ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命

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恋人と常にラブコメ編

第59話 作中最強キャラがまさかのアレという悲報

 日本最強の存在。
 突如として現れた【バトルホークス】所属のSSランク冒険者を前に、少年を含む俺たち3人は固まることしかできなかった。

 西園寺さいおんじが出すような鋭いものとは違う。

 彼のオーラはシンプルで、自然だ。
 無理に引き伸ばしているような感じではなく、ただそこに存在しているだけで溢れ出ている、まさにそういう感じ。

 ――どうして神宮司しんぐうじ皇命こうめいがここに……?

 有名人なので、容姿自体は知っていた。

 だが、実際に目にすると、メディアに出回っているものとはまったく違う印象を受けた。

「……耳が……尖ってる?」

「エルフ……なんですかね……」

 神宮司の耳はファンタジーに出てくる妖精、エルフのようにツンと尖っていた。

 また、容姿も幼く、背丈も低い。
 ちょうど今対峙している少年よりも低い背丈に、ほんのりと緑がかった艶のある肌。

 顔立ちは整っている。それも、人間とは思えないほど。

 黄緑色の髪は耳にかかるくらいまで伸ばしていて、外側にくるっとカールしていた。瞳の色はエメラルドグリーン。ダンジョンの中の僅かな光を反射して輝いている。

 しかし――。

「眼帯に、手首の包帯……手の甲には謎の紋章……まさか……」

 まだそう決め付けたわけじゃない。
 希望はしっかり残しておこう。神宮司の名誉のために。

「ダンジョンに咲く1輪の花。迷宮の主ロード・オブ・ダンジョン。余の庭に迷える子羊が2名。手を貸さぬわけにはいかない」

 小振りな唇から発せられる長文のセリフ。

 頑張って低い声を出そうとしているが、声帯の限界なのか可愛らしい声しか出ていない。

 この瞬間、俺は思った。

 ――こいつ、中二病だ。



 ***



 たとえ中身が中二病のイタい奴だったとしても、溢れ出るオーラから感じる強者感は変わらない。

 実際、西園寺も実はふにゃふにゃだったわけだしな。

 どうやら俺たちを助けてくれるとのことだったので、日本最強冒険者の戦いが見られると思って期待していた。

「化け物が来るとか聞いてないっす! いつ呼んだんすか!?」

「俺は呼んでない」

「ダンジョンは余の庭。その庭で闇派閥が暴れているようなら、余は直ちに駆け付ける」

 顔に手をかざし、かっこよくポーズを決める神宮司。

 エルフの耳は偽物なんじゃないかと疑って観察してみるも、違和感はまったくない。
 これまでエルフが実在するなんていう話は聞いたことがないが、こうして実際に観察できる以上は認めざるを得ない。

 神宮司が駆け出す。
 少年は必死に逃げようと走るが、スピードでも神宮司が圧倒的だ。

 トトトっと可愛く助走をつけ、ポンっと軽く跳び上がる。

 そして――。

「え、嘘でしょ――ひゃぁぁぁあああ!」

 少年が悲鳴を上げた。
 防御する間もなく、拳で吹き飛ばされる。

「容赦ありませんね」

「だな」

 少年はダンジョンの壁をぶち壊すどころか、50メートルくらい深くまでめり込んでしまった。

 神宮司は一瞬で50メートルの距離を詰め、気絶した少年を抱えて戻ってくる。

「皇命伝説に、また1つ新たな伝説が加わった」

 表情は誇らしげだ。

才斗さいとくん、なんか印象がまったく違うんですけど」

「俺もだ」

「日本のトップって、中二病だったんですね」

「その方が衝撃は大きいな」

 コソコソと、耳打ちで意見交換をする俺と楓香ふうか

 だが、エルフの耳は地獄耳だ。

「誤解しないでくれたまえ。余の言葉・行動は共に天より定められし宿命。それゆえ、余の正体がエルフであることは黙っていてくれたまえ」

「やっぱり本当にエルフなんですか? 可愛いですね」

「えっへん」

 胸を張り、満面の笑みで返す神宮司。
 近くに来てみると、背丈が120センチほどしかないことがわかった。

 完全に中二病ショタだ。ついでにエルフ。

「あ、いけない。ふふん、余はこれから深層に潜る。貴君きくんらはこの悪者を政府に預け、自分たちで倒したと報告したまえ」

「倒したのは神宮司さんでは?」

「余の力は膨大すぎる故、あまり目立ちすぎるわけにはいかないんだ。隠れ蓑を頼めるか?」

「あ、はい」

 もうとっくに目立ちすぎてるけどな、とは言えなかった。

「ふむ、利口な者たちだ。気に入った。それでは、ダンジョンでまた会おう。グッドラック」










《九州での抗争編 予告》
 夏休みは終わったが、ダンジョンで忙しくしていた黒瀬くろせたちにも休暇がやってくる。
 山口の実家がある九州に、キャンピングカーで向かうという休暇。
 黒瀬、姉の天音あまね白桃しらもも、山口、そして……黒瀬姉弟のことが大好きなアイツもまた休暇を共にするメンバーである。
 しかし、実力者2人の休暇に、ヴェルウェザーが目を付けて……。

※お気に入り登録、エール、よろしくお願いします。
 どんどん物語のスケールが大きくなっていきます。
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