Sync.〜会社の同期に愛されすぎています〜

桐嶋いろは

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Side 2ーaffairー

プロポーズ(今泉翠)

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恋がうまくいけば仕事が楽しい。
普段は、目くじらを立ててしまう若い子達の言動も一切気にならずなんならいいところ探しをして褒めているぐらいで、今の時代褒めて伸びるタイプの子が多いせいか、彼女たちも仕事を一生懸命するものだから全てにおいていい方向に回っていた。

あんな自分の恥ずかしい姿をさらけ出してしまってからと言うもののますます泰生とと職場で会うのは気まずいが、それ以上に嬉しさが優った。

1秒でも長く会いたいよ。
こんなに出勤するのが楽しみなのは入社してから初めてかもしれない。
家から、会社までたどり着くまでも音楽を聴きながら軽やかに踊り出したい気分だ。
見える世界が全部明るく見える。


「翠・・・後仕事どのくらいで終わる?」

「あと、これチェックしたら」

「わかった。じゃあ、もうちょっと仕事してる。一緒に帰ろう」
周りには聞こえない声でボソッと囁いた。その低くて優しい声にゾクゾクとしてしまう。

今までも、社内でよく話していた私たちは、少し会話が増えようが誰も怪しむことはなかった。
バレても構わないけれど、少し秘密にしているのは楽しい。
でも、最近は少しバレてほしいとも思う。


「瀬戸口さん、超カッコよくない?」
「やばいよね~オシャレだし」
「今まで知らなかったけど、サロモ(サロンモデル)とかやってたらしいよ。本当の姿隠したとか何その設定」

と噂をする若い女子たちに少しだけ焦りを感じてしまう。
でも、笑顔でいつも迎え入れてくれる彼だから安心してもいいかな。
自分が彼女だと胸を張っていてもいいかな?

どちらかの休日の前の日は、一緒に夕飯を食べて抱き合って泊まらずに自宅に帰った。
家に帰るのが面倒だし、離れるのが辛いから一緒に暮らせたらいのになんて思いながらも、まだ親には彼氏の家に泊まるとは言えないアラサーの私。
ギャルの私を否定した通り、クソが着くほど真面目な父は、過去に大学の友達が彼氏と同棲しているという話をしたら、「結婚する前の同棲は認めない」と怒りながら言っていたことを思い出す。
だからと言って、結婚を私から臭わせるのも違う気がする。



「翠・・・今度の休みに有給も使って温泉行こう。」
「流石に二人で同時に有給とったらバレない?」
「俺は、バレてもいいけど。」

(おう、そう来たか)

「お前、入社当時からだけど男に狙われてんだよ~~」
そういって私のほっぺを片手でムニムニとする。

「それは泰生もだからね。」

「うわ~~ヤキモチ妬いてくれるの~~可愛い~~~」
そのまま顎を抑えて、キスをする。

気がつけばこのキスが大好きで、抱きしめてくれるときの腕も、声も笑顔も愛しくてたまらない。



「翠・・・俺・・・翠とずっと一緒にいたい・・・この部屋で一緒に住もうよ。そうしたら毎日一緒に居られるじゃん。」

「・・・」

私は目を合わせずに回答に迷う。
喜んで返事をしておけば無難だ。仮に一緒に住むのが先になったとしても不自然ではない。
父に言われていることを言ったとしたならば、強引な逆プロポーズをしているみたいだ。それは避けて通りたい。


「ごめん・・・変なこと言って・・・忘れて」
泰生は、悲しそうな顔をした。


「違うの・・・」

「何が?・・・」

「その、嫌ってわけじゃなくて・・・今、実家だし家出たことないし、一人娘だし・・・」

泰生は、手で顔を覆い「そっか・・・そりゃそうだわ・・・・」と言いながら私を見つめた。


「翠、今度お父さんに挨拶に行きたい。結婚前提に付き合わせて下さいって・・・・」

泰生は、私の薬指に触れながら言った。その手が温かい。

「俺は本気だからね」

私をまっすぐに見つめて頬にキスをした。


「そうしたら、もう友達の家に泊まるなんて嘘つかなくていいしね。」
泰生はにっこりと笑った。



その日
家に帰宅すると杉原さんが家のリビングで父と晩酌をしていた。
その状況にどこからツッコミを入れればいいのかが分からない。


「翠・・・話がある・・・」と切り出し私を座らせた。


「杉原くんと結婚しなさい。」
唐突にいう父に思わず私は目を丸くする。

「どうせ彼氏も作らずに仕事ばっかりしてるんだろう?」

(もっと言い方があるでしょ・・・)

私は一呼吸置いて反論する。

「お父さんに言ってなかったけど彼氏いるから」

「どんなやつだ?言ってみろ・・・なんの仕事してるんだ?長男か?」

問い詰める父に私は黙り込む。

「翠ちゃん・・・あの同期の子でしょ?女の子と遊んでそうな感じの・・・」

(余計なことを・・・・)


