59 / 140
恋人と常にラブコメ編
第59話 作中最強キャラがまさかのアレという悲報
しおりを挟む
日本最強の存在。
突如として現れた【バトルホークス】所属のSSランク冒険者を前に、少年を含む俺たち3人は固まることしかできなかった。
西園寺が出すような鋭いものとは違う。
彼のオーラはシンプルで、自然だ。
無理に引き伸ばしているような感じではなく、ただそこに存在しているだけで溢れ出ている、まさにそういう感じ。
――どうして神宮司皇命がここに……?
有名人なので、容姿自体は知っていた。
だが、実際に目にすると、メディアに出回っているものとはまったく違う印象を受けた。
「……耳が……尖ってる?」
「エルフ……なんですかね……」
神宮司の耳はファンタジーに出てくる妖精、エルフのようにツンと尖っていた。
また、容姿も幼く、背丈も低い。
ちょうど今対峙している少年よりも低い背丈に、ほんのりと緑がかった艶のある肌。
顔立ちは整っている。それも、人間とは思えないほど。
黄緑色の髪は耳にかかるくらいまで伸ばしていて、外側にくるっとカールしていた。瞳の色はエメラルドグリーン。ダンジョンの中の僅かな光を反射して輝いている。
しかし――。
「眼帯に、手首の包帯……手の甲には謎の紋章……まさか……」
まだそう決め付けたわけじゃない。
希望はしっかり残しておこう。神宮司の名誉のために。
「ダンジョンに咲く1輪の花。余は迷宮の主。余の庭に迷える子羊が2名。手を貸さぬわけにはいかない」
小振りな唇から発せられる長文のセリフ。
頑張って低い声を出そうとしているが、声帯の限界なのか可愛らしい声しか出ていない。
この瞬間、俺は思った。
――こいつ、中二病だ。
***
たとえ中身が中二病のイタい奴だったとしても、溢れ出るオーラから感じる強者感は変わらない。
実際、西園寺も実はふにゃふにゃだったわけだしな。
どうやら俺たちを助けてくれるとのことだったので、日本最強冒険者の戦いが見られると思って期待していた。
「化け物が来るとか聞いてないっす! いつ呼んだんすか!?」
「俺は呼んでない」
「ダンジョンは余の庭。その庭で闇派閥が暴れているようなら、余は直ちに駆け付ける」
顔に手をかざし、かっこよくポーズを決める神宮司。
エルフの耳は偽物なんじゃないかと疑って観察してみるも、違和感はまったくない。
これまでエルフが実在するなんていう話は聞いたことがないが、こうして実際に観察できる以上は認めざるを得ない。
神宮司が駆け出す。
少年は必死に逃げようと走るが、スピードでも神宮司が圧倒的だ。
トトトっと可愛く助走をつけ、ポンっと軽く跳び上がる。
そして――。
「え、嘘でしょ――ひゃぁぁぁあああ!」
少年が悲鳴を上げた。
防御する間もなく、拳で吹き飛ばされる。
「容赦ありませんね」
「だな」
少年はダンジョンの壁をぶち壊すどころか、50メートルくらい深くまでめり込んでしまった。
神宮司は一瞬で50メートルの距離を詰め、気絶した少年を抱えて戻ってくる。
「皇命伝説に、また1つ新たな伝説が加わった」
表情は誇らしげだ。
「才斗くん、なんか印象がまったく違うんですけど」
「俺もだ」
「日本のトップって、中二病だったんですね」
「その方が衝撃は大きいな」
コソコソと、耳打ちで意見交換をする俺と楓香。
だが、エルフの耳は地獄耳だ。
「誤解しないでくれたまえ。余の言葉・行動は共に天より定められし宿命。それ故、余の正体がエルフであることは黙っていてくれたまえ」
「やっぱり本当にエルフなんですか? 可愛いですね」
「えっへん」
胸を張り、満面の笑みで返す神宮司。
近くに来てみると、背丈が120センチほどしかないことがわかった。
完全に中二病ショタだ。ついでにエルフ。
「あ、いけない。ふふん、余はこれから深層に潜る。貴君らはこの悪者を政府に預け、自分たちで倒したと報告したまえ」
「倒したのは神宮司さんでは?」
「余の力は膨大すぎる故、あまり目立ちすぎるわけにはいかないんだ。隠れ蓑を頼めるか?」
「あ、はい」
もうとっくに目立ちすぎてるけどな、とは言えなかった。
「ふむ、利口な者たちだ。気に入った。それでは、ダンジョンでまた会おう。グッドラック」
《九州での抗争編 予告》
夏休みは終わったが、ダンジョンで忙しくしていた黒瀬たちにも休暇がやってくる。
山口の実家がある九州に、キャンピングカーで向かうという休暇。
黒瀬、姉の天音、白桃、山口、そして……黒瀬姉弟のことが大好きなアイツもまた休暇を共にするメンバーである。
しかし、実力者2人の休暇に、ヴェルウェザーが目を付けて……。
※お気に入り登録、エール、よろしくお願いします。
どんどん物語のスケールが大きくなっていきます。
突如として現れた【バトルホークス】所属のSSランク冒険者を前に、少年を含む俺たち3人は固まることしかできなかった。
西園寺が出すような鋭いものとは違う。
彼のオーラはシンプルで、自然だ。
無理に引き伸ばしているような感じではなく、ただそこに存在しているだけで溢れ出ている、まさにそういう感じ。
――どうして神宮司皇命がここに……?
