクラスにこんな面白い奴がいたとはな! 久しぶりに本気で戦いたくなったわい」
獅子王はいつも以上に生き生きしている。
教室では、毎回の授業をどっしりと構え、退屈そうに聞いている印象があった。
「二次予選で戦おうぜ」
最後まで豪快に笑いながら、獅子王は通路を抜けて俺達のもとを去っていった。
別にこのままここにいても良かったのだが。
いつもひとりでいる様子を知る限り、こういう時に一緒に観戦するような友達はいなさそうだ。
だからこそ、彼がグレイソンと話しているのを見て驚いたのだった。
「獅子王君、オスカーの凄さに少しずつ気づいていっているみたいだよ」
俺が聞くより先に、グレイソンが説明してくれる。
自分から俺の話を聞きたくて、わざわざ声をかけにきたんだろう、と。
「もう流石に誤魔化せそうになかったから、キミの実力をはっきりと認めた発言をしたけど、大丈夫だったかい?」
「なに、奴はクラスメイトだ。もうクラスメイトに実力を隠す気はない」
ただ「かっこよさそう」だと思って実力を隠してるだけだから、とは言わなかった。
「それにしても、獅子王の方から接触してくるとは思わなかった。奴も相当な実力者だ。白竜アレクサンダーも彼に一目置いていたくらいだからな」
「あの副会長が? そういえば、オスカーのグループ、副会長が百点のミスリルゴーレムを倒して盛り上がってたよ」
「ミスリルゴーレムか。戦ったことはないな」
「そういえば、オスカーは副会長の実力に関してどう思ってるんだい?」
「未知数だ。彼が俺を未知数と評価するように、俺も同じく彼を未知数だと考える」
アレクが呼び出した強烈な稲妻のことを思い出した。
耳をつんざくような轟音と共に、魔王セトを倒せると思えるだけの、高威力の技を見せられたのだ。
あの芸当は俺にはできない。
彼の神能が関係していることは確実だが、あの威力の稲妻を使うとなれば、何らかの条件や制約を伴うはず。
それだけ、彼のあの稲妻は脅威に映った。
「その副会長は、どうやらグレイソンにも注目しているらしい」
話の隙をついて、さらっと補足する。
グレイソンも相当腕を上げている。
しっかり実力が認められ、あの実力者から警戒されているんだ、と知ってもらいたかった。
「え、僕!?」
「なに、驚くことでもない」
俺はそれだけ言って、軽く微笑んだ。
彼はこの勇者祭の準備のため、今まで以上に厳しい訓練を積んでいる。夏休み前よりも、また頭ひとつ分伸びたくらいに。
その努力を普段から見せられている身としては、もっと自分に誇りを持って臨んで欲しい。
闘技場に差し込む強い日差しが、昼の到来を告げていた。
今日はとんでもなく暑い。雲ひとつ見当たらない。
観客席は日陰になるように上手く設計されているが、実際戦う場所は炎天下なのだ。
刺客でも対戦相手でもなく、暑さにやられる生徒も続出するかもしれない。
「オスカー、キミが褒めてくれて調子に乗るわけじゃないけど……優勝を目指すよ」
少々遠慮がちだったが、迷いのない瞳がその熱い想いを物語っていた。
それでこそグレイソンだ。
決闘の時、俺は彼に高みを示した。それはすぐ近くにありながら、遥かに遠いもの。
『まずはお前に目指すべき高みを示そう。それは……俺だ』
その言葉に突き動かされるように、めきめきと実力を伸ばしていった。
俺はそんな彼を誰よりも誇りに思う。
そして――。
「そうか。なら俺も、その気持ちに応えるために、優勝を目指さなくてはならない」
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