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第一章
喧嘩と再会(宇月琴音)
しおりを挟む次の日目が覚めると、課長のシャワーを浴びる音がした。
よく眠れなかったせいで、頭がぼーっとする。
リビングの机の上には、ビールの空き缶が3缶とウィスキーの空き瓶が置いてあった。
課長も同じように眠れなくてお酒を飲んでいたのだろう。
私たちは昨日、喧嘩をした。
というよりも私が一方的に怒りをぶちまけてしまった。
でも、少し前の私は祥に対してそんな風に本音や怒りをぶつけたことがなかったからもしかしたら成長したのかもしれないし、わがままになったのかもしれない。
朝食の準備に取り掛かると、課長がシャワーから出てきた。
「おはようございます。昨日はすみませんでした。」
私は課長に頭を下げた。
「ううん。俺もごめん・・・・」
パンツ一枚に濡れた髪をタオルで拭きながら、照れ臭そうにいう。
体についた雫と、整った体に抱きしめられたくなった。
私は、まだ濡れているのはお構いになしに課長の腕の中に入る。
課長もそれに答えて優しく抱きしめてくれた。その温もりが安心する。
すると、課長のスマホに着信がきた。見るつもりはなかったがディスプレイには「ミン」と表示されていた。
一度電話を無視したが、何度かかかってきたので私に断りを入れて電話に出た。
中国語の会話が終わると、課長は急いで服を着て
「ごめん・・・ちょっと出てくる。すぐ帰るからこの話は後でゆっくりしよう」と言って
ポケットに財布や鍵など必要なものだけを入れて身軽に外へ出て行った。
こんな時に、私が知らない言葉で話しをするなんて怪しい。
それに、私との関係は後回しにして呼ばれたらすぐいくのはどうしてなのだろうか。
それから、課長夕方頃に帰宅した。
私が夕飯の準備をしていると、少し疲れた顔でリビングのソファに腰掛けた。
「どうしたんですか?」
「ミンが具合悪かったみたいで病院連れて行ってた。日曜日だから緊急のとこしかやってなくてすごく待たされちゃってさ。」
(そこまでするんだ・・・)
と私は心の声を押し殺して「お疲れ様でした。」といった。
動き回ったから、シャワーを浴びたいと帰ってすぐに課長はシャワーを浴びた。
それから、私たちはなんでもない会話をして夕飯を食べた。
いつも通りだった。私がお風呂を出てベッドに行くと課長は疲れたのか、昨日の睡眠不足が影響しているのか先に眠っていた。
私は課長の横に寄り添うようにして眠りについた。
(今日もしないんだ・・・)
と心の中で思いながらも、朝を迎えた。
次の日出勤すると、PCには匿名で社内メールに写真が添付されていた。
匿名メールのファイルを開いてウイルスにでも感染したらと私の手は止まった。
しかし、慎也が私のPCを覗き込んだ。
「なんですか?このファイル・・・見てみましょうよ~~~」
と行って躊躇することなく慎也が添付ファイルを開くと、それはまるで週刊誌のカメラマンが撮影したかのような車の中での熱いキスの写真だった。
その車も、男女が誰であるかというのも私は見間違えるはずはない。
課長とリーさんだったのだ。
そして、もう一枚の写真は二人とも少し今よりも幼い。
課長も今はしっかりワックスで髪をセットしているが、この頃は少しだけ髪が短い。
リーさんも今は「大人の色気」があるのだが、まだ「若くて綺麗な人」というような印象が見受けられる。
それでも美男美女であることは数年前も変わらずおまけに頬をくっつけてラブラブなツーショット写真だった。
慎也は、とんでもないことをしてしまったと顔面蒼白になっていたが、私はなぜか冷静だった。
それに送り主はなんとなく察しがついているのだ。
だって先ほどから彼女の視線を強く感じている。私が峯岸雅の方を向くとうっすらと笑みを浮かべていた。
