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休日と大阪出張編
第36話 女友達のイメチェンには気付けない鈍感主人公
月曜の朝は憂鬱だ。
普段はそうなるんだが、今日は清々しい気分。
土日の冒険者ワールドでの完全休日を終え、また今日からダンジョン攻略を再開できる。
楓香は俺を襲えなかったことに不満を感じているらしく、登校時はいつも以上に強く俺の腕を抱き締めてきた。
もうそんなことにも口を出さなくなったのは、俺がこの状況に慣れてしまったからだろう。慣れって怖い。
「黒瀬、おはよ」
「佐藤?」
教室に入ると、どこか雰囲気が変わった佐藤がいた。
髪型はポニーテール。変わってない。
服装は夏服。変わってない。
眉の形も目の形も変わってない。
だが、何かが違う。そんな気がした。
「週末は忙しかったのか?」
「え、な……なんでそんなこと聞いてくるわけ?」
「連絡したのに既読が付かなかったからな」
「あ……いやその……実はちょっと前にスマホなくしたのよね」
この時代にスマホをなくすとは深刻な事態だな。
「そうか。大変だったな」
「ねえ、それで、連絡って何のことだったの? 大事なやつ?」
「冒険者ワールドに誘っただけだ。気にしないでくれ」
「え! あたしをデートに誘ったってわけ?」
「違うから安心してくれ。楓香も大輔も一緒だった」
それだけ言って、自分の席に戻る。
佐藤の雰囲気への違和感の正体。それには気付けなかったが、俺はそもそも些細な変化に敏感なタイプじゃない。
とりあえず、今日は放課後の仕事のことだけ考えよう。
***
昼休み。
腕時計から振動を感じ、教室から緊急脱出。
剣騎からの通知だった。
3回も電話をかけてきている。俺が学校にいることを知っておきながらかけてきたということは……あまりいいニュースではないのかもしれない。
『才斗、要点だけ言うよ。真一君が殺された』
「……は?」
***
突然知らされたSランク冒険者の死。
それも、ダンジョンでモンスターに殺された、という意味ではない。
同じ冒険者に殺された。
俺は体調が悪いと訴えて保健室に行き、狂ったように頭を壁に打ち付け、正気でないことをアピール。学校にいては危険ということで、今日は早退となった。
「もっといい早退の方法はあったのに、そんな狂ったやり方を選ぶとはね」
「確実な方法だ。いろいろ裏で手回しされるより早い」
「そうなのかな……」
俺が乗るのは【ウルフパック】が所有するプライベートジェット。
向かうは大阪。
剣騎はわざわざ俺を迎えにくるために一度東京に戻り、こうしてジェットを操縦してくれている。
さすがは万能な男、というか、普通に剣騎の器用さには驚かされる。
「直接才斗と話がしたくてね。効率は悪いけど、迎えにくることにした」
学校から出た俺は、猛ダッシュで西園寺リバーサイドに向かい剣騎と合流。そのままジェットに乗せてもらっている。
楓香はいない。
これは上層部で片付ける問題だし、これから戦う相手が真一を殺せるような冒険者であれば、Cランク冒険者である楓香の出る幕はないのだ。
「大阪で通夜とかがあるのか?」
「もし彼が死んだのであれば、そうなるかもしれないね」
「……?」
剣騎の表情に悲しみはない。
同僚を失ったというのに、軽薄な男だ。そう考えることは簡単。
だが、剣騎とこれまで関わってきた中で、彼がそんな冷淡な男でないこともわかっている。
だとしたら――。
「真一はまだ生きている、ということか?」
「んー、それはなかなか苦しい話さ。彼の腕時計から生命活動の停止がわかった。ダンジョン内であれば通信は繋がらない。少なくとも、真一君はダンジョンの外で殺された」
「場所の逆探知はできないのか?」
「残念ながら、敵は慎重でね。真一君の生命活動停止がわかって数分のことだ。敵は位置情報も通信機能も全てシャットアウトして、腕時計の機能を完封した」
腕時計は壊れない。
最強の金属でできているので、純粋に砕いたりすることは事実上不可能。
だとすれば、通信の遮断。
相手は腕時計が脅威になることがわかっていた。だからその腕時計対策もしてきたというわけだ。
「【ウルフパック】に詳しい人物が敵ということか?」
「少なくとも、腕時計の万能さには気付いてたってことさ」
「冷静なんだな」
「そう見えるかい?」
剣騎は操縦席に座っている。
俺は後部座席で外の景色を眺めていた。
他に人はいない。
雲の上を飛んでいるため、今どのあたりを飛んでいるのかはわからなかった。聞けば教えてくれただろうが、今はあまり話すような気分でもない。
冒険者は確かに死と隣り合わせだ。
だが、だからといって死が軽いものなわけじゃない。少し前まで普通に言葉を交わし合っていた相手ともう語り合えないと思うと……心が重くなる。
「剣騎は……誰が真一を殺したか見当がついてるんじゃないか?」
「Sランク冒険者を殺せる実力者は、そんなにいない。せっかく彼女ができたと言って喜んでいたのに……」
「彼女? 真一に彼女ができたのか?」
