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Side 1ーOne way loveー
2(今泉翠)
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私はカメレオンだった。
小学生の時、一番親友だと思っていた子に突然無視された。
理由は、大人になってから知った。
その子が好きだった男の子が私を好きだったから。
別に私は好意なんてなくて、一緒になってその恋の行く末を楽しみにしていたのに残酷だった。
そしてそれを機に仲間はずれにされて、一人でいることが多かった。
このままではいけないと人に合わせるようになった中学は寂しくなかった。
休み時間にトイレに行くのも一人ではないし、移動教室も一人ではない。
でも、とてつもないぐらいに疲れた。
高校生の時は「ギャルになりきれていないギャル」だった。
いつも実年齢以上に年上に見えて、身長も165㎝と女子の中では大きめで、わりかしくっきりした目鼻立ちの私は化粧を少しするだけですぐに「ケバく」なれた。周りに合わせることには慣れっこで自分を偽ることも得意だった。
興味のないギャル雑誌をみてはメイクの研究やヘアアレンジをしてみたり、朝友達に会った時には必ずどこかを褒めてみたり、流行は常に敏感に、恋愛もしてるふり。
もし仮に私が恋をして、それが友達の好きな人だったとしたら今までの繕いが水の泡。
そして私のことを好きにさせても行けない。彼女たちが気にかける男子とは目を合わせないし必要最低限の会話もしなかった。
真面目を嫌う彼女たちを、真面目に生きてきた両親は毛嫌いした。
友達を失って一人になるのはもう嫌だからギャルでいることはやめなかった。
今思えばとても馬鹿らしいけれど。
派手な髪も化粧も辞めない私に両親が、親の指定する大学へ行けば何も言わないと言った。
もし合格できなければ、田舎のじいちゃんばあちゃんのところへ行き田んぼの手伝いをしろという半ば脅しの状態で真面目に受験勉強に取り組んだ。
当然、私の周りはバイトと遊びを繰り返しているような子達だから勉強とは無縁でいかに低い点数を出すかを競っていて、教室で勉強をしていたり本を読んでいる子をバカにしていた。
「勉強全然していない」という会話に合わせながらこっそり勉強をしていた。
勉強をしていたら、また仲間はずれにされてしまう。
合格を隠し続けたが、当時の教師が鼻高々に私が大学に合格したことを大きな声で言ったものだから、仲間内に広がってしまい「なんか裏切られた気分」だと私に言いそれから、メッセージのやり取りのグループから外され、卒業後から今に至るまで連絡を取ることも会うこともなかった。
大学では、ギャルをやめて一気に女子アナ風を目指してみると男にとても好評だった。言い寄ってくる人も多くこれが「モテ期」なのかと楽しんでいた。
そして、友達は自分から作ることをやめた。深く関わらないことにした。それでも一人になることはなかった。
同じ大学で、同じような目標を目指すもの同士。程よく話ができて気を使うことがなかった。
それに気がつくには少し遅かったのかもしれない。
はじめて付き合った彼氏と、キスの先に至った。
私に言い寄ってくる派手でチャラチャラした人ではなく、自分の父親のような真面目な人だった。
メガネをかけて髪の毛も染めたことがなくて、無難なファッションをしていた。
友達の期間が長かったせいもあるけれど、大学生なのにキスをするまでに1ヶ月もかかりその先に行くのに3ヶ月もかかった。結婚前提でないとそう行った行為はできないタイプでとても誠実だったのだと思う。
彼は星を見るのが好きで、初めて連れて行ってもらった真冬の山の中の丘で同じ毛布にくるまって凍えながら星を見た。
家に帰るために車に乗り込もうとした時に、いつもするような軽いキスではなくて初めて舌を絡めた長いキスをした。
車の暖房が温まるまで時間がかかるはずなのに、一瞬で車の窓ガラスが曇ったのを今でも覚えている。
