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最強の中二病編
その12 系統の違う双子姉妹
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グレイソンの怪我の応急処置はすぐに完了した。
彼が吐血して倒れているところまで近寄り、治癒の神能、〈超回復〉を施す。
治癒魔術と似ているが、これは少し違う。治癒魔術に関しては使える者が限られていて、条件なしで自分の魔力を患者に分け与えることができるという希少なものだ。
俺はかなり万能な男だが、魔術は苦手だ。
向き不向きがあり、魔術の才能がある者は魔術師として生きる方針を立てていく。まあ、それは今回どうでもいい話だが。
高出力の波動で飛ばされた小さな少女も頑丈だったらしい。
すぐさま戦場にぺたぺたと駆けつけ、俺がグレイソンを治療する様子を眺めていた。
「意識はまだ戻っていないようだ」
ブルー姉妹に背中を向けて言う。
グレイソンの外傷は全て治したし、骨も元通りにくっつけておいた。
〈超回復〉は、一度発動すれば徐々に自分の魔力を消耗させ、立ち上がれないまでの疲労感をもたらす。四時間以上の睡眠を取れば無効になるということも、これまでの経験でわかっていた。
要するに、俺の神能は諸刃の剣。
必ず代償か条件がある。
俺がグレイソンにこれ以上優しくしてやる義理はない。
ならば、今から俺はどのようにして退場するべきか。
生徒会長の八乙女アリアの前から消えた時のように、視界を奪って消え去る、という演出もアリだが……二度同じ手を使うというのも、観客は飽きてしまうだろう。
(この戦い、最初から見られていたとはな)
さっと頭上に視線を送る。
その先にはずっと気配を消して決闘を観戦していた、藍色の髪の男子生徒の姿が。
観客席の柱の影に隠れてたようだ。
無論、俺はここに入ってきた時から気づいていたが。
「生徒会に知れ渡ったか」
例の男子生徒から一瞬視線を外すと、彼はもうとっくに姿を消していた。
なかなかの実力者であることは見ただけでわかる。
俺の呟きはブルー姉妹には聞こえなかった。
代わりに、二人が少しずつ近づいてきている。
「応急処置は俺が済ませておいた。これならただ寝ている状態と何も変わらない。三日もすれば元通りだ。医務室まで連れていく必要もないだろう」
「あの……」
短髪の少女が何か言いたそうにしている。
髪の色も瞳の色も真っ青だ。背は低く、男としては小柄な俺よりも、頭ひとつ分かそれ以上に小さい。
顔立ちは同学年にしては幼く、いわゆる可愛い系。
俺は違うが、少女好きからすれば、天使のような逸材であることは間違いない。
「さ、西園寺様! す、すごく、かっこよかったのです!!」
目を輝かせ、頬を真っ赤にしながら。
名前も知らない少女は言った。
その声も幼く、容姿から想像したままのものだ。期待を裏切らない。
「そうか」
勝利の旋風に巻き込まれながら、クールな表情を維持する俺。
「俺のことはオスカーでいい。悪いが、俺はまだ君達の名を覚えていないんだ。良かったら今ここで教えて欲しい」
「むぅ」
おや、少し怒ったようだ。
頬を膨らませ、ぷりぷりしている。
「あたちは若槻クルリンなのです! こっちがあたちの双子のお姉ちゃんのミクリン!」
妹によって紹介された姉のミクリンは、少し恥ずかしそうに頬を赤らめた。
「ちょ──クルリン! わたしは自分の名前そんなに好きじゃないから……」
「クルリン、ミクリン……美しい名だ」
珍しい名前なのかもしれないが、俺は立派な名前だと思う。
恥じる必要などない。
うつむいているミクリンに、優しく声を投じる。
「俺を見ろ」
まだ顔を紅潮させたまま、恐る恐る視線を上げるミクリン。
彼女は妹のクルリンとは違い、大人びていた。
背は妹よりずっと高く、顔立ちは整っていて綺麗だ。髪と瞳の色が同じでも、本当に双子なのかと疑ってしまうほどに纏う雰囲気が異なる。
ちなみに、クルリンは胸部の発達がさほど見られないことに比べ、ミクリンは発達が著しく、女性特有の体つきを表現していた。
「ミクリン、自分の名を恥じることはない。堂々としていろ」