「ああ……まだ確信は持てないけど、才斗には言っておくべきかもしれない。実はその彼女っていうのが……黒瀬天音——長年行方不明になっていた君のお姉さんかもしれない」
普段はそうなるんだが、今日は清々しい気分。
土日の冒険者ワールドでの完全休日を終え、また今日からダンジョン攻略を再開できる。
楓香は俺を襲えなかったことに不満を感じているらしく、登校時はいつも以上に強く俺の腕を抱き締めてきた。
もうそんなことにも口を出さなくなったのは、俺がこの状況に慣れてしまったからだろう。慣れって怖い。
「黒瀬、おはよ」
「佐藤?」
教室に入ると、どこか雰囲気が変わった佐藤がいた。
髪型はポニーテール。変わってない。
服装は夏服。変わってない。
眉の形も目の形も変わってない。
だが、何かが違う。そんな気がした。
「週末は忙しかったのか?」
「え、な……なんでそんなこと聞いてくるわけ?」
「連絡したのに既読が付かなかったからな」
「あ……いやその……実はちょっと前にスマホなくしたのよね」
この時代にスマホをなくすとは深刻な事態だな。
「そうか。大変だったな」
「ねえ、それで、連絡って何のことだったの? 大事なやつ?」
「冒険者ワールドに誘っただけだ。気にしないでくれ」
「え! あたしをデートに誘ったってわけ?」
「違うから安心してくれ。楓香も大輔も一緒だった」
それだけ言って、自分の席に戻る。
佐藤の雰囲気への違和感の正体。それには気付けなかったが、俺はそもそも些細な変化に敏感なタイプじゃない。
とりあえず、今日は放課後の仕事のことだけ考えよう。
***
昼休み。
腕時計から振動を感じ、教室から緊急脱出。
剣騎からの通知だった。
3回も電話をかけてきている。俺が学校にいることを知っておきながらかけてきたということは……あまりいいニュースではないのかもしれない。
『才斗、要点だけ言うよ。真一君が殺された』
「……は?」
***
突然知らされたSランク冒険者の死。
それも、ダンジョンでモンスターに殺された、という意味ではない。
同じ冒険者に殺された。
俺は体調が悪いと訴えて保健室に行き、狂ったように頭を壁に打ち付け、正気でないことをアピール。学校にいては危険ということで、今日は早退となった。
「もっといい早退の方法はあったのに、そんな狂ったやり方を選ぶとはね」
「確実な方法だ。いろいろ裏で手回しされるより早い」
「そうなのかな……」
俺が乗るのは【ウルフパック】が所有するプライベートジェット。
向かうは大阪。
剣騎はわざわざ俺を迎えにくるために一度東京に戻り、こうしてジェットを操縦してくれている。
さすがは万能な男、というか、普通に剣騎の器用さには驚かされる。
「直接才斗と話がしたくてね。効率は悪いけど、迎えにくることにした」
学校から出た俺は、猛ダッシュで西園寺リバーサイドに向かい剣騎と合流。そのままジェットに乗せてもらっている。
楓香はいない。
これは上層部で片付ける問題だし、これから戦う相手が真一を殺せるような冒険者であれば、Cランク冒険者である楓香の出る幕はないのだ。
「大阪で通夜とかがあるのか?」
「もし彼が死んだのであれば、そうなるかもしれないね」
「……?」
剣騎の表情に悲しみはない。
同僚を失ったというのに、軽薄な男だ。そう考えることは簡単。
だが、剣騎とこれまで関わってきた中で、彼がそんな冷淡な男でないこともわかっている。
だとしたら――。
「真一はまだ生きている、ということか?」
「んー、それはなかなか苦しい話さ。彼の腕時計から生命活動の停止がわかった。ダンジョン内であれば通信は繋がらない。少なくとも、真一君はダンジョンの外で殺された」
「場所の逆探知はできないのか?」
「残念ながら、敵は慎重でね。真一君の生命活動停止がわかって数分のことだ。敵は位置情報も通信機能も全てシャットアウトして、腕時計の機能を完封した」
腕時計は壊れない。
最強の金属でできているので、純粋に砕いたりすることは事実上不可能。
だとすれば、通信の遮断。
相手は腕時計が脅威になることがわかっていた。だからその腕時計対策もしてきたというわけだ。
「【ウルフパック】に詳しい人物が敵ということか?」
「少なくとも、腕時計の万能さには気付いてたってことさ」
「冷静なんだな」
「そう見えるかい?」
剣騎は操縦席に座っている。
俺は後部座席で外の景色を眺めていた。
他に人はいない。
雲の上を飛んでいるため、今どのあたりを飛んでいるのかはわからなかった。聞けば教えてくれただろうが、今はあまり話すような気分でもない。
冒険者は確かに死と隣り合わせだ。
だが、だからといって死が軽いものなわけじゃない。少し前まで普通に言葉を交わし合っていた相手ともう語り合えないと思うと……心が重くなる。
「剣騎は……誰が真一を殺したか見当がついてるんじゃないか?」
「Sランク冒険者を殺せる実力者は、そんなにいない。せっかく彼女ができたと言って喜んでいたのに……」
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