私の体をぎこちなく触り、自分でも呼吸が乱れたのがわかった。
初めてのこの瞬間に私はひどく緊張していて、私彼の指が私の中に入ろうとした時に「痛い」と言ってしまった。
すぐに彼は我に帰り、「ごめん」と謝って、それから一言も話さずに家まで送り届けてくれた。
あのまま痛いと言わずに、我慢していたらその日の結末は変わっていたのかは分からない。
彼も初めてで女の体に触れたことなどなかったのだろう。
その日以来、なんとなく私たちは気まずくなって普通に話すこともできなくなり、専攻している授業も違うためほとんど会うこともなくなった。いわゆる自然消滅。
それからというものの付き合いキスまで行くもののその先が怖い。どうにかして切り抜け続けた結果「年上のスゴ腕の社会人の彼氏がいる」「婚約している」「年下・同じ年は相手にしない」「百戦錬磨」「男経験豊富」「今泉翠を抱いた男は伝説」と噂された。
高嶺の花のように扱われた私は、結局処女のまま今に至る。
それを知るものは誰もいない。
そう、瀬戸口も。
次の日、昨日の合コン話を楽しそうにする彼女たちに怒鳴り散らしたくなる。
あの二次対応がなければ私は、杉原さんとのデートというには恐れ多いけれど、お誘いに間に合ったかもしれないのに。
心の中で、舌打ちをしながら昨日関口に言われた言葉を思い出す。
ー最近、パソコン見てる時の今泉、超怖い顔してる。誰も寄せ付けないオーラ。なんか老けてきてるし。
私は、はっとして強引に口角をあげた。最近、作り笑顔しかしてないもんな。
【次はいつ会えますか?】
そう問いかけた杉浦さんのラインは昨日の夜送ったはずなのに、今頃になって返信があった。
【しばらく仕事で忙しいので また、こちらから連絡します。】
この業務的な敬語の返信はもう脈がないということだろうか、出会ってから数日くらいはもっと強引だった気がする。
杉原さんが自分に好意があるのだとわかるくらいに。こんなにも人は変わるものなのだろうか。
以前、二軒目を断ったからだろうか。
もう次に行こうと切り替えられるほど私は若くない。
小学生の時、一番親友だと思っていた子に突然無視された。
理由は、大人になってから知った。
その子が好きだった男の子が私を好きだったから。
別に私は好意なんてなくて、一緒になってその恋の行く末を楽しみにしていたのに残酷だった。
そしてそれを機に仲間はずれにされて、一人でいることが多かった。
このままではいけないと人に合わせるようになった中学は寂しくなかった。
休み時間にトイレに行くのも一人ではないし、移動教室も一人ではない。
でも、とてつもないぐらいに疲れた。
高校生の時は「ギャルになりきれていないギャル」だった。
いつも実年齢以上に年上に見えて、身長も165㎝と女子の中では大きめで、わりかしくっきりした目鼻立ちの私は化粧を少しするだけですぐに「ケバく」なれた。周りに合わせることには慣れっこで自分を偽ることも得意だった。
興味のないギャル雑誌をみてはメイクの研究やヘアアレンジをしてみたり、朝友達に会った時には必ずどこかを褒めてみたり、流行は常に敏感に、恋愛もしてるふり。
もし仮に私が恋をして、それが友達の好きな人だったとしたら今までの繕いが水の泡。
そして私のことを好きにさせても行けない。彼女たちが気にかける男子とは目を合わせないし必要最低限の会話もしなかった。
真面目を嫌う彼女たちを、真面目に生きてきた両親は毛嫌いした。
友達を失って一人になるのはもう嫌だからギャルでいることはやめなかった。
今思えばとても馬鹿らしいけれど。
派手な髪も化粧も辞めない私に両親が、親の指定する大学へ行けば何も言わないと言った。
もし合格できなければ、田舎のじいちゃんばあちゃんのところへ行き田んぼの手伝いをしろという半ば脅しの状態で真面目に受験勉強に取り組んだ。
当然、私の周りはバイトと遊びを繰り返しているような子達だから勉強とは無縁でいかに低い点数を出すかを競っていて、教室で勉強をしていたり本を読んでいる子をバカにしていた。