有名人なので、容姿自体は知っていた。
だが、実際に目にすると、メディアに出回っているものとはまったく違う印象を受けた。
「……耳が……尖ってる?」
「エルフ……なんですかね……」
神宮司の耳はファンタジーに出てくる妖精、エルフのようにツンと尖っていた。
また、容姿も幼く、背丈も低い。
ちょうど今対峙している少年よりも低い背丈に、ほんのりと緑がかった艶のある肌。
顔立ちは整っている。それも、人間とは思えないほど。
黄緑色の髪は耳にかかるくらいまで伸ばしていて、外側にくるっとカールしていた。瞳の色はエメラルドグリーン。ダンジョンの中の僅かな光を反射して輝いている。
しかし――。
「眼帯に、手首の包帯……手の甲には謎の紋章……まさか……」
まだそう決め付けたわけじゃない。
希望はしっかり残しておこう。神宮司の名誉のために。
「ダンジョンに咲く1輪の花。余は迷宮の主。余の庭に迷える子羊が2名。手を貸さぬわけにはいかない」
小振りな唇から発せられる長文のセリフ。
頑張って低い声を出そうとしているが、声帯の限界なのか可愛らしい声しか出ていない。
この瞬間、俺は思った。
――こいつ、中二病だ。
***
たとえ中身が中二病のイタい奴だったとしても、溢れ出るオーラから感じる強者感は変わらない。
実際、西園寺も実はふにゃふにゃだったわけだしな。
どうやら俺たちを助けてくれるとのことだったので、日本最強冒険者の戦いが見られると思って期待していた。
「化け物が来るとか聞いてないっす! いつ呼んだんすか!?」
「俺は呼んでない」
「ダンジョンは余の庭。その庭で闇派閥が暴れているようなら、余は直ちに駆け付ける」
顔に手をかざし、かっこよくポーズを決める神宮司。
エルフの耳は偽物なんじゃないかと疑って観察してみるも、違和感はまったくない。
これまでエルフが実在するなんていう話は聞いたことがないが、こうして実際に観察できる以上は認めざるを得ない。
神宮司が駆け出す。
少年は必死に逃げようと走るが、スピードでも神宮司が圧倒的だ。
トトトっと可愛く助走をつけ、ポンっと軽く跳び上がる。
そして――。
「え、嘘でしょ――ひゃぁぁぁあああ!」
少年が悲鳴を上げた。
防御する間もなく、拳で吹き飛ばされる。
「容赦ありませんね」
「だな」
少年はダンジョンの壁をぶち壊すどころか、50メートルくらい深くまでめり込んでしまった。
神宮司は一瞬で50メートルの距離を詰め、気絶した少年を抱えて戻ってくる。
「皇命伝説に、また1つ新たな伝説が加わった」
表情は誇らしげだ。
「才斗くん、なんか印象がまったく違うんですけど」
「俺もだ」
「日本のトップって、中二病だったんですね」
「その方が衝撃は大きいな」
コソコソと、耳打ちで意見交換をする俺と楓香。
だが、エルフの耳は地獄耳だ。
「誤解しないでくれたまえ。余の言葉・行動は共に天より定められし宿命。それ故、余の正体がエルフであることは黙っていてくれたまえ」
「やっぱり本当にエルフなんですか? 可愛いですね」
「えっへん」
胸を張り、満面の笑みで返す神宮司。
近くに来てみると、背丈が120センチほどしかないことがわかった。
完全に中二病ショタだ。ついでにエルフ。
「あ、いけない。ふふん、余はこれから深層に潜る。貴君らはこの悪者を政府に預け、自分たちで倒したと報告したまえ」
「倒したのは神宮司さんでは?」
「余の力は膨大すぎる故、あまり目立ちすぎるわけにはいかないんだ。隠れ蓑を頼めるか?」
「あ、はい」
もうとっくに目立ちすぎてるけどな、とは言えなかった。
「ふむ、利口な者たちだ。気に入った。それでは、ダンジョンでまた会おう。グッドラック」
《九州での抗争編 予告》
