帝王アラタの再転生

たまゆき

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1章

第4話 「討伐者登録と蠢く戦火」

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「董卓《とうたく》…じゃと…?」

その名を聞いた瞬間、アラタの脳裏に、学生時代に読んだ『三国志』の情景が蘇る。傍若無人、豪奢を極めた悪政の象徴。だがそれは物語の中の話――本当に、この世界にはあの董卓が現れたというのか?

「やれやれ、織田信長にアレキサンダー、今度は董卓か…。どれも歴史に名を刻んだ英雄(あるいは悪名)ばかりじゃ。まるで歴史の見本市のような世界じゃのう…」

アラタは深くため息をついたが、その目にはわずかな緊張と興奮が混じっていた。

「巴、わしは討伐者とやらになってみるかのう。何をするにもまずは食い扶持じゃ」

「うん、アラタみたいな人ならきっと登録通ると思うよ。受付行こう!」

彼女に導かれ、アラタは役所の奥、討伐者登録専用のカウンターへと足を運ぶ。白木のカウンターの向こうには、ややくたびれた雰囲気の中年職員が座っていた。年季の入った帳面と羽ペンを手に、顔を上げる。

「新規登録か? 名前と年齢、それと前世の出身地を頼む」

「小佐々新《こざさあらた》、年齢は――ええと、今の姿での年齢でよいのか?」

「うん、見た目年齢でいいよ。戸籍にはそのまま記載されるから」

「ならば十七、とでもしておこうかのう。出身は日本じゃ」

職員はペンを走らせると、少しだけ驚いたように目を細めた。

「ふむ、日本出身の者はまたひとり……君も“英雄反応者”か?」

「なんじゃそれは?」

巴がすかさず補足する。

「“英雄反応者”っていうのは、転生してきた人の中でも特に、強力なスキルや戦闘能力、あるいは歴史的な役割を果たす可能性がある人のことなんだって。神殿で出現した場所とか、反応の強さで判別されるらしいよ」

「ほう……わしはただの一般人のつもりじゃったがのう」

それでも心の中で引っかかっていたスキルのことが思い出される。

――【異界召喚《いかいしょうかん》】。

いまだ効果も用途も分からぬが、この世界に来てから発現した不思議な力。それが“英雄反応”とやらに関係しているのかも知れぬ。

「ではこれにサインを」

職員が差し出した登録証にアラタは署名し、小さな魔石のようなものに手をかざすと、淡く光が広がった。

「はい、登録完了。これで討伐依頼の受領や素材の売却ができるようになるよ」

「おお、思ったより簡単じゃのう」

その時、建物全体がざわつきはじめた。奥から走ってきた別の職員が、巴に耳打ちする。

「前線偵察隊から新たな報告です。新狼帝国軍、すでに南関所前の防衛線を突破し布陣したとの事。予想より早い進軍速度です」

「えっ!? もう!? そんな……信長様に連絡は?」

「すでに伝令を出しておりますが、北と南の距離を考えると、すぐには戻れません」

巴は歯を食いしばる。

「こんなタイミングで……」

アラタはその会話を聞きながら、ある決意を胸にした。

「のう巴。この“討伐者”は、軍に所属せずとも戦に参加できるのか?」

「もちろん。討伐者は基本的に中立だけど、有事には義勇兵として動く人も多いよ。討伐依頼とは別に、戦時徴集に近い形で報奨金が出ることもあるし」

「そうか……」

アラタは懐に登録証をしまいながら、小さく呟いた。

「じゃが、転生する前ならいざ知らず今のわしが役に立てるかは未知数じゃな。相対する敵に通用するのかしないのかすらわからん。せめて……このスキルの使い道さえ分かれば」

【異界召喚《いかいしょうかん》】――未知なるスキル。

「もしかすると、それはこの世界に現れた理由そのものかもしれんのう…」

胸に渦巻く疑念と予感を抱えながら、アラタは新たな一歩を踏み出す。

この世界で再び歴史が動こうとしていた。
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