【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命

文字の大きさ
36 / 103
魔王セト襲来編

その36 戦闘準備☆

しおりを挟む
 スペイゴール大陸の南に位置する、ゼルトル王国。

 歴史ある王国であり、大陸でも指折りの勇者が誕生する地でもあった。

 勇者というのは、魔王に挑む者のことである。
 神々の力を借り、その対極の存在である邪悪の化身、魔王に果敢に立ち向かうのだ。

 神々と同じく、この世界には数多くの魔王が存在する。
 種族は様々で、稀だが人間が魔王として進化することもあれば、ダークエルフや魔人などの闇種族と呼ばれる種族の者が魔王への進化を遂げることもあった。

 ゼルトル勇者学園は、〈勇者の聖地〉とも呼ばれるゼルトル王国が莫大な予算を投じて作った、勇者候補を育成するための教育機関である。

『ヤバい! 魔王が来たぁぁぁああああ!』

『助けて! 死んじゃうよぉぉおおお!』

『俺達は勇者になるんだ! 今すぐに魔王討伐に向かおう!』

 そんな学園は今、混乱の渦に巻き込まれている。

 ゼルトル王国に魔王が侵入してきたのだ。

 その魔王の名はセト。
 大陸西側地域での活動が活発な、近年力をつけてきた新米魔王である。

 元々は魔人の剣士で、殺しを日常的に行っている、武力が全ての魔王だ。

 魔王セトに交渉は通用しない。彼には理性などほとんど残っておらず、狂った野獣のように、目の前にあるものを破壊していく。

 腕力、魔力、身体能力は桁外れに高く、さらには斬りつけた相手を堕落させるという〈暗黒剣ソード・オブ・ダークネス〉を所持していた。
 この圧倒的な力に抗うことができるのは、ゼルトル王国が誇る勇者達のみ。

 勇者学園を卒業し、魔術師や回復術師ヒーラーなど、優秀な仲間を集めて勇者パーティを作る。その勇者パーティを率いる勇者として、王国外にいる魔王討伐へと向かわされるのだ。
 通常、王国の防衛はそれなりに・・・・・訓練を受けた騎士団が行っている。

 だが、今回は魔王が直々にゼルトル王国へと乗り込んできたのだ。それも、単身で。

 前代未聞の事態に、ゼルトル王国の至る所で混乱が広がる。
 魔王討伐の旅に出た勇者パーティを連れ戻そうにも、かなり時間と労力、費用コストがかかりそうだ。

「アリア君、どうするつもりだい? ボク達学生に出る幕はあるのかな?」

 緊張が張り詰める生徒会室。

 少し前まで呼び出されていた西園寺さいおんじオスカーは正面の扉から颯爽と立ち去り、残された会長アリア副会長アレクサンダーは魔王セト討伐の準備をしていた。
 制服の上から胸当てと肘当てを装備し、剣を腰に備える。

 基本、勇者は動きやすさを重視して軽装だ。
 怪我のリスクも高まるが、勇敢さがなくては勇者は務まらない。自分自身を奮い立たせ、戦いに臨む。

「多くの勇者パーティが王国を出ている以上、わたくし達が魔王を阻止しなくては、犠牲者が尽きません。この学園の生徒会長として、わたくしも参加させていただきます」

 普段のおしとやかな印象とは打って変わって、凛々しい表情を見せるアリア。

 アレクサンダーはこういう時に改めて実感する。
 そういえばこの純潔の美少女は、この学園のアイドルではなく、学園を統率する生徒会長・・・・なのだ、と。
 小さな溜め息をこぼし、パチンッと両手を合わせる。乾いた音が生徒会室に響き渡った。

「わかった。とはいえ、教師がボク達の外出と戦闘を許可してくれるかどうか。それが心配だけど――」

『失礼します』

 生徒会室の扉が叩かれ、細身の男子生徒が入ってくる。

 片眼鏡をかけた、深緑の髪の三年生、九条くじょうガブリエル。
 得意の座学でオスカーとの勝負に負けた後も、こうして生徒会幹部としての仕事を継続している。それは、自分を負かした相手でもあるオスカーのおかげだ。

 彼がガブリエルの退学を阻止し、生徒会にも残らせた。
 勝負後、完全に自信を消失していた〈座学の帝王〉に、オスカーが告げた言葉。

『──九条ガブリエル、忘れるな。たとえお前がここで立ち止まろうと、俺は走り続ける』

 ――悔しい。
 はっきり言って、オスカーの言動の全てはガブリエルの癪に障る。生意気が過ぎる後輩だ。だが、西園寺オスカーには圧倒的な強さがあった。

 座学ならば誰にも負けない、と思っていたかつての自分。

 試験科目全てで満点を取ることができたのは、例年通りだ。今回の敗因はオスカーを見くびっていたことと、戦い方を深く考えなかったこと。
 初めて、座学においての好敵手ライバルができた。

 ガブリエルにとって、西園寺オスカーは実力を認めている・・・・・敵だ。退学の危機に陥った自分に手を差し伸べてくれたとはいえ、オスカーのことを友人とするわけにはいかない。

