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1章
第2話 英雄たちの国
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アラタは、少女に導かれるまま重厚な神殿の中を歩いていた。
壁は滑らかに削られた灰色の石で造られており、その表面には古代文字のような模様が彫られている。
ところどころには蔦が伸び、自然の侵食を受けながらも、その荘厳な雰囲気を保っていた。
足元は厚く敷かれた石の床。歩くたび、裸足の足裏に冷たく硬い感触が伝わる。
廊下の左右には燭台が並び、オレンジ色の松明の灯りが、まるで心臓の鼓動のように静かに揺れていた。
目の前――遥か先には、昼光のような白い輝きが満ちている。外へと続く出口だ。
アラタは、少しだけ眉をひそめて呟く。
「しかし驚いたのう……まさか、織田信長がこの世界におるとはな。
しかも戦っている相手がアレクサンダー大王とは……」
その名を口にした瞬間、かつて教科書で学んだ歴史上の偉人たちの顔が頭に浮かぶ。
織田信長――天下布武を掲げ、戦国の乱世を駆け抜けた破壊と創造の王。
アレキサンダー大王――わずか数年で世界を掌握し、若くして去った希代の征服者。
“あの二人が、この異世界で再び相まみえている”
その事実だけで、この世界のスケールが計り知れないことをアラタは悟った。
少女は、神殿の静寂の中に、明るい声を響かせた。
「だいたいの日本人はびっくりするよね。私も最初は信じられなかったもん。
信長様が転生してきたときはね、元々この国をまとめてた“なんとかって元総理大臣”がトップだったんだけど……アレキサンダー軍が現れた途端、逃げちゃったの」
「ふむ……。わしが生きていた時代の日本も、情けない政治家が多かったからのう。
その中の誰かだったのかもしれん」
アラタの声には、苦笑が混じっていた。
長く異世界で政治を行ってきた自分だからこそ、日本の脆弱な国家運営の記憶がどこか他人事に思えてしまう。
少女は続ける。
「でも、信長様は違った。侵略されるのを見過ごせなかったんだよ。
逃げなかった人たちをまとめて、アレキサンダー軍に立ち向かったの。
火縄銃が、何千丁も空に浮かんで……一斉に放たれたらしいよ。
まるで天から鉄の雨が降るみたいだったって」
その情景を思い描き、アラタは瞼を細めた。
(――スキルか。なるほど、信長ほどの男なら、この世界で力を得ても不思議ではないのう)
先ほど確認した自分のステータスが、脳裏に浮かぶ。
小佐々 新 レベル:999
HP:536500 / 956500
MP:936500 / 1553000
スキル:救世帝の覇気/魔力解放/剣聖/異界召喚……
新たに加わったスキル【異界召喚】――その正体は、まだ不明だ。
だが、明らかにこれまでの自分とは違う何かが生まれている。
(ふむ……この世界に来たことで、わしの魂にも変化が起きたのかもしれん。
だが――今は人前でステータスを確認するのはやめておこう)
神殿の廊下はやがて終わりを告げ、石造りの重厚な扉が目の前に現れる。
その隙間から差し込む光が、アラタの足元を照らしていた。
少女は軽やかに扉の一部を押し開け、振り返る。
「この外に出たら、すぐ街が広がってるよ。
『英雄の間』って呼ばれてるこの神殿は、特別な場所だから、街の中央に建ってるの。
まずは“人別帳”への登録が必要。戸籍がないと、うっかり捕まっちゃうからね!」
「人別帳か……なかなか秩序が整っておるのう。電子機器が使えんのは残念じゃが……」
アラタは肩を落とすように嘆いた。
「やっと、積みゲー消化できると思ったのに……」
少女は吹き出した。
「アハハ、みんな言うよそれ。スマホ動かない、ゲームできない、ネットも無し! ってね。
役所の人たちも紙とペンで苦労してるんだから」
「まぁ、それもまた一興じゃな」
アラタは軽く頷き、最後の一歩を踏み出す。
扉の向こうには、まばゆい光とともに、新たな世界が広がっていた。
石造りの門の先には、石畳の道が続き、木造の民家や露店が立ち並んでいた。屋根には茅や瓦が使われており、どこか懐かしい中世日本の城下町を思わせる風情がある。町人たちの顔つきも、服装も、確かにすべて日本人。だが、彼らは時代や文化が混在しているようで、和装の隣を近代風の制服姿の者が歩いていたりと、不思議な光景が広がっていた。
壮大な風景に、アラタは思わず息をのんだ。
(……ここが、わしの新たな世界か)
その胸中には、少しの不安、だが確かな期待と希望があった。
かつて彼は異世界で勇者となり、王となり、そして帝王として民を導いた。
だが――この世界では、まだ何者でもない。
(よかろう……ならば、この世界でもう一度、始めてみようかのう)
