Sync.〜会社の同期に愛されすぎています〜

桐嶋いろは

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Side 2ーaffairー

西木さゆり

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私は、子供の頃とにかく具合が悪かった。別に大きな病気があった訳ではないく、大人になったら健康体。
まるで子供の頃に一生分の病気をしたくらいに。
ことあるごとに熱を出して病院とベッドを往復していたのを今でもよく覚えている。
健康な妹は、私が苦しんでいる時にお父さんにどこかへ連れて行ってもらったり、こっそり何かを買ってもらったりしていた。

年を重ねるに連れ、体は強くなって行ったもののとことんなまでに甘え上手な妹が羨ましいと思っていた。
高校を卒業して、大学でできた同じ年の彼氏はバンドをやっていた。
そのサークルの練習について行った時に、瀬戸口さんがいた。
私の2個上の先輩で、彼氏は瀬戸口さんと親しげに話していたため私も時折、その話に混ぜてもらうようになった。

恋愛感情があったわけではない。

しかし、妹が大学の文化祭に遊びに来た日・・・瀬戸口さんの名前を出した。
身体中に虫酸が走った。
妹に取られるのだけは絶対に嫌。

それから彼氏のと関係は曖昧になり、瀬戸口さんに近づいた。

瀬戸口さんは、「俺のことを好きにならないことが大前提だから」という言葉だけを並べて拒否することもなくすんなりと私を受け入れた。
悲しいけれど私の目はみない、名前も呼ばない。それでもよかった。
そこで止めておけばよかった。
でも、止められなかった。どんどんどんどんのめり込んでいく。
私を愛そうとしない彼が私を愛してくれたら妹はどんな顔をするだろう。周りは私を羨むだろう。
そんな気持ちを心に秘めていることはできずにそれはいつしか言葉に変わった。

「好き・・・・」
その言葉で彼の表情は一気に冷たくなった。

「それを言わない約束でしょ。」

「でも、私は好きなの・・・・」

「俺がどうして抱いたと思う?・・・少しだけ似てると思ったから・・・俺の好きな人に・・・でもやっぱり全然違う。いつから俺の彼女になったわけ?」

「本当に最低だね」

「そうだよ。」
声を荒げることもなく、動揺するわけでもなく淡々と答える彼にぐうの音も出ない。
結局私は都合のいい女。

それから彼とは一切連絡を取らなかったが、意地汚い私はせめてもの復讐と彼の噂ばかりを流す。

「誰にも本気にならないエモーションレス(感情のない)な男。エモ口」と。




大学を出て、就職したが専らスペックの高い男との婚活に毎日を費やした。
仕事などせず専業主婦として優雅に暮らしたい。
そこで出会ったのが、逢坂蓮という男だった。元大企業で勤め現在は起業しその傍ら株で一儲けしていて、尚且つイケメン。グイグイと攻めた私はようやく彼女になれたと思っていたのに・・・


「別れてくれ・・・他に好きな人ができた。」
とあっさり振られてしまった。



泣きながら乗ったエレベーターを降りると、無言でハンカチを差し伸べた男は、高級ブランドのスーツに身をまとい整った目鼻立ちと高身長に思わず二度見してしまう。
ハンカチからは洗剤からはいい男の匂いがした。
もう、このマンションに来ることはできない。
セキュリティーも厳しいし、これからは入り口で止められてしまうかもしれない。
こんな高級なハンカチを渡されても、返せない。



「ここで住んでる人とさっき別れたんです。もうこのマンションへ来ることはないと思います。でも・・・ハンカチ・・・・」

(くそ、あの男・・・せっかく玉の輿だったのに。結婚目前だったのに・・・)

悔しさで涙が溢れる。


「返さなくていいよ・・・その代わり・・・俺もさっき失恋したんだ。君にちょっとだけ似てる子にね・・・」

一番思い出したくない話を思い出して、思わずその男を睨みつけてしまう。


「それ、昔私を捨てた男にも言われました。とても迷惑してます。その子と会って文句言いたいです。」

その私の返答にその男は笑った。

(ムカつく・・)

「このあと一杯どう?失恋したもの同士・・・奢るよ・・・」

「そうやって失恋したところに漬け込む新手の詐欺?」

こういうやけに笑顔や愛想を振りまく奴は信用できない。

「そんなわけないじゃん。ちゃんと名刺渡すよ。」

(証券会社!!!!大好き!!!!)

名刺を渡すと、その女は表情を明るくした。

「喜んで」


と私は笑顔で答えた。

ここから始まった運命にちょっとぐらいは感謝しようかな。

エモ口君・・・・
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