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1章
第5話 董卓と狼の王
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ジパングへと続く一本道。夕陽が赤く地平線を染める中、砂ぼこりが乾いた風に舞っていた。その道を、醜く膨れ上がった巨体が、まるで荒ぶる獣のように揺れ動く。
「何故だ……!何故、こうも惨めな結果になった!!」
巨体の男は大きく胸を叩き、拳を握り締める。彼の目は燃えるような憤怒でぎらついていた。
「何だあの小男は……!あの小僧めが!この董卓の完璧な栄華を――!」
かつて天下を揺るがした大将軍。たかが一人の女の裏切りで、憎むべき養子にも見放され、栄光の頂は音を立てて崩れ去った。
「我が人生はここで終わりか……」
しかし、運命はまだ彼を見放さなかった。次に目を覚ましたのは、全く見知らぬ土地の冷たい床の上だった。
男はゆっくりと立ち上がり、周囲を見渡した。背筋を伸ばし、無意識のうちに剣の柄を握り直す。
建物を出ると、風が熱い砂埃を巻き上げながら吹き抜けていく。案内されるままに街へ向かうと、そこで男はこの地の事情を耳にした。
「ここは『華国』……小国ジパングと同盟を結び、物の怪の脅威に怯える民が暮らしている……か。」
聞こえてくる言葉はどれも弱々しく、国の支配者は政治家然とした宦官のような存在。軍隊さえ揃えば、今の支配層は一瞬で滅びるだろうという。
董卓の目に、かつての覇者としての冷徹な計算が浮かぶ。
「兵を得ねば……この地で再び、栄華を取り戻すには」
彼は考え抜き、街の中心の広場へと歩を進めた。そこで群衆を前に演説を始める。
「我が名は董卓!この地の英雄たる者よ、耳を貸せ!」
演説は巧みな言葉で群衆の心を掴んだ。物の怪に怯える日々に希望を見出し、董卓の語る未来に熱狂する若者たちが集まった。
「我らは物の怪を討ち、失われた栄光を取り戻す!共に立ち上がれ!」
数百の若者たちが彼の前にひざまずき、声を合わせて答えた。
「はい!董卓様!」
「まずは、お前たちを鍛え上げ練兵する!」
下卑た笑いを浮かべ董卓は宣言した。
軍馬に跨り、董卓は街を離れた。向かうは辺境の小さな村。風が頬を打ち、砂粒が目に染みる。
「お前たちは選ばれし者だ!かつて誇り高き大国の子らよ、今や物の怪に怯え、貧しき生活を送るのか?違うはずだ!」
その声は砂塵に乗って村中に響き渡る。
「奪い、犯し、殺せ!!」
叫び声と共に兵士たちは凶暴な牙を剥いた。董卓のスキル【悪徳賛歌】の力が、罪の意識を消し去り、欲望を増大させていたのだ。
村人が悲鳴を上げる中、董卓は冷静にその様子を観察する。
「この国の民は尽きることはない。繰り返せば兵は無限に集まるだろう」
血の匂いと絶望が漂う中、兵士たちの数は三万へと膨れ上がった。董卓は満足げに薄ら笑いを浮かべる。
「昔の栄光を取り戻す日は近いな」
軍勢を率いて再び街へ戻ると、董卓は兵士たちに気迫を込めて叫ぶ。
「お前たちは董卓に選ばれし精鋭だ!小国に成り下がった華国の地を奪い、我を帝王とせよ!!」
兵士たちは狂気じみた雄叫びを上げ、一斉に突撃を開始した。
しかし、その途端――先頭を走る一団が忽然と消失した。二百三百の兵が、まるで地面に飲み込まれたかのように跡形もなく消えたのだ。
「何事だ!!」
兵士たちが動揺する中、不快な咀嚼音が辺りに響く。
「見ろ!上だ!!」
兵が叫ぶ
見上げれば、巨大な蒼い狼の顔が空中に浮かんでいた。その口は兵士たちを咀嚼し、無慈悲に飲み込んでいる。
「化け物……!」
その時、馬に乗った少年のような男が疾走してきた。彼の周囲には小型の蒼い狼たちが飛び交い、彼を守るかのように宙を舞っている。
男はえぐれた地面を飛び越え、董卓の前に静かに立ち止まった。
「儂に伝令もなく、儂の領域に軍を進めるとは愚か者め。率いる者、前へ出よ。」
董卓は汗が噴き出し、脈打つ鼓動を抑えきれずにいる。あの化け物が現実に存在するなど思いもよらなかった。
少年は言葉を続ける。
「もう一度だけ言う。下馬し、平伏せよ。さもなければ、全てこの狼の餌となる。」
董卓は必死に馬を降り、震える足で前へ歩み出る。全身が呼吸しているかのように揺れ、地面に倒れ込むようにひれ伏した。
「お前が将か。よかろう。儂は今、機嫌が良い。再び若き体で生を受け、さらなる征服の夢を見られるとは。これは神の贈り物だ」
男はゆっくりと笑みを浮かべた。
「この兵は儂に献上せよ。これより我らは『新狼帝国』を名乗り、ジパングとやらを侵略する。奪い、奴隷と財宝を持ち帰れ。」
男は右手を掲げると、地面から蒼い狼や獣人型の狼たちが次々と湧き出て、兵士たちの横に並んだ。
「結果を出せば取り立てよう。お前も我が一族に迎え入れる。さあ、顔を上げ、儂の顔を心に刻め。儂は大ハーン、チンギスだ。」
