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4話

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 目標を決めてから2日経った朝。
俺は母が寝ている隙を見計らって魔法の訓練をしていた。

俺の魔力50という数値は一般人がLevel1の時よりも20だけ多い数値となっているため少し威力があるかな程度しか出ないが、火魔法を使えば普通に木製の家を火事にするくらいの威力は出るので注意しながら魔法を使っている。

俺の目の前には火、水、風の3つの属性の小さなボールがフヨフヨと浮遊中だ。

全魔法適性と才能の塊のスキル効果により俺は現在火、水、
風、光、闇、氷、雷、無属性の魔法をこの2日で習得した。
適性があるだけではこんなに魔法スキルは覚えるのはあり得ないのだが、才能の塊というスキルのおかげでコツをすぐに掴んだ。そのため普通の人が一ヶ月で一個覚えるところ俺は大体三時間で覚えることができた。流石勇者スペックである。すぐに出来るようになるから楽しくてしょうがない。

今やっているのは並列思考と三重魔法スキルを習得する訓練だ。二重魔法、つまり魔法の二個同時発動は案外すんなり出来た。多分俺が魔力を作る時に手から生成するイメージがついたせいで、左右の手からそれぞれ別の魔法を出すように意識するだけだったからな。だが、三重になるとそのイメージが邪魔をしてあまり魔法がうまく使えない。いまも目の前に浮かんでいる属性ボールはこれ以上大きくならないし動かせないのがその証拠だ。
魔法の発動の仕方について、説明しておこう。簡単に言うと精神力を消費して魔法を使うというのがざっくりとした概要なのだが、ではどうやって精神力を魔法に変換しているのかという話になる。これは人体に魔心臓と言われる器官が存在しており、そこに精神力を流すことで魔力の塊を生産その後その魔力は身体の全身を血のように回る。それを魔法を発動するために体外に放出し、変換することでようやく魔法が発動する。

正直、魔法を使うのは最初苦戦した。何てったって血を体外に放出するような感覚なのでイマイチどうしていいのか分からなかったが、手から微弱に魔力が漏れているのが分かった瞬間その漏れている部分を大きくなれと念じながら魔力をそこに集めるよう意識していたら習得できた。変換する作業は魔力を自分のイメージした物にするだけなので、前世、魔法で戦う系のアニメなどを見ていたため、イメージをすること自体は容易ですぐに出来た。

先程も言ったがそこまでは順調だったのだが、三つ同時発動が上手くいかない。
うーんと頭を悩ませながら解決策を考える。物語だとアストロがとあるヒロインに修行をつけてもらうことで魔法の複数同時発動を身につけていたが、俺の感性とこちらの世界の人とでは感性が違うためその通りにやっても上手くいかない。
どうすれば良いのだろうか?
かなりの時間悩んでいたのか、母が起きる気配を感じ魔法の維持を辞め、声を上げる。

「あーあ……あー」

「……レイク、起きたのね。泣いてないみたいだしお腹も空いてのかな?でも、このまま何もしないのも」


「ま、ま」

「えっ?レイクもしかしてママって呼んだ?」

ふふっ、どうだ。実は密かに練習していた発音練習の成果は!
普通の赤ちゃんならこんなことは出来ないだろうが筋力値が既に初期値の五倍ある俺なら、生まれたてホヤホヤの俺でも少しだけならこのように発音できるのだ。

「ま、ま」

「レイクが私のことママって呼んだー!あなたーーーー」

母は、俺に呼ばれたのが余程嬉しかったのか隣の部屋で寝ている父を大声で呼びに行った。
前世親孝行全く出来なかったし、12歳になったら家を出ることになるから今のうちに親孝行出来ることをしていこうとも思っている。
まぁ、魔物を狩って肉を家に持ち帰るくらいしか出来ないけど。喜んでもらえるだろう。多分。
そんなわけで俺の修行は、常人ではあり得ないレベルで進んでいくのだった。






母が父を連れて戻ってきた。

「ママって本当に言ったのか?」

「ええ、そうよ。この耳が確かに聞いたんだもの」

「ま、ま、ぱ、ぱ」

どうせなら、父にもやってあげようと思い呼んだ。

「本当だ!しかもパパって言ってるぞ!この子俺たちが、親だともう分かってる。レイクは神童だな!」

「ええっ、将来が楽しみねー!それよりもう一回呼んでくれないかしら?」

「ま、ま」

「俺も言ってくれ!レイク」

「ぱ、、ぱ」

「もう一回」「もう一回」

と、嬉しそうな父達を見て俺は調子に乗りパパ、ママと呼び続けたのだが、それが終わる頃には明かりがなくて暗かった部屋が顔を出した太陽によってかなり明るくなっていた。
次の日、口が筋肉痛になったのは言うまでもないだろう。


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