夏休みは終わったが、ダンジョンで忙しくしていた黒瀬たちにも休暇がやってくる。
山口の実家がある九州に、キャンピングカーで向かうという休暇。
黒瀬、姉の天音、白桃、山口、そして……黒瀬姉弟のことが大好きなアイツもまた休暇を共にするメンバーである。
しかし、実力者2人の休暇に、ヴェルウェザーが目を付けて……。
※お気に入り登録、エール、よろしくお願いします。
どんどん物語のスケールが大きくなっていきます。
43
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スキル【キャンセル】で学園無双!~獲得したスキルがあまりにも万能すぎて学園生活も余裕だしランキング攻略も余裕なので【世界の覇王】になります~
椿紅颯
ファンタジー
その転生、キャンセルさせていただきます――!
一般人キャンセル業界の俺は異世界転生をキャンセルした結果、スキル【キャンセル】を貰い、逸般人の仲間入りを果たしてしまう。
高校1年生で一般人の翔渡(しょうと)は、入学して2週間しか経っていないのにもかからず人助けをして命を落としてしまう。
しかしそんな活躍を見ていた女神様により、異世界にて新しい人生を送る権利を授かることができた。
だが、あれやこれやと話を進めていくうちに流れでスキルが付与されてしまい、翔渡(しょうと)が出した要望が遅れてしまったがために剥奪はすることはできず。
しかし要望が優先されるため、女神は急遽、転生する先を異世界からスキルが存在する翔渡が元々住んでいた世界とほぼ全てが同じ世界へ変更することに。
願いが叶い、スキルという未知のものを獲得して嬉しいことばかりではなく、対価として血縁関係が誰一人おらず、世界に翔渡という存在の記憶がないと言われてしまう。
ただの一般人が、逸般人が通う学園島で生活することになり、孤独な学園生活が始まる――と思いきや、赤髪の美少女と出会ったり、黒髪の少女とぶつかったり!?
逸般的な学園生活を送りながら、年相応の悩みを抱えたり……? 意外なスキルの使い方であれやこれやしていく!
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました
グミ食べたい
ファンタジー
現実に疲れ果てた俺がたどり着いたのは、圧倒的な自由度を誇るVRMMORPG『アナザーワールド・オンライン』。
選んだ職業は、幼い頃から密かに憧れていた“料理人”。しかし戦闘とは無縁のその職業は、目立つこともなく、ゲーム内でも完全に負け組。素材を集めては料理を作るだけの、地味で退屈な日々が続いていた。
だが、ある日突然――運命は動き出す。
フレンドに誘われて参加したレベル上げの最中、突如として現れたネームドモンスター「猛き猪」。本来なら三パーティ十八人で挑むべき強敵に対し、俺たちはたった六人。しかも、頼みの綱であるアタッカーたちはログアウトし、残されたのは熊型獣人のタンク・クマサン、ヒーラーのミコトさん、そして非戦闘職の俺だけ。
「逃げろ」と言われても、仲間を見捨てるわけにはいかない。
死を覚悟し、包丁を構えたその瞬間――料理スキルがまさかの効果を発揮し、常識外のダメージがモンスターに突き刺さる。
この予想外の一撃が、俺の運命を一変させた。
孤独だった俺がギルドを立ち上げ、仲間と出会い、ひょんなことからクマサンの意外すぎる正体を知り、ついにはVチューバーとしての活動まで始めることに。
リアルでは無職、ゲームでは負け組職業。
そんな俺が、仲間と共にゲームと現実の垣根を越えて奇跡を起こしていく物語が、いま始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる