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最強の中二病編
その02 図書委員の先輩
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当初の予定通り、あの後は二時間ほど、学園図書館で読書をして過ごした。
とはいえ、ただ好きな書物や小説をだらだらと読んでいたわけではない。
神能の応用に関する文献や、剣術の歴史、神話など、授業及び戦闘に役立つような書物を必死に読み漁った。
これはある意味独学ということになるが、こうして自分で好きなように学習することもまた、終わりなき進化への旅だと思っている。
ただ人に教えられた通りのことをやるだけでなく、自分で見つけた課題を自分で解決することで、限界を超える成長ができるのだ。
「貸出を頼む」
「今日も凄い量の本だね、オスカーくん」
本の貸出は、カウンターにいる図書委員に頼むことになっている。
ゼルトル勇者学園では委員会活動というものもあり、基本的に生徒は何かしらの委員会に入る必要がある。
ちなみに俺は清掃委員会に入って闘技場清掃の担当をしているわけだが、結局いつも俺が闘技場を使っているので、そのついでという形で掃除できるから効率的だ。
分厚い五冊の本の貸出を頼んだ俺に対し、名前まで呼んで声をかけてくれたのは図書委員の如月エリザベス。
図書委員の仕事をよほど好いているのか、毎日図書カウンター当番をしている。
そのためか、こうして貸出の際に毎回言葉を交わすのだ。
この学園で西園寺オスカーという名前を認知している数少ない生徒のひとり。
濃い紫の長髪はセレナと同じくらいに長く、艶がある。セレナが前髪を作っていることに対し、エリザベスは真ん中で分けて横に流していた。
瞳は瑠璃色。濃い青だ。
「俺はただ、自らに課したことを愚直にこなしているだけだ」
エリザベスの言葉に、淡々と答える。
ちなみに、彼女は俺よりひとつ年上の十七歳で二年生というわけだが、西園寺オスカーとしてわざわざ敬語を使ったり気を遣ったりすることはない。
同じゼルトル勇者学園の生徒である限り、俺達の立場は対等だ。
実力を持つということはそういうことでもある。
「寝不足、なんじゃない? 毎日そんなにたくさんの本を読んで、十分に寝れているとは思えないよ」
わざわざ心配してくれるエリザベス先輩。
まだ二ヶ月程度の図書館だけでの付き合いではあるが、彼女はとても純粋で優しい人だと思う。どんな生徒に対しても同じように温かい笑みで接し、実際に同性からも異性からも、多くの信頼を寄せられているようだった。
よく友人らしき人から何かを頼まれたり、相談されたりしているのを見たことがある。
面白いことに、毎日学園図書館に来て五冊も貸出をするような奴は俺だけなので、すっかり気に入られたのか、彼女の方からよく話しかけてくるようになった。
「それより、エリザベスは毎日カウンター当番をして大変ではないか? 他にもやりたいことはあるだろうに」
こうして発言する時、俺が見るのは大抵の場合、虚空だ。
どこを見ているのかわからない。
そう思わせることで、西園寺オスカーをより一層不思議な生徒に仕立て上げる。
「あたしは好きだからやってるんだよ。でも、そしたらオスカーくんも同じ、なのかな?」
「どうだろうな。俺はやるべきことをやっているだけだ」
「オスカーくんのそういうところ、尊敬するなぁ」
クスクスッと笑ったエリザベスが、ぼそっと呟く。
「なに、俺はつまらない人間だ。エリザベスは自分の好きなことに正直に生きているように思える。それは何よりも尊いことだ」
特に最後の部分は小声で言った。
そうすることで、何とも言えない悲壮感を漂わせることができる。
こいつには、好きなことが好きなようにできない理由があるのではないか。
ただ淡々とやるべきことをやるだけ、という感情の抜けた禁欲的な人格を作り上げた、壮絶な過去があるのではないか。
そんなものなど存在しない。
だが、そう思わせられるだけの伏線は少しずつ散りばめている。
「オスカーくん、ほんとに年下? 実はもう何百年も生きてます、とかないの?」
「残念ながら、俺はただの十六歳だ」
「あたしは毎回オスカーくんに気づかさせられてばかりだなぁ」
頬に手を当て、可愛らしい溜め息をつくエリザベス。
彼女も、そろそろ感じる頃だろう。
西園寺オスカーが、何かとんでもない秘密を隠し持った特別な生徒なのだと。
「あたしも、もっと自分に自信が持てたらいいんだけど……」
いつも明るい印象のエリザベスの表情が、少しだけ暗くなった。
俺と目を合わせようともしない。
彼女も彼女で、何か悩みを抱えているのかもしれない。
「俺に自信があると思うのか?」
押印処理が終わった五冊の本を抱え、カウンターに背を向ける。
エリザベスが見ているのは俺の背中だ。
掴みどころのない、不誠実で、今にもどこかに行ってしまいそうな遠い背中。
「はっきり言っておこう。俺は別に、自分に自信があるわけではない」
一歩踏み出し、言葉を紡ぐ。
「自分の努力を知っているだけだ」
その言葉を残し、俺は歩き出す。
もう立ち止まらない。そのまま学園図書館の出口に向かって、ひたすらに歩いていくのだった。
『待って──』
そう呼び止めようとするエリザベス。
だが、俺は聞こえないふりをしていた。
なぜなら、それがなんとなく「かっこよさそう」だから。
西園寺オスカーは、振り返らない。
《キャラクター紹介》
・名前:如月エリザベス
・年齢:17歳
・学年:ゼルトル勇者学園2年生