董卓は震える手で顔を上げ、恐る恐る声がする方に目をやる。董卓の瞳に映ったのは、濡れたような長い黒髪、切れ長の冷たい黒い瞳。端正な顔だが妖しい狼の笑みを浮かべた少年の姿をした何かだった
「何故だ……!何故、こうも惨めな結果になった!!」
巨体の男は大きく胸を叩き、拳を握り締める。彼の目は燃えるような憤怒でぎらついていた。
「何だあの小男は……!あの小僧めが!この董卓の完璧な栄華を――!」
かつて天下を揺るがした大将軍。たかが一人の女の裏切りで、憎むべき養子にも見放され、栄光の頂は音を立てて崩れ去った。
「我が人生はここで終わりか……」
しかし、運命はまだ彼を見放さなかった。次に目を覚ましたのは、全く見知らぬ土地の冷たい床の上だった。
男はゆっくりと立ち上がり、周囲を見渡した。背筋を伸ばし、無意識のうちに剣の柄を握り直す。
建物を出ると、風が熱い砂埃を巻き上げながら吹き抜けていく。案内されるままに街へ向かうと、そこで男はこの地の事情を耳にした。
「ここは『華国』……小国ジパングと同盟を結び、物の怪の脅威に怯える民が暮らしている……か。」
聞こえてくる言葉はどれも弱々しく、国の支配者は政治家然とした宦官のような存在。軍隊さえ揃えば、今の支配層は一瞬で滅びるだろうという。
董卓の目に、かつての覇者としての冷徹な計算が浮かぶ。
「兵を得ねば……この地で再び、栄華を取り戻すには」
彼は考え抜き、街の中心の広場へと歩を進めた。そこで群衆を前に演説を始める。
「我が名は董卓!この地の英雄たる者よ、耳を貸せ!」
演説は巧みな言葉で群衆の心を掴んだ。物の怪に怯える日々に希望を見出し、董卓の語る未来に熱狂する若者たちが集まった。
「我らは物の怪を討ち、失われた栄光を取り戻す!共に立ち上がれ!」
数百の若者たちが彼の前にひざまずき、声を合わせて答えた。
「はい!董卓様!」
「まずは、お前たちを鍛え上げ練兵する!」
下卑た笑いを浮かべ董卓は宣言した。
軍馬に跨り、董卓は街を離れた。向かうは辺境の小さな村。風が頬を打ち、砂粒が目に染みる。
「お前たちは選ばれし者だ!かつて誇り高き大国の子らよ、今や物の怪に怯え、貧しき生活を送るのか?違うはずだ!」
その声は砂塵に乗って村中に響き渡る。
「奪い、犯し、殺せ!!」
叫び声と共に兵士たちは凶暴な牙を剥いた。董卓のスキル【悪徳賛歌】の力が、罪の意識を消し去り、欲望を増大させていたのだ。
村人が悲鳴を上げる中、董卓は冷静にその様子を観察する。
「この国の民は尽きることはない。繰り返せば兵は無限に集まるだろう」
血の匂いと絶望が漂う中、兵士たちの数は三万へと膨れ上がった。董卓は満足げに薄ら笑いを浮かべる。
「昔の栄光を取り戻す日は近いな」
軍勢を率いて再び街へ戻ると、董卓は兵士たちに気迫を込めて叫ぶ。
「お前たちは董卓に選ばれし精鋭だ!小国に成り下がった華国の地を奪い、我を帝王とせよ!!」
兵士たちは狂気じみた雄叫びを上げ、一斉に突撃を開始した。
しかし、その途端――先頭を走る一団が忽然と消失した。二百三百の兵が、まるで地面に飲み込まれたかのように跡形もなく消えたのだ。
「何事だ!!」
兵士たちが動揺する中、不快な咀嚼音が辺りに響く。
「見ろ!上だ!!」
兵が叫ぶ
見上げれば、巨大な蒼い狼の顔が空中に浮かんでいた。その口は兵士たちを咀嚼し、無慈悲に飲み込んでいる。
「化け物……!」
その時、馬に乗った少年のような男が疾走してきた。彼の周囲には小型の蒼い狼たちが飛び交い、彼を守るかのように宙を舞っている。
男はえぐれた地面を飛び越え、董卓の前に静かに立ち止まった。
「儂に伝令もなく、儂の領域に軍を進めるとは愚か者め。率いる者、前へ出よ。」
董卓は汗が噴き出し、脈打つ鼓動を抑えきれずにいる。あの化け物が現実に存在するなど思いもよらなかった。
少年は言葉を続ける。
「もう一度だけ言う。下馬し、平伏せよ。さもなければ、全てこの狼の餌となる。」
董卓は必死に馬を降り、震える足で前へ歩み出る。全身が呼吸しているかのように揺れ、地面に倒れ込むようにひれ伏した。
「お前が将か。よかろう。儂は今、機嫌が良い。再び若き体で生を受け、さらなる征服の夢を見られるとは。これは神の贈り物だ」
男はゆっくりと笑みを浮かべた。
「この兵は儂に献上せよ。これより我らは『新狼帝国』を名乗り、ジパングとやらを侵略する。奪い、奴隷と財宝を持ち帰れ。」
男は右手を掲げると、地面から蒼い狼や獣人型の狼たちが次々と湧き出て、兵士たちの横に並んだ。
「結果を出せば取り立てよう。お前も我が一族に迎え入れる。さあ、顔を上げ、儂の顔を心に刻め。儂は大ハーン、チンギスだ。」
董卓は震える手で顔を上げ、恐る恐る声がする方に目をやる。董卓の瞳に映ったのは、濡れたような長い黒髪、切れ長の冷たい黒い瞳。端正な顔だが妖しい狼の笑みを浮かべた少年の姿をした何かだった
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