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第六章「こっちなんか見てないって、知ってたけど」
「こっちなんか見てないって、知ってたけど」
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コウジは、合宿で確信した。
「俺、たぶん恋してる。しかも、全員に」
花火のときのカナの「ちょっと上手くなってたじゃん?」という言葉にドキッとして、
朝のミサト先輩の笑顔に心臓が爆発しかけて、
体育館で真剣にラリーするナオに「努力って…尊い…」と感動し、
ヒロミのツインテールが汗でゆれてるのを見て、「あれ、可愛い…」と沼に落ちる。
完全に舞い上がっていた。
その夜、男子部屋の廊下に出たコウジは、ふと物音に気づいて足を止めた。
隣の和室から、女子の声が聞こえる。
「でさー、男子卓球部の中で、いい感じの子とかいた?」
一瞬、息が止まった。
「え、いなくない?」「マジそれ」「眼中にないっていうか……男子って、まだ子供って感じじゃん」
バッサリ。グサッ。グサグサッ。
コウジは心の中で3回死んだ。
「……わかってたけどさ……それ、言う? はっきり言っちゃう??」
思わず壁にもたれかかって目を閉じる。
でも、そのあと聞こえてきた声が――不思議と、耳に残った。
「でも、今日のラントレでさ、あのメガネの子? コウジくん? めっちゃ走ってたよね」
「わかる。野球部と並んでたの、ちょっとキュンとした」
「男子ってさ、体力バケモンだよね。本気出すと、やっぱカッコいいよ」
その瞬間、コウジの目の奥に火がついた。
「……俺、バケモンになるわ」
何言ってんだ俺。でも、思った。
本気で、マジで、誰かの目に入るような“何か”を見せてやろうって。
恋なんて、フラれてナンボ。
でも――だからって、認められないままじゃ終われねえ。
その翌日。
コウジはラントレを誰よりも前で走り抜けた。
タカヤが後ろで「どうしたコウジ!? なにがあった!?」と叫ぶ。
コウジは振り返ってニヤッと笑った。
「俺はもう“眼中”にすらいないらしいからな。だったら、視界に入るくらい速くなってやるよ」
ヒロミがふとその横を通りながら、ボソッとつぶやいた。
「……バカだけど、いいじゃん」
それが、コウジの夏の失恋であり――
最初の勝負の始まりだった。
「俺、たぶん恋してる。しかも、全員に」
花火のときのカナの「ちょっと上手くなってたじゃん?」という言葉にドキッとして、
朝のミサト先輩の笑顔に心臓が爆発しかけて、
体育館で真剣にラリーするナオに「努力って…尊い…」と感動し、
ヒロミのツインテールが汗でゆれてるのを見て、「あれ、可愛い…」と沼に落ちる。
完全に舞い上がっていた。
その夜、男子部屋の廊下に出たコウジは、ふと物音に気づいて足を止めた。
隣の和室から、女子の声が聞こえる。
「でさー、男子卓球部の中で、いい感じの子とかいた?」
一瞬、息が止まった。
「え、いなくない?」「マジそれ」「眼中にないっていうか……男子って、まだ子供って感じじゃん」
バッサリ。グサッ。グサグサッ。
コウジは心の中で3回死んだ。
「……わかってたけどさ……それ、言う? はっきり言っちゃう??」
思わず壁にもたれかかって目を閉じる。
でも、そのあと聞こえてきた声が――不思議と、耳に残った。
「でも、今日のラントレでさ、あのメガネの子? コウジくん? めっちゃ走ってたよね」
「わかる。野球部と並んでたの、ちょっとキュンとした」
「男子ってさ、体力バケモンだよね。本気出すと、やっぱカッコいいよ」
その瞬間、コウジの目の奥に火がついた。
「……俺、バケモンになるわ」
何言ってんだ俺。でも、思った。
本気で、マジで、誰かの目に入るような“何か”を見せてやろうって。
恋なんて、フラれてナンボ。
でも――だからって、認められないままじゃ終われねえ。
その翌日。
コウジはラントレを誰よりも前で走り抜けた。
タカヤが後ろで「どうしたコウジ!? なにがあった!?」と叫ぶ。
コウジは振り返ってニヤッと笑った。
「俺はもう“眼中”にすらいないらしいからな。だったら、視界に入るくらい速くなってやるよ」
ヒロミがふとその横を通りながら、ボソッとつぶやいた。
「……バカだけど、いいじゃん」
それが、コウジの夏の失恋であり――
最初の勝負の始まりだった。
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