「オ、オスカー君……」
俺の一言が重みを増し、ミクリンを包み込む。
「あの、オスカー君、すみませんでした」
そしたら急にミクリンが申し訳なさそうに頭を下げた。
クルリンとは違って落ち着いた声で、真面目そうな口調だ。
「グレイソン君とは学園に入る前からの友人で、尊敬する人のひとりなんです。決して根は悪い人じゃないですし、きっと──」
「それはすぐにわかった。なに、今回の件は俺の態度の方が問題だ。一ノ瀬には俺の方から冷静に話をしておく」
「ありがとうございます」
ミクリンが目を輝かせ、頬を緩める。
二人との会話が落ち着いたことを確認すると、俺は素早く表情を切り替えた。瞳の光を抑え、シリアスな雰囲気を作る。
「一ノ瀬は俺が寮まで運んでおこう。だがその前に、二人に約束して欲しいことがある」
「およよ?」「約束、ですか?」
「俺の実力に関しては黙っておいて欲しいんだ。事情は話せないが、俺は普段実力を偽り、平凡な一般生徒を演じている。もしこの実力が周囲に知られれば……」
意図的に生み出す沈黙。
「「ゴクリ」」
「──学園を揺るがす悲劇が起こる」
そんなこと起こるはずもないが、演出としては最高だ。
意味もなく虚空を見つめ、溜め息をつく。
「俺の実力を知る者は少ない。そして今日、クルリン、ミクリン、そして一ノ瀬はその秘密を知る数少ない人物となった。もし秘密を守れないようであれば……」
「「ゴクリ」」
「それなりの処置は考えている」
「あ、あたちは秘密守るのです!」
「わかりました。今後もよろしくお願いします」
また作り出す五秒の沈黙。
この沈黙は重要な意味を持つ。
緊張感を高め、西園寺オスカーという最強の生徒の、脅威性を強めた。
「ふたりを信じよう。今日より君達は、俺の仲間だ」
「ふわぁ」「仲間、ですか。いいですね」
青髪双子姉妹の返事に、俺は。
満足したように、頬を緩めた。
《キャラクター紹介》
・名前:若槻クルリン
・年齢:16歳
・学年:ゼルトル勇者学園1年生
・誕生日:11月11日
・性別:♀
・容姿:青髪短髪、碧眼
・身長:143cm
(本文ではcmはCMと表記される)
・信仰神:水の女神ネプティーナ
彼が吐血して倒れているところまで近寄り、治癒の神能、〈超回復〉を施す。
治癒魔術と似ているが、これは少し違う。治癒魔術に関しては使える者が限られていて、条件なしで自分の魔力を患者に分け与えることができるという希少なものだ。
俺はかなり万能な男だが、魔術は苦手だ。
向き不向きがあり、魔術の才能がある者は魔術師として生きる方針を立てていく。まあ、それは今回どうでもいい話だが。
高出力の波動で飛ばされた小さな少女も頑丈だったらしい。
すぐさま戦場にぺたぺたと駆けつけ、俺がグレイソンを治療する様子を眺めていた。
「意識はまだ戻っていないようだ」
ブルー姉妹に背中を向けて言う。
グレイソンの外傷は全て治したし、骨も元通りにくっつけておいた。
〈超回復〉は、一度発動すれば徐々に自分の魔力を消耗させ、立ち上がれないまでの疲労感をもたらす。四時間以上の睡眠を取れば無効になるということも、これまでの経験でわかっていた。
要するに、俺の神能は諸刃の剣。
必ず代償か条件がある。
俺がグレイソンにこれ以上優しくしてやる義理はない。
ならば、今から俺はどのようにして退場するべきか。
生徒会長の八乙女アリアの前から消えた時のように、視界を奪って消え去る、という演出もアリだが……二度同じ手を使うというのも、観客は飽きてしまうだろう。
(この戦い、最初から見られていたとはな)
さっと頭上に視線を送る。
その先にはずっと気配を消して決闘を観戦していた、藍色の髪の男子生徒の姿が。
観客席の柱の影に隠れてたようだ。
無論、俺はここに入ってきた時から気づいていたが。
「生徒会に知れ渡ったか」
例の男子生徒から一瞬視線を外すと、彼はもうとっくに姿を消していた。
なかなかの実力者であることは見ただけでわかる。
俺の呟きはブルー姉妹には聞こえなかった。
代わりに、二人が少しずつ近づいてきている。
「応急処置は俺が済ませておいた。これならただ寝ている状態と何も変わらない。三日もすれば元通りだ。医務室まで連れていく必要もないだろう」