私が彼女に対して一体何をしたというのだ。
慎也は動揺しているが過去に慎也は私にキスをしている。なので課長とリーさんがキスをしたことで気持ち的にはキスに関してはノーカウントなのだ。
でも、私は2枚目の写真の方が心が痛かった。
体や行為だけで済むような関係ではなく、もっと強い絆で結ばれていてお互いに強く愛し合っていたことがこの一枚でわかってしまったのだ。
すぐにPCのファイルを閉じて呼吸を整えた。
リーさんは明日、帰国すると聞いている。
今日は昨日の体調不良の影響で出勤していなかった。
慎也は私に机に頭がくっつくほど頭を下げながら謝罪したが、「もういいの。なんとなくそんな気がしていたから。なんで私って浮気されやすいのかな?」と笑顔で呟いた。
「俺なら絶対にそんな思いさせないのに・・・・」
慎也がボソッと呟いた。
「ありがとう。でも、もう年下とは付き合わないって決めてるの。」
笑顔で返すと慎也はしゅんとした。
少し申し訳ない気持ちを持ちつつも、思わせぶりな態度をする方が失礼になると思ったのだ。
だって、どんなに浮気されようが、過去の女に未練があろうが課長を好きな気持ちは変わらない。
そんな二人の空気をかき消すように、
「おっはようございます~~~。」と甘い声を出しながら出勤してきたのは、後輩の松前梨々香だった。
黒髪ボブから一転、髪を規定以上の明るさに染め、スカートを短くして、胸元はいつも以上にボタンが空いている。ブランド物のバッグを持ち、化粧がいつもより濃い。
私は開いた口が塞がらないでいると、「何か?」というような顔で梨々香は私を見た。
「ちょっと、ちょっと。流石にやりすぎじゃない?どうしたの?」
「え?普段はこんな感じですよ。新人だったから真面目にしてただけで・・・もう一人立ちじゃないですか?結果出すんで。」
そのやりとりが目についたのか、課長が私たち二人の元へやってきた。
「松前、流石にそれは黙っては見逃せない。髪色は今度でいいとしてボタンは閉めろ。キャバクラじゃねーんだから」
「え~~~なら課長がこのボタン閉めてください。」
胸元を強調するように、上目遣いをして課長を見つめるが見向きもせずに、「自分でやれ」と冷たく返していた。
「は~~~い」と気の抜けた返事をしながら、ボタンを閉めた。
私は思わずため息が出てしまう。私も、「ゆとり世代」の一員だけれどここまでのツワモノと同じくくりにされたくない。一体彼女に何が起きたのだろうか。
ランチの時間になると、決まって琴音の横でコンビニ弁当やパンをを食べていた梨々香だったが、すぐにカバンを持ち雅の率いるキラキラ集団の元へと向かったのだ。
この休日の間にこの集団と何かしらの接点を持ったのだろう。
何か悪い影響を受けなければいいなと心の底から願った。
梨々香はおそらく根が真面目で、派手という印象は受けない。
自分と同じように大学入学と同時に東京へ来た田舎者。
都会の誘惑に今は揺らいでいるだけなのかもしれない。
新人二人は、今日から少しずつ一人で仕事を回ることになっている。
いつも通りの日常が戻りつつある琴音は、コンビニで買ったパンをかじりながら、資料の作成に追われていた。
今日のオフィスはお昼を返上してまで仕事をしているのは私しかいない。
でも、今日はゆっくり昼ごはんを食べている暇などない。
これを「充実」と呼ぶのかもしれないが結婚の可能性がなくなった今、この目まぐるしく続く毎日はいつまで続くのだろうか。
外回りから帰ると、松前梨々香が早速オフィスで賞賛されていた。
本日だけでも、2件OKをもらって来たらしい。入社してから1日に2件も契約を取ったことなど私にはなかった。
「よっ!期待の新人」と部長が梨々香を持て囃す。
私も、すぐに褒めに行くが「どうも」と無愛想に返されて流石にムッとした。
そして徐々に異変が起き始めて行く。
