Sync.〜会社の同期に愛されすぎています〜

桐嶋いろは

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Side 2ーaffairー

離婚後(杉原颯太)

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例の彼と翠ちゃんが結婚をすることになったらしい。
多分、こんな俺よりも彼の方が幸せにできると思う。


「わがままな娘で本当にすまない」

「きっと、翠ちゃんが彼に恋してるから俺にとってより一層魅力的に思えたのかもしれませんね。」

お父さんは黙り込んだ。

「まあまあ・・・」
そこに翠ちゃんのお母さんが割り込む。

今泉家を後にした俺は、誰も「おかえり」を言ってくれないマンションへ向かう。
エレベーターに乗ろうとすると、涙ぐむ女がいた。
綺麗な黒髪で、翠ちゃんのように白い肌をしていて華奢だった。
翠ちゃんかと錯覚した俺は少し疲れているみたいだ。

今までの俺なら見て見ぬ振りをしていたと思う。
だけれど、その涙が俺の気持ちを代弁している気がしたのだ。
ポケットから出したハンカチを差し出すとその女は、「すみません」とか細い声で言った。


エレベーターに乗り込もうとした俺に「ここで住んでる人とさっき別れたんです。もうこのマンションへ来ることはないと思います。でも・・・ハンカチ・・・・」

彼との思い出が蘇るのか、涙が再びぽろんとこぼれ出す。

「返さなくていいよ・・・その代わり・・・俺もさっき失恋したんだ。君にちょっとだけ似てる子にね・・・」

その女は俺を睨みつける。

「それ、昔私を捨てた男にも言われました。とても迷惑してます。その子と会って文句言いたいです。」

あんなに泣いていたくせに気の強い女に思わず俺は驚いてしまう。
心春よりもわかりやすくて、翠ちゃんよりも気の強い女。
俺は思わず笑ってしまう。

「このあと一杯どう?失恋したもの同士・・・奢るよ・・・」

「そうやって失恋したところに漬け込む新手の詐欺?」

「そんなわけないじゃん。ちゃんと名刺渡すよ。」

名刺を渡すと、その女は表情を明るくした。

「喜んで」

分かりやすい女。
こいつ絶対俺が金持ってるってわかったんだろうな・・・
でも、きっと俺にはそのぐらい図々しくて分かりやすい女がいいのかもしれない。

そう思った。



数年後ーーーー



「さゆりさん。母乳足りてる?」

「お義母さん。それ一番腹たつ質問なんでやめてもらっていいですか?てゆーか、母乳だろうがミルクだろうが体重増えれば問題ないんで・・・母乳じゃなきゃ愛情が足りないとか何ですか?その考え方。てかこのやり取り一人目の時もしましたよね!そろそろ認知症のテストした方がいいんじゃないですか?この調子だと絶対前の奥さんにも言ってますよね・・・・うわ~~~ないわ~~。そういえば・・・またおもちゃと服買ったんですね。お下がりたくさんあっていらないからフリマサイトで売りますよ。」

「ちょっと、颯太・・・聞いた?」

「聞いた聞いた。さゆりのおっしゃる通り」
口喧嘩では誰にも叶わないさゆりは、俺を最近顎で使う用になった。もうオムツ交換は俺の仕事になっている。

「ねえ、ちゃんとお尻拭いてよ!!!」

「ごめん、ごめん」

あれから、さゆりと意気投合して気がつけば結婚した。
一緒に過ごせば過ごすほどにさゆりの図太さには驚かされる。
俺の両親との同居も大歓迎といったばかりに我が家に乗り込み。
しょっちゅう母と言い合いをしているが、孫並みにさゆりのことを可愛がっているのは確か。
まるで自分の娘のように。

俺は、さゆりの一人目の出産の際に会社を退職し、家族総出で子育てに取り組んだ。
仕事を辞め子育てだけになった期間、心春の孤独を少しだけ感じられた気がする。
不倫をされたことはもちろん許せないが、俺の方が確実に悪いことをしたのだと痛感する。
今は起業し、家で仕事をしながら現在4人目が誕生したところ。

兄夫婦も隣の土地に家を建てて、長年不妊治療で授かれなかったが待望の第一子が誕生した。
兄のお嫁さんの胸の内も全てさゆりが代弁し、母に伝えたおかげで二人の仲のわだかまりも解消されたのだ。

見えない大きな溝があった我が家もさゆりのおかげで本音を言い合うことができ、本当の家族になれた気がする。
俺は、こんな家族の形を思い描いていたのだと思う。
今がとても幸せだ。

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