「あの……」
短髪の少女が何か言いたそうにしている。
髪の色も瞳の色も真っ青だ。背は低く、男としては小柄な俺よりも、頭ひとつ分かそれ以上に小さい。
顔立ちは同学年にしては幼く、いわゆる可愛い系。
俺は違うが、少女好きからすれば、天使のような逸材であることは間違いない。
「さ、西園寺様! す、すごく、かっこよかったのです!!」
目を輝かせ、頬を真っ赤にしながら。
名前も知らない少女は言った。
その声も幼く、容姿から想像したままのものだ。期待を裏切らない。
「そうか」
勝利の旋風に巻き込まれながら、クールな表情を維持する俺。
「俺のことはオスカーでいい。悪いが、俺はまだ君達の名を覚えていないんだ。良かったら今ここで教えて欲しい」
「むぅ」
おや、少し怒ったようだ。
頬を膨らませ、ぷりぷりしている。
「あたちは若槻クルリンなのです! こっちがあたちの双子のお姉ちゃんのミクリン!」
妹によって紹介された姉のミクリンは、少し恥ずかしそうに頬を赤らめた。
「ちょ──クルリン! わたしは自分の名前そんなに好きじゃないから……」
「クルリン、ミクリン……美しい名だ」
珍しい名前なのかもしれないが、俺は立派な名前だと思う。
恥じる必要などない。
うつむいているミクリンに、優しく声を投じる。
「俺を見ろ」
まだ顔を紅潮させたまま、恐る恐る視線を上げるミクリン。
彼女は妹のクルリンとは違い、大人びていた。
背は妹よりずっと高く、顔立ちは整っていて綺麗だ。髪と瞳の色が同じでも、本当に双子なのかと疑ってしまうほどに纏う雰囲気が異なる。
ちなみに、クルリンは胸部の発達がさほど見られないことに比べ、ミクリンは発達が著しく、女性特有の体つきを表現していた。
「ミクリン、自分の名を恥じることはない。堂々としていろ」
「オ、オスカー君……」
俺の一言が重みを増し、ミクリンを包み込む。
「あの、オスカー君、すみませんでした」
そしたら急にミクリンが申し訳なさそうに頭を下げた。
クルリンとは違って落ち着いた声で、真面目そうな口調だ。
「グレイソン君とは学園に入る前からの友人で、尊敬する人のひとりなんです。決して根は悪い人じゃないですし、きっと──」
「それはすぐにわかった。なに、今回の件は俺の態度の方が問題だ。一ノ瀬には俺の方から冷静に話をしておく」
「ありがとうございます」
ミクリンが目を輝かせ、頬を緩める。
二人との会話が落ち着いたことを確認すると、俺は素早く表情を切り替えた。瞳の光を抑え、シリアスな雰囲気を作る。
「一ノ瀬は俺が寮まで運んでおこう。だがその前に、二人に約束して欲しいことがある」
「およよ?」「約束、ですか?」
「俺の実力に関しては黙っておいて欲しいんだ。事情は話せないが、俺は普段実力を偽り、平凡な一般生徒を演じている。もしこの実力が周囲に知られれば……」
意図的に生み出す沈黙。
「「ゴクリ」」
「──学園を揺るがす悲劇が起こる」
そんなこと起こるはずもないが、演出としては最高だ。
意味もなく虚空を見つめ、溜め息をつく。
「俺の実力を知る者は少ない。そして今日、クルリン、ミクリン、そして一ノ瀬はその秘密を知る数少ない人物となった。もし秘密を守れないようであれば……」
「「ゴクリ」」
「それなりの処置は考えている」
「あ、あたちは秘密守るのです!」
「わかりました。今後もよろしくお願いします」
また作り出す五秒の沈黙。
この沈黙は重要な意味を持つ。
緊張感を高め、西園寺オスカーという最強の生徒の、脅威性を強めた。
「ふたりを信じよう。今日より君達は、俺の仲間だ」
「ふわぁ」「仲間、ですか。いいですね」
青髪双子姉妹の返事に、俺は。
満足したように、頬を緩めた。
《キャラクター紹介》
・名前:若槻クルリン
・年齢:16歳
・学年:ゼルトル勇者学園1年生
・誕生日:11月11日
・性別:♀
・容姿:青髪短髪、碧眼
・身長:143cm
(本文ではcmはCMと表記される)
・信仰神:水の女神ネプティーナ
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