いつもの得意先へ向かった時だった。
「あれ?梨々香ちゃんじゃないの?なんだ~~」
営業先の社長が私に向かってそう言ったのだ。
「まあまあ、座りなよ。お宅も女の子の営業増やして正解だったと思うよ。」
そういうと、不自然に隣に座りスカートの中に手を入れる。
変に思いその手を剥がそうとすると、嫌そうに咳払いをした。
「社長?どうしたんですか?いつもこんなことしないのに・・・・・」
「これだから、美人の女はつまらないんだよな~~。お高く止まってるから。あ、もう君来なくていいから!次回からは必ず、梨々香ちゃんが来るようにして。」
そういって追い返されてしまったのだった。
もちろん、会社の方にご立腹の電話があった。
その度に、部長に呼び出されて説教をされる。こんなことが数件続いたのだった。
私の営業先はどんどんなくなり、獲得が落ちて梨々香の成績がどんどん上がって行く。
課長は、この前の「私の仕事に対してのやる気のない発言」を聞いてからか、会社でも家でも私に対して数字の話を一切しなくなったのだ。
そして、私の不安を煽るようにリーさんが中国へ帰る日は空港まで彼女を送って行った。
あの日以来、私たちはキスもしていない。
むしろ、あの写真を見てからというもの最低限の会話しかできない。
ベッドで眠る時も背中合わせの日が続いた。
恋もだめ、仕事もだめ。実家に帰って婚活して、嫁に行こう。この際、農家でもなんでもいい。
この状況から逃げられるなら・・・・
そう思っていた矢先のことだった。
「もしもし・・・ことねぇ?あのね・・・・ママが・・・・」
金曜日の夕方、もうすぐ就業時間になるという時に、我が妹の鈴音が動揺した声で電話をかけてきたのだ。
基本的に、メッセージでのやりとりが多いため、電話がくるというのは緊急性が高い。
私は、冷静になって鈴音から話を聞くと、どうやら転倒して怪我をしたらしい。
幸いにも、明日は休みで課長と顔をあわせるの気まずいので、課長に状況を説明し一度マンションへ戻り荷物をまとめて実家に向かうことにした。
新宿の人混みをかき分けて、地元の地名が書かれた駅のホームを目指す。
上京したての頃は、バイト代のほとんどが交通費でなくなってしまうくらい地元に帰っていたっけ・・・
今では、徐々に回数も減って正月やお盆ぐらいにしか帰省をしなくなっていたし、帰らない年もあった。
特急列車は、都心を駆け抜けて徐々に景色が山間に変わっていく、3時間半ほど揺られて地元の駅に到着した。
総合病院までは、歩いて10分ほどだが父が駅まで迎えにきてくれた。
病室に着くと、鈴音の電話でイメージがついていた母とは真逆で、ピンピンしていた。
「あら~~琴音、わざわざごめんね~~~。もう階段から落ちちゃって~~~」
母は、笑いながら骨折した腕に巻かれた包帯を私に見せた。
幸いにも怪我だけで済み、脳にも異常がなかったとのこと。
「鈴音があんな言い方するから、慌ててきたのに。」
私は、病室で母親のお見舞いで誰かが置いて行ったケーキを、キラキラのラインストーンで彩られたピンク色の派手で長い爪にも関わらず器用にフォークを使いながら呑気に頬張っていた。
妹の鈴音は、私との見た目が正反対でブリーチした金髪のロングヘアをコテで巻き、パンツが見えそうなぐらいのミニスカートに胸元を強調したニットを着て、15センチくらいのヒールを履いている。
「だって、びっくりしたんだも~~~ん。あ、てか仕事遅れちゃう。パパ店まで乗っけて~~~」
甘えた声で、実の父親をアッシーに使う彼女は、駅前でキャバ嬢をやっている。
私よりも、社交的で元気で本当は私よりも営業の仕事に向いていると思う。
鈴音が病室からいなくなると一気に静かになった。
「俺もそろそろ友達と飯行くから帰るわ。」
そう言ったのは、弟の淳(あつし)だった。現在は父親の仕事を手伝っておりゆくゆくは家業を継ぐ予定。
