負けヒロインがダンジョンに落ちてたので連れ帰ってみることにした

睡眠が足りない人

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逃亡姫は負けヒロイン

五話

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 「あー、クソ頭痛ぇ」

 庭で汚れた布団のシーツを水の入った桶で洗いながら、先程からずっとしている痛みに顔を顰める。
 害という曖昧な言葉にしたせいで、無理矢理立たせただけで契約魔法が発動してしまった。
 もう少し緩い契約にするべきだったか?
 だが、賢者のロリっ子に教えられた余計な知識のせいで、あの時は完全に信用されてなかったしあれくらいしないとダメか。
 はぁ、俺は単に自分の布団が血生臭くないのが嫌で早く洗いたかっただけなのに。あー漂白剤なんてこの世界にないから、シーツについた血取れねえじゃん。
 何で、あのロリ賢者は漂白剤とかの作り方広めなかったんだよ?元の世界でも天才だったんだから、それくらい知ってるだろうに。
 はぁ、味噌もマヨネーズも作らない異世界転移者、転生者とか何の価値もないわ。
 あっ、それじゃあ俺も同じじゃん。人のこと言えねえや。テヘペロ。……きもっ。二度としねぇわ。吐き気がした。
 さて、この汚れたシーツはとりあえず買い換えるとして、直近の問題は飯だ。
 一人暮らしをしている俺だが料理スキルは持ち合わせていない。
 ソロで冒険者をしているなら、野営することもあるし、料理できないとヤバくね?と皆さん思ったでしょう。
 そういう時は、支援者《サポーター》をクエストで募集して料理や荷物を持ってもらっていたのだ。
 だから、料理の経験はほぼない。強いて言うなら肉を焼くのが出来る程度である。
 まぁ、これだけなら飲食店に連れて行くか露店で何か買ってくれば良くね?と思われるだろうが、そうは問屋が卸さない。
 姫様を家で寝かしている間に、軽く姫様についての情報を集めてみると予想通り朝に無断で城を飛び出しているようだ。
 何故、飛び出したかは様々な憶測が飛び交っていたので真偽は分からないので、後で本人に聞くとして、取り敢えず今現在この王都で姫様を兵士が探し回っている。
 そんな状況で、飲食店になんて行けるはずもない。
 さらに、露店もこの時間は閉まっているので買いに行くことも出来ない。
 どないしよ?

 「あ~~~困った」
 
「何を困っているんですか?ルヴァンさん」

赤白縞模様のように染まったシーツを眺めながら、そう呟くと頭上から声を掛けられた。
 一体誰だと思い、視線を上げるとそこには仕事帰りなのか制服姿ではなく、森ガールのようなふんわりとした私服に身を包んだユナさんが首を傾げている。

「もしかして、そのシーツの血が取れないことに困ってますか?流石に、それはもうどうしようもないと思うので買い換えるしかないと思いますよ」

 お気の毒ですがと、俺が持っているシーツを見ながらユナさんが言う。

「流石にそれくらいは分かっている。困ってるのは別のことなんだ。あーなんて言ったら良いかな?」

 俺は苦笑いを浮かべ、どう上手く誤魔化して伝えようかとガシガシ頭を片手で掻きながら考える。

 「…ちょっと面倒事を抱えちゃってさ。その暫くお店でご飯を食いに行けないんだ。露店なら良いんだけどそれも閉まってるし、自炊はユナさんも知ってると思うけど俺出来ないから、どうしようかなって困ってたんだ」

「そうなんですか。確かにそれは困りましたね~」

 ユナさんはそう相槌を打つと、有難いことに「うーん」と何か良い案がないかと考え始めてくれた。
 我ながら面倒な質問をしているのは分かっている。
 どうせ何も出ないだろうと思って暫く眺めていると突然ユナさんは「あっ!」と何か閃いたようで声を上げた。

「何か思いついたの?」

「はい。私が作ったお料理をルヴァンさんにお裾分けするのはどうでしょう?そうすれば、外に出ずに食事が出来ます」

「確かに、それ良い案だけどユナさんに迷惑が掛かかるから申し訳ない。言ってなかったけど俺一人分じゃなくてもう一人分いるから、作るの大変でしょ?」

「別に、迷惑だなんて思ってないので大丈夫ですよ。一人も二人も労力は変わらないので問題なしです!」

「いや、でも─「大丈夫ですから」あっはい」

 俺は申し訳なさから何とか断ろうとしたが、ユナさんの勢いに押されて頷くしかなかった。

「純粋な善意から言ってるんじゃなんですよ?私はルヴァンさんの専属受付嬢です。ここで、ご飯をお裾分けしなかったせいで、ルヴァンさんが空腹で依頼を失敗してしまったら私とっても困っちゃいます。……だから、貰ってください」

  俺が未だにすまなそうにしているのを見て、ユナさんはあくまでも自分のためだからと言って微笑んだ。

 「…じゃあ、有り難く貰おうかな。でも、材料費はきちんと払うから」

「私も食べるので折半で良いですよ」

「手間賃も含まれてるからその案は却下で」

  流石にその案は受け入れないのでにべもなく却下。
 ユナさんは苦笑いを浮かべ「そうですか」と素直に引き下がった。

 「そうと決まれば、一緒に食材を買いに行きましょう。もしかたら、ルヴァンさんがいないと私が材料費ちょろまかしちゃうかもしれませんし」

「ユナさんはそんなことしないと思うけど分かった、ついて行く。準備するから少し待っててくれ」

 そう返事を返し俺は洗っていたシーツを絞って、雑に物干し竿にかけ家に財布を取りに戻る。
すると、家に入ったタイミングで「あの~」と風呂場から俺を呼ぶ声が聞こえた。

 「どうした?」
 
タオルとかは置いていたから大丈夫だと思うんだが、何か問題があったか?
 ドア越しに何かあったか尋ねる。

 「図々しいのは分かっているのですが、替えの服を持っていないので、大きめの服を貸してもらえませんか?服を洗って乾かすまででいいので」

 申し訳なそうな声で服を貸してくれないかと言う姫様。
 あっ、そういえばその辺も無かったな。ユナさんと買い物行く時に買わねえと。

 「分かった。とりあえず大きめの服を持ってくるわ」

そう返事を返し俺は急いで棚から服を取り出し、風呂場のドアの前に置いた。

 「ちょっと、俺は今から夕飯買いに行ってくるから。服はドアの前に置いておくぞ」

「ありがとうございます」

姫様に行き先を告げ、家を出るとユナさんの元に戻った。

 「お待たせ、ユナさん。買い物の時に服屋に行きたいんだけど付いてきて貰っても良いかな?」

「良いですけど、どうしたんですか?」

「さっきの会話で大体わかってると思うけど人を匿ってるんだけどさ、その人が女性でな。女物の服なんて持ってないから選ぶのに付き合って欲しいな、と」

「…そうですか。良いですよ」

理由を説明するとユナさんは納得し了承してくれたが、プクッと頬を膨らませそっぽを向いた。

 「あの、ユナさん何で不機嫌そうなんですかね?」

「そんなことありませんよ。さぁ、行きましょう」

ユナさんはそう言って一人で商店街の方へ向かって早足で歩き出す。
 もしかして、何か俺気に触るようなこといちゃいましたか?女性との付き合いがあまりないから、どこで地雷を踏んだのか分からん。取り敢えずご機嫌取らなければ。

「ちょっと、ユナさん待って!」

 俺は急いでユナさんの後を追いかけた。



「…私のルヴァンさんなんですから。よそ見しちゃヤですよ」


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