「勉強全然していない」という会話に合わせながらこっそり勉強をしていた。
勉強をしていたら、また仲間はずれにされてしまう。
合格を隠し続けたが、当時の教師が鼻高々に私が大学に合格したことを大きな声で言ったものだから、仲間内に広がってしまい「なんか裏切られた気分」だと私に言いそれから、メッセージのやり取りのグループから外され、卒業後から今に至るまで連絡を取ることも会うこともなかった。
大学では、ギャルをやめて一気に女子アナ風を目指してみると男にとても好評だった。言い寄ってくる人も多くこれが「モテ期」なのかと楽しんでいた。
そして、友達は自分から作ることをやめた。深く関わらないことにした。それでも一人になることはなかった。
同じ大学で、同じような目標を目指すもの同士。程よく話ができて気を使うことがなかった。
それに気がつくには少し遅かったのかもしれない。
はじめて付き合った彼氏と、キスの先に至った。
私に言い寄ってくる派手でチャラチャラした人ではなく、自分の父親のような真面目な人だった。
メガネをかけて髪の毛も染めたことがなくて、無難なファッションをしていた。
友達の期間が長かったせいもあるけれど、大学生なのにキスをするまでに1ヶ月もかかりその先に行くのに3ヶ月もかかった。結婚前提でないとそう行った行為はできないタイプでとても誠実だったのだと思う。
彼は星を見るのが好きで、初めて連れて行ってもらった真冬の山の中の丘で同じ毛布にくるまって凍えながら星を見た。
家に帰るために車に乗り込もうとした時に、いつもするような軽いキスではなくて初めて舌を絡めた長いキスをした。
車の暖房が温まるまで時間がかかるはずなのに、一瞬で車の窓ガラスが曇ったのを今でも覚えている。
私の体をぎこちなく触り、自分でも呼吸が乱れたのがわかった。
初めてのこの瞬間に私はひどく緊張していて、私彼の指が私の中に入ろうとした時に「痛い」と言ってしまった。
すぐに彼は我に帰り、「ごめん」と謝って、それから一言も話さずに家まで送り届けてくれた。
あのまま痛いと言わずに、我慢していたらその日の結末は変わっていたのかは分からない。
彼も初めてで女の体に触れたことなどなかったのだろう。
その日以来、なんとなく私たちは気まずくなって普通に話すこともできなくなり、専攻している授業も違うためほとんど会うこともなくなった。いわゆる自然消滅。
それからというものの付き合いキスまで行くもののその先が怖い。どうにかして切り抜け続けた結果「年上のスゴ腕の社会人の彼氏がいる」「婚約している」「年下・同じ年は相手にしない」「百戦錬磨」「男経験豊富」「今泉翠を抱いた男は伝説」と噂された。
高嶺の花のように扱われた私は、結局処女のまま今に至る。
それを知るものは誰もいない。
そう、瀬戸口も。
次の日、昨日の合コン話を楽しそうにする彼女たちに怒鳴り散らしたくなる。
あの二次対応がなければ私は、杉原さんとのデートというには恐れ多いけれど、お誘いに間に合ったかもしれないのに。
心の中で、舌打ちをしながら昨日関口に言われた言葉を思い出す。
ー最近、パソコン見てる時の今泉、超怖い顔してる。誰も寄せ付けないオーラ。なんか老けてきてるし。
私は、はっとして強引に口角をあげた。最近、作り笑顔しかしてないもんな。
【次はいつ会えますか?】
そう問いかけた杉浦さんのラインは昨日の夜送ったはずなのに、今頃になって返信があった。
【しばらく仕事で忙しいので また、こちらから連絡します。】
この業務的な敬語の返信はもう脈がないということだろうか、出会ってから数日くらいはもっと強引だった気がする。
杉原さんが自分に好意があるのだとわかるくらいに。こんなにも人は変わるものなのだろうか。
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もう次に行こうと切り替えられるほど私は若くない。
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