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4. 持久力には自信があったけど
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春の日差しがじわじわと照りつける午後、ラグビー部は初めてのグラウンド練習に突入した。
「今日から基礎の基礎。まずは走るぞ。グラウンド10周!」
佐々木先生の宣言に、1年生たちが目を丸くした。
「じゅ、10周って……」
裕也が目を剥く。
グラウンド一周約400メートル。10周で4キロ。中学の部活ではここまでの持久走などほとんどなかった。
「大丈夫なのか、これ……」
拓海も不安を呟く。
「アップだから! アップ!」
副部長の渡辺先輩が軽い調子で笑いながら、スタートのラインに立つ。
笛が鳴り、一斉に走り出す。先輩たちは軽快に、リズムよく走っていく。中でも渡辺は小柄な身体を活かし、バネのように軽やかなフォームで先頭を走っていた。
(すげぇ……まるで中距離ランナーみたいだ)
1年生組はというと、開始2周で息が上がり始めていた。
「た、拓海ぃ……もう無理……」
3周目に差し掛かる頃、裕也は足を止めてしゃがみ込み、ゼェゼェと肩で息をしていた。
「……頑張れよ、裕也」
拓海も辛かった。脚は鉛のように重く、のどはカラカラで、顔が火照っている。だが、なんとかペースを落としながらも走り続けた。
(これが……高校の練習かよ……)
6周、7周、8周。先輩たちはすでに走り終えてストレッチに入っていた。
「おー、三船頑張ってるなー」
一ノ瀬先輩が声をかけてくれる。
最後の一周。歯を食いしばり、胸を張って走りきった。フィニッシュしたとたん、膝に手をついてぜえぜえと息を吐く。
「ナイスラン、よく走り切った!」
仁村先輩がにっこりと笑って、ペットボトルを手渡してくれる。
「ありが、とう……ございます……」
「じゃ、アップ終わったから、次はタックルいくぞー!」
「え、アップだったんですか今の……!?」
思わず叫ぶ拓海。遠くで、砂にまみれた裕也がうつ伏せに倒れ込んでいた。
そして次に始まったのは、先輩たちのタックル練習だった。
タックルパッドが並べられ、先輩たちはそれを次々に吹き飛ばすように突っ込んでいく。パッドの向こうで構える側も体幹を安定させ、全身を使って受け止めている。
「す、すご……」
拓海は思わず息を呑んだ。
それぞれの体格に合ったフォームとタイミングでのタックル。掛け声とともに響く衝突音と土の舞い。タックルを受けてもびくともしないパッド係の体幹の強さ。すべてが中学の部活とは桁違いだった。
「1年は今日は見学な。筋肉痛で倒れるだろうし」
田村主将が笑顔でそう言って、グラウンドの片隅に椅子を出してくれた。
座りながら、拓海は隣に座った裕也とぼんやりとタックル練習を眺める。
「たった1年や2年で、あんなふうになれるのかな」
拓海がぽつりと呟いた。
「なれるさ」
その声に振り向くと、佐々木先生が立っていた。空を覆うような大きな影と、圧倒的な存在感。
「努力と筋肉は、裏切らない」
そう言って、先生はにやりと笑った。その白い歯が太陽に反射してやけに眩しい。
「え……あ、はい……」
拓海が戸惑いながら返事をすると、先生は不意にスイッチが入ったように語り出した。
「いいか、三船。筋肉の成長には“適切な負荷”と“十分な休息”が必要だ。これはどちらが欠けてもダメだ。オーバーワークは敵だ。休め。特に初心者はな。やる気に任せて無理すると関節を壊す」
「え、あ、はい……」
「それから食事。PFCバランスだ。タンパク質・脂質・炭水化物。全部必要だ。糖質抜きなんてもってのほか。プロテインだけ飲んで満足するようなやつは三流以下だ。あと睡眠、これが一番重要。寝てる間に成長ホルモンが出る。寝ろ。スマホは捨てろ」
「はぁ……」
「学生の本文は勉強だ。テストの点数が下がるようなトレーニングは筋肉にも失礼だ。成績も保て。筋トレと両立してこそ一流」
「……」
「食事は“量”じゃない。“回数”を増やせ。少量をこまめに摂るんだ。間食にはプロテインバーだな。あと、水分摂取は1日2~3リットル。喉が渇いたらもう遅い。常に持っておけ」