 だが、落ち込んで立ち止まっている間にも、西園寺オスカーという存在は走り続けている。その刺激が、今のガブリエルにはなくてはならないものとなっていた。

「教師陣から〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉幹部の出動命令が出た」

 学園が生徒達の動揺でざわめく中、ガブリエルが報告する。

 魔王侵入の気配を感じ取った彼は、すぐさま職員室へ赴き、幹部の出動指示を仰いだのだ。

「おっ、ガブリエル君! やっぱりできる男だねぇ」

天王寺てんのうじ月城つきしろにも声をかけておいた。吾輩は魔王との戦闘ではさほど貢献できないだろうが、指揮官を務めることくらいはできる」

「わかりました。それでは、ガブリエルさんには指揮官をお願い致します」

 ゼルトル勇者学園の生徒で最高の戦力を誇る、〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉の幹部達。

 実際の戦闘での実力を低く見積もっているガブリエルも、学園で上位の戦闘力を持っている。この異常者五人が集まれば、大概の問題は解決してしまうだろう。



 ***


 
 〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉の幹部に勝てる存在。

 準備万端の彼らに代わり、王都で暴れている魔王セトを倒すことができる無二の存在。

 すでにこの時点で、魔王セトのすぐ目の前に立ちはだかっている小柄な少年。
 威風堂々たる立ち姿で、身長二Мメルトルほどの魔王を見上げている。

 王都の街並みは美しい。
 
 レンガや石造りの建物が立ち並び、酒場やギルド、劇場などの施設も充実している。

 しかし、魔王セトの破壊により中心街の建造物は半壊し、爆発に巻き込まれた国民の死体が転がっていた。中でも、魔王セトに直接殺された国民は腕や脚が無残に裂かれ、大量の血を残して命を落としている。

 そんな惨い光景を見て、いきなり現れた黒髪の少年は苦しそうに顔を歪めた。目前の魔王セトを睨みつけ、静かに剣を抜く。

『小僧! 早く逃げろ!!』

『あれは魔王だ! お前みたいなチビが敵う相手じゃねぇ!』

『お願い、逃げて!』

 少年と魔王との対峙。

 この場面シーンを見た国民は、誰もが少年の死を覚悟した。少年を哀れみ、大声で彼を止めようとする者もいた。必死に逃げながら、おとりになってくれた少年に感謝した者もいた。

 だが、少年にとってはそんなことなどどうでもいい。

 西園寺オスカーは自分が自然と笑みを浮かべていることに気づいた。
 
 楽しみで仕方がないのだ。
 
 これから巻き起こる、魔王セトの激しい戦闘バトルのことが。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】オレの勇者パーティは全員アホだが強すぎる。

エース皇命
ファンタジー
 異世界に来て3年がたった。  オレの所属する勇者パーティ、イレギュラーズは相変わらず王都最強のパーティとして君臨している。  エルフのクリス、魔術師のジャック、猫耳少女ランラン、絶世の美女シエナ。  全員チート級の強さを誇るけど、どこか抜けていて、アホ全開である。  クリスは髪のセットに命をかけて戦いに遅刻するし、ジャックは賢いもののとことん空気を読まない。ランランは3歩あるくだけで迷子になるし、シエナはマイペースで追い詰めた敵を見逃す。  そんなオレたちの周囲の連中もアホばかりだ。  この世界にはアホしかいないのか。そう呆れるオレだったけど、そんな連中に囲まれている時点で、自分も相当なアホであることに気づくのは、結構すぐのことだった。  最強のアホチーム、イレギュラーズは今日も、王都を救う! ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

【薬師向けスキルで世界最強!】追放された闘神の息子は、戦闘能力マイナスのゴミスキル《植物王》を究極進化させて史上最強の英雄に成り上がる!

こはるんるん
ファンタジー
「アッシュ、お前には完全に失望した。もう俺の跡目を継ぐ資格は無い。追放だ!」  主人公アッシュは、世界最強の冒険者ギルド【神喰らう蛇】のギルドマスターの息子として活躍していた。しかし、筋力のステータスが80%も低下する外れスキル【植物王(ドルイドキング)】に覚醒したことから、理不尽にも父親から追放を宣言される。  しかし、アッシュは襲われていたエルフの王女を助けたことから、史上最強の武器【世界樹の剣】を手に入れる。この剣は天界にある世界樹から作られた武器であり、『植物を支配する神スキル』【植物王】を持つアッシュにしか使いこなすことができなかった。 「エルフの王女コレットは、掟により、こ、これよりアッシュ様のつ、つつつ、妻として、お仕えさせていただきます。どうかエルフ王となり、王家にアッシュ様の血を取り入れる栄誉をお与えください!」  さらにエルフの王女から結婚して欲しい、エルフ王になって欲しいと追いかけまわされ、エルフ王国の内乱を治めることになる。さらには神獣フェンリルから忠誠を誓われる。  そんな彼の前には、父親やかつての仲間が敵として立ちはだかる。(だが【神喰らう蛇】はやがてアッシュに敗れて、あえなく没落する)  かくして、後に闘神と呼ばれることになる少年の戦いが幕を開けた……!

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

処理中です...