陽光の中、アラタの目が静かに輝きを増していく。
彼の“第三の人生”が、静かに――だが確かに動き出した。
壁は滑らかに削られた灰色の石で造られており、その表面には古代文字のような模様が彫られている。
ところどころには蔦が伸び、自然の侵食を受けながらも、その荘厳な雰囲気を保っていた。
足元は厚く敷かれた石の床。歩くたび、裸足の足裏に冷たく硬い感触が伝わる。
廊下の左右には燭台が並び、オレンジ色の松明の灯りが、まるで心臓の鼓動のように静かに揺れていた。
目の前――遥か先には、昼光のような白い輝きが満ちている。外へと続く出口だ。
アラタは、少しだけ眉をひそめて呟く。
「しかし驚いたのう……まさか、織田信長がこの世界におるとはな。
しかも戦っている相手がアレクサンダー大王とは……」
その名を口にした瞬間、かつて教科書で学んだ歴史上の偉人たちの顔が頭に浮かぶ。
織田信長――天下布武を掲げ、戦国の乱世を駆け抜けた破壊と創造の王。
アレキサンダー大王――わずか数年で世界を掌握し、若くして去った希代の征服者。
“あの二人が、この異世界で再び相まみえている”
その事実だけで、この世界のスケールが計り知れないことをアラタは悟った。
少女は、神殿の静寂の中に、明るい声を響かせた。
「だいたいの日本人はびっくりするよね。私も最初は信じられなかったもん。
信長様が転生してきたときはね、元々この国をまとめてた“なんとかって元総理大臣”がトップだったんだけど……アレキサンダー軍が現れた途端、逃げちゃったの」
「ふむ……。わしが生きていた時代の日本も、情けない政治家が多かったからのう。
その中の誰かだったのかもしれん」
アラタの声には、苦笑が混じっていた。
長く異世界で政治を行ってきた自分だからこそ、日本の脆弱な国家運営の記憶がどこか他人事に思えてしまう。
少女は続ける。
「でも、信長様は違った。侵略されるのを見過ごせなかったんだよ。
逃げなかった人たちをまとめて、アレキサンダー軍に立ち向かったの。
火縄銃が、何千丁も空に浮かんで……一斉に放たれたらしいよ。
まるで天から鉄の雨が降るみたいだったって」
その情景を思い描き、アラタは瞼を細めた。
(――スキルか。なるほど、信長ほどの男なら、この世界で力を得ても不思議ではないのう)
先ほど確認した自分のステータスが、脳裏に浮かぶ。
小佐々 新 レベル:999
HP:536500 / 956500
MP:936500 / 1553000
スキル:救世帝の覇気/魔力解放/剣聖/異界召喚……
新たに加わったスキル【異界召喚】――その正体は、まだ不明だ。
だが、明らかにこれまでの自分とは違う何かが生まれている。
(ふむ……この世界に来たことで、わしの魂にも変化が起きたのかもしれん。
だが――今は人前でステータスを確認するのはやめておこう)
神殿の廊下はやがて終わりを告げ、石造りの重厚な扉が目の前に現れる。
その隙間から差し込む光が、アラタの足元を照らしていた。
少女は軽やかに扉の一部を押し開け、振り返る。
「この外に出たら、すぐ街が広がってるよ。
『英雄の間』って呼ばれてるこの神殿は、特別な場所だから、街の中央に建ってるの。
まずは“人別帳”への登録が必要。戸籍がないと、うっかり捕まっちゃうからね!」
「人別帳か……なかなか秩序が整っておるのう。電子機器が使えんのは残念じゃが……」
アラタは肩を落とすように嘆いた。
「やっと、積みゲー消化できると思ったのに……」
少女は吹き出した。
「アハハ、みんな言うよそれ。スマホ動かない、ゲームできない、ネットも無し! ってね。
役所の人たちも紙とペンで苦労してるんだから」
「まぁ、それもまた一興じゃな」
アラタは軽く頷き、最後の一歩を踏み出す。
扉の向こうには、まばゆい光とともに、新たな世界が広がっていた。
石造りの門の先には、石畳の道が続き、木造の民家や露店が立ち並んでいた。屋根には茅や瓦が使われており、どこか懐かしい中世日本の城下町を思わせる風情がある。町人たちの顔つきも、服装も、確かにすべて日本人。だが、彼らは時代や文化が混在しているようで、和装の隣を近代風の制服姿の者が歩いていたりと、不思議な光景が広がっていた。
壮大な風景に、アラタは思わず息をのんだ。
(……ここが、わしの新たな世界か)
その胸中には、少しの不安、だが確かな期待と希望があった。
かつて彼は異世界で勇者となり、王となり、そして帝王として民を導いた。
だが――この世界では、まだ何者でもない。
(よかろう……ならば、この世界でもう一度、始めてみようかのう)
陽光の中、アラタの目が静かに輝きを増していく。
彼の“第三の人生”が、静かに――だが確かに動き出した。
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