滝のように流れ出る筋トレ知識。拓海はどんどん押し流されていく感覚だった。
(……先生、すげぇ、熱量……いや、暑苦しい……)
横を見ると、裕也が少し距離を取っていた。
「ま、まあ……覚えておきます」
「うむ。だが、無理はするな。続けることが何より大事だからな」
言い終えて去っていく佐々木先生の背中は、阿修羅像のようにどっしりと、そして神々しかった。
(……筋肉って、奥が深いんだな……)
拓海は目を丸くしながらも、少しだけワクワクしていた。
「今日から基礎の基礎。まずは走るぞ。グラウンド10周!」
佐々木先生の宣言に、1年生たちが目を丸くした。
「じゅ、10周って……」
裕也が目を剥く。
グラウンド一周約400メートル。10周で4キロ。中学の部活ではここまでの持久走などほとんどなかった。
「大丈夫なのか、これ……」
拓海も不安を呟く。
「アップだから! アップ!」
副部長の渡辺先輩が軽い調子で笑いながら、スタートのラインに立つ。
笛が鳴り、一斉に走り出す。先輩たちは軽快に、リズムよく走っていく。中でも渡辺は小柄な身体を活かし、バネのように軽やかなフォームで先頭を走っていた。
(すげぇ……まるで中距離ランナーみたいだ)
1年生組はというと、開始2周で息が上がり始めていた。
「た、拓海ぃ……もう無理……」
3周目に差し掛かる頃、裕也は足を止めてしゃがみ込み、ゼェゼェと肩で息をしていた。
「……頑張れよ、裕也」
拓海も辛かった。脚は鉛のように重く、のどはカラカラで、顔が火照っている。だが、なんとかペースを落としながらも走り続けた。
(これが……高校の練習かよ……)
6周、7周、8周。先輩たちはすでに走り終えてストレッチに入っていた。
「おー、三船頑張ってるなー」
一ノ瀬先輩が声をかけてくれる。
最後の一周。歯を食いしばり、胸を張って走りきった。フィニッシュしたとたん、膝に手をついてぜえぜえと息を吐く。
「ナイスラン、よく走り切った!」
仁村先輩がにっこりと笑って、ペットボトルを手渡してくれる。
「ありが、とう……ございます……」
「じゃ、アップ終わったから、次はタックルいくぞー!」
「え、アップだったんですか今の……!?」
思わず叫ぶ拓海。遠くで、砂にまみれた裕也がうつ伏せに倒れ込んでいた。
そして次に始まったのは、先輩たちのタックル練習だった。
タックルパッドが並べられ、先輩たちはそれを次々に吹き飛ばすように突っ込んでいく。パッドの向こうで構える側も体幹を安定させ、全身を使って受け止めている。
「す、すご……」
拓海は思わず息を呑んだ。
それぞれの体格に合ったフォームとタイミングでのタックル。掛け声とともに響く衝突音と土の舞い。タックルを受けてもびくともしないパッド係の体幹の強さ。すべてが中学の部活とは桁違いだった。
「1年は今日は見学な。筋肉痛で倒れるだろうし」
田村主将が笑顔でそう言って、グラウンドの片隅に椅子を出してくれた。
座りながら、拓海は隣に座った裕也とぼんやりとタックル練習を眺める。
「たった1年や2年で、あんなふうになれるのかな」
拓海がぽつりと呟いた。
「なれるさ」
その声に振り向くと、佐々木先生が立っていた。空を覆うような大きな影と、圧倒的な存在感。
「努力と筋肉は、裏切らない」
そう言って、先生はにやりと笑った。その白い歯が太陽に反射してやけに眩しい。
「え……あ、はい……」
拓海が戸惑いながら返事をすると、先生は不意にスイッチが入ったように語り出した。
「いいか、三船。筋肉の成長には“適切な負荷”と“十分な休息”が必要だ。これはどちらが欠けてもダメだ。オーバーワークは敵だ。休め。特に初心者はな。やる気に任せて無理すると関節を壊す」
「え、あ、はい……」
「それから食事。PFCバランスだ。タンパク質・脂質・炭水化物。全部必要だ。糖質抜きなんてもってのほか。プロテインだけ飲んで満足するようなやつは三流以下だ。あと睡眠、これが一番重要。寝てる間に成長ホルモンが出る。寝ろ。スマホは捨てろ」
「はぁ……」
「学生の本文は勉強だ。テストの点数が下がるようなトレーニングは筋肉にも失礼だ。成績も保て。筋トレと両立してこそ一流」
「……」
「食事は“量”じゃない。“回数”を増やせ。少量をこまめに摂