「翠・・・聞いてないぞ。そんな奴とは別れろ」

「やだよ・・・お父さんは私にどうなって欲しいの?杉原さんは本当に素敵な人だよ・・・わかってる。
でも、私は今付き合ってる人と結婚したい。
好きな人と結婚して幸せになりたいの。これ以上お父さんがいうなら私のギャル時代のプリクラ杉原さんに見せるし杉原さんのお父さんとお母さんにも見せるからね!!!」

そういって私は家を飛び出した。

(・・・言えた・・・・自分の意見・・・なんか私めちゃめちゃ成長してる気がする・・・)

一目散に、泰生の元へ向かう。

早く会いたい・・・・


でも、お父さん・・・ごめんね・・・
ここまで愛情いっぱいに育ててくれたのに・・・
真面目すぎるところが大っ嫌いだったけれど・・・
あなたが父親ならば、私が大好きな泰生のことをお父さんもきっと好きになってくれるはずだから。


私が来ることを予想していなかった泰生は、とにかく驚いていた。
ここに来るまでの間、たくさんのことを考えた。

もしかしたら、このまま勘当されるかもしれない。
絶対にそんなことないってわかってるけど。

泰生と離れることだけが考えられなかった。


「泰生・・・私と結婚して・・・下さい。」

息を切らしながらいう私に、「はあ?」と連呼して顔を真っ赤にした。


「料理はこれから覚えるし、仕事はまだ続けるつもりだから家事全般もお任せすると思うけれど・・・」

「いや、そうじゃなくてなんで翠からいうの?」

「だって、私は杉原さんとじゃなくて泰生と結婚したい。」

私の口を手で覆った泰生は顔を赤くした。

「バカ・・・・だから、俺から言わせてって・・・」







数日後、泰生はスーツを着て髪をしっかりと爽やか系にセットして私の家の前に現れた。
普段はオフィスカジュアルで私服に近いため、ビジネススーツ姿はとても新鮮だった。
その日は、父は朝からそわそわしており、母はウキウキしながら料理を作っていた。

爽やかな笑みと、いつもの落ち着きのある話し方で母は終始ハイテンションで質問攻めをしているが、父は泰生と対面してから無表情。
杉原さんは一体どんなトークをしてあの父と打ち解けたのだろう。
この父と二人きりでゴルフに行けるぐらいなのだから、トーク力が素晴らしくさすがやり手営業マンだと感心してしまう。
一方、泰生も温かい空気感で話を続けるし、第一印象も過去の野暮ったい泰生とは違って爽やか好青年で文句のつけようもないのに。父は腕を組んで無言のままだった。
その父の顔色を伺っていると、泰生が語る私への片思いトークが一切入ってこない。


(この空気きまずすぎる・・・帰りたい・・・あ・・・ここ家か・・・)

私は俯き手をぎゅっと握っていると、父はメガネを外してハンカチを目に当てた。


「必ず幸せにします。翠さんを僕に下さい。」

その言葉とともに、父の涙腺が崩壊した。

母は、「あらあら」と言いながら父の背中をさすった。

「泰生くん・・・翠を頼んだよ」

二人は握手を交わした。
これから祝杯だと、スーパーまでお使いを頼まれた私たちはそっと手を握った。

「お父さん怒ってるかと思った。」

「俺も・・・でもよかった。」

「うん。」

「翠、ちょっといい?」

泰生は私の腕を掴んでバス停に向かった。15分刻みで出発する時刻表は高校生の頃と変わらない。
一本遅れると少し待たなければならないし、友達と待ち合わせているために遅れるわけには行かないため必ず早めにバス停につくようにしていたっけ。
しばらくすると到着したバスに泰生は乗り込んだ。


「え、スーパー歩いてすぐだよ」

「いいから」

一番後ろの席が空いているのを見つけると泰生は窓際の席に座り私を横に座るよう促した。

「この席からずっと、翠が乗ってくるの確認してた」

私は、泰生と同じ目線でバスの乗り口を見た。
バスは動き出し、嫌という程に見飽きた景色が流れていく。

「なんか、恥ずかしい」

「あの頃からずっと変わらず大好きだよ。」

私の左手を優しく掴んで、左手の薬指に指輪をはめた。
夕暮れに差し込む光でダイヤの輝きが一層強くなる。


「俺と、結婚して下さい。」

「はい」


車内は各々音楽を聴いたり、本を読んだりスマホゲームに夢中になっている。このありふれた日常の一コマで、密室の車内の一番後ろの席で密かにプロポーズが行われているなんて誰が想像するだろうか。
毎日のように通学で乗ったバスの中で、出会った彼と同じ職場で仕事をして、このバスでプロポーズをされるだなんてあの日の私は想像がつかなかった。

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