彼女はいない。
淳も病室から出ていくと、母と二人っきりになった。
「なんか、元気なさそうね。」
「うん。割と仕事でバタバタしちゃって・・・」
久しぶりにあった母との会話が続かない。
「せっかく帰ってきたのに家に誰もいなくてごめんね。」
「ううん。適当に過ごすから心配しないで。」
「パパが鈴音送って戻ってきたら、一緒に帰りな。まだ時間あるし出たところに自動販売機あるから飲み物買っておいで。私にもミルクティー買ってきて」と言って小銭をくれた。
小銭を握りしめて自動販売機へ向かうと、まるで子供に戻ったような気持ちなる。
自分たちが親子だなと思うのは、私がミルクティーを買うことをわかっていたことだった。
でも、久しぶりに帰ってきた私と二人きりになるのは少し照れくさいのだろう。
ミルクティーを二つ抱えて病室に戻ろうとした時、「琴音・・・?」と私の名前を呼ぶ男がいた。
身長が185㎝で、課長よりも少し高い。
鍛えられた肉体が着ていたジャージ越しにわかる。
髪の毛は、栗色でパーマをかけておりクリッとた目が私を見つめ、爽やかな笑顔がキラキラと眩しい。
「司先輩・・・?」
その瞬間に、高校生の頃の甘酸っぱい記憶がフラッシュバックする。
彼は、水泳部の2個上の先輩で部長だった「新谷司(しんたにつかさ)」で、私の初恋の相手だった。
私は、小学生の時から地元のスイミングスクールに通っており、そのスイミングスクールが司先輩の家で、司先輩のお父さんがコーチだった。
そのため、私がタイムに伸び悩んでいた時にアドバイスをくれたり、何かと気にかけてくれたりすることが多かった。
小学校・中学校と「兄」のような存在で特に意識をしたことがなかったが、高校生になり徐々に大人っぽくなっていく司先輩に恋をしていることに気がついたのだった。
でも、気がついた頃にはもう遅く先輩は卒業と同時に県外の大学へ行き別に連絡を取ることもなかった。
「おお、なんか綺麗になっててびっくりした。お前のかーさん入院してるんだよな?俺の親父もなんだよ。」
「え・・・コーチが?」
「うん・・・まあ本人は元気だけどね。だからもう代わりにコーチやったり色々やったりで超大変。」
「そうなんですね。大変ですね。今日はもう遅いので明日コーチのところお見舞いに言ってもいいですか?」
「うん。喜ぶと思う。また時間連絡してよ」
そういえば、祥が男の連絡先を全部消した時に先輩の連絡先も消されていたのだった。
「携帯壊れた時に、番号が消えちゃっててまた教えてもらってもいいですか?」
司先輩は、「はいよ」と言いながら私の番号に一度電話をかけるとディスプレイに司先輩の番号が表示された。
私の連絡先は残してくれてあったことに少し驚いた。
それと同時に、課長という存在がありながら私は平気で男の人と連絡先を交換していることにも驚く。
もう面会時間の終了時刻が近づいている。
私たちは明日の約束だけをして特に話をせずに、母の待つ病室へ向かった。
待ちくたびれた様子の母に、司先輩に会ったことを伝えると、母は司先輩をべた褒めしていた。
「いや~~~もうイケメンになったし、優しいし、お父さんの代わりにコーチやってるのよね。もう、司くんと結婚しちゃいなさいよ。」
「もう、何言ってんの。」
私と母が盛り上がっていると、父が病室に戻ってきた。
別に何かやましいことがあったわけではない。
課長のことを裏切ったわけでもない。
単に部活の先輩と会うだけで、子供の頃からお世話になっているコーチのお見舞いにいくだけ。
ただそれだけ。
でも、電話帳に刻まれた先輩の名前に胸を高鳴らせていることは事実だった。
父が運転する助手席に揺られながらそんなことを考えた。
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