・誕生日:10月7日
・性別:♀
・容姿:濃い紫の長髪、瑠璃色の瞳
・身長:156cm
・信仰神:知恵の女神アーテ
とはいえ、ただ好きな書物や小説をだらだらと読んでいたわけではない。
神能の応用に関する文献や、剣術の歴史、神話など、授業及び戦闘に役立つような書物を必死に読み漁った。
これはある意味独学ということになるが、こうして自分で好きなように学習することもまた、終わりなき進化への旅だと思っている。
ただ人に教えられた通りのことをやるだけでなく、自分で見つけた課題を自分で解決することで、限界を超える成長ができるのだ。
「貸出を頼む」
「今日も凄い量の本だね、オスカーくん」
本の貸出は、カウンターにいる図書委員に頼むことになっている。
ゼルトル勇者学園では委員会活動というものもあり、基本的に生徒は何かしらの委員会に入る必要がある。
ちなみに俺は清掃委員会に入って闘技場清掃の担当をしているわけだが、結局いつも俺が闘技場を使っているので、そのついでという形で掃除できるから効率的だ。
分厚い五冊の本の貸出を頼んだ俺に対し、名前まで呼んで声をかけてくれたのは図書委員の如月エリザベス。
図書委員の仕事をよほど好いているのか、毎日図書カウンター当番をしている。
そのためか、こうして貸出の際に毎回言葉を交わすのだ。
この学園で西園寺オスカーという名前を認知している数少ない生徒のひとり。
濃い紫の長髪はセレナと同じくらいに長く、艶がある。セレナが前髪を作っていることに対し、エリザベスは真ん中で分けて横に流していた。
瞳は瑠璃色。濃い青だ。
「俺はただ、自らに課したことを愚直にこなしているだけだ」
エリザベスの言葉に、淡々と答える。
ちなみに、彼女は俺よりひとつ年上の十七歳で二年生というわけだが、西園寺オスカーとしてわざわざ敬語を使ったり気を遣ったりすることはない。
同じゼルトル勇者学園の生徒である限り、俺達の立場は対等だ。
実力を持つということはそういうことでもある。
「寝不足、なんじゃない? 毎日そんなにたくさんの本を読んで、十分に寝れているとは思えないよ」
わざわざ心配してくれるエリザベス先輩。
まだ二ヶ月程度の図書館だけでの付き合いではあるが、彼女はとても純粋で優しい人だと思う。どんな生徒に対しても同じように温かい笑みで接し、実際に同性からも異性からも、多くの信頼を寄せられているようだった。
よく友人らしき人から何かを頼まれたり、相談されたりしているのを見たことがある。
面白いことに、毎日学園図書館に来て五冊も貸出をするような奴は俺だけなので、すっかり気に入られたのか、彼女の方からよく話しかけてくるようになった。
「それより、エリザベスは毎日カウンター当番をして大変ではないか? 他にもやりたいことはあるだろうに」
こうして発言する時、俺が見るのは大抵の場合、虚空だ。
どこを見ているのかわからない。
そう思わせることで、西園寺オスカーをより一層不思議な生徒に仕立て上げる。
「あたしは好きだからやってるんだよ。でも、そしたらオスカーくんも同じ、なのかな?」
「どうだろうな。俺はやるべきことをやっているだけだ」
「オスカーくんのそういうところ、尊敬するなぁ」
クスクスッと笑ったエリザベスが、ぼそっと呟く。
「なに、俺はつまらない人間だ。エリザベスは自分の好きなことに正直に生きているように思える。それは何よりも尊いことだ」
特に最後の部分は小声で言った。
そうすることで、何とも言えない悲壮感を漂わせることができる。
こいつには、好きなことが好きなようにできない理由があるのではないか。
ただ淡々とやるべきことをやるだけ、という感情の抜けた禁欲的な人格を作り上げた、壮絶な過去があるのではないか。
そんなものなど存在しない。
だが、そう思わせられるだけの伏線は少しずつ散りばめている。
「オスカーくん、ほんとに年下? 実はもう何百年も生きてます、とかないの?」
「残念ながら、俺はただの十六歳だ」
「あたしは毎回オスカーくんに気づかさせられてばかりだなぁ」
頬に手を当て、可愛らしい溜め息をつくエリザベス。
彼女も、そろそろ感じる頃だろう。
西園寺オスカーが、何かとんでもない秘密を隠し持った特別な生徒なのだと。
「あたしも、もっと自分に自信が持てたらいいんだけど……」
いつも明るい印象のエリザベスの表情が、少しだけ暗くなった。
俺と目を合わせようともしない。
彼女も彼女で、何か悩みを抱えているのかもしれない。
「俺に自信があると思うのか?」
押印処理が終わった五冊の本を抱え、カウンターに背を向ける。
エリザベスが見ているのは俺の背中だ。
掴みどころのない、不誠実で、今にもどこかに行ってしまいそうな遠い背中。
「はっきり言っておこう。俺は別に、自分に自信があるわけではない」
一歩踏み出し、言葉を紡ぐ。
「自分の努力を知っているだけだ」
その言葉を残し、俺は歩き出す。
もう立ち止まらない。そのまま学園図書館の出口に向かって、ひたすらに歩いていくのだった。
『待って──』
そう呼び止めようとするエリザベス。
だが、俺は聞こえないふりをしていた。
なぜなら、それがなんとなく「かっこよさそう」だから。
西園寺オスカーは、振り返らない。
《キャラクター紹介》
・名前:如月エリザベス
・年齢:17歳
・学年:ゼルトル勇者学園2年生
・誕生日:10月7日
・性別:♀
・容姿:濃い紫の長髪、瑠璃色の瞳
・身長:156cm
・信仰神:知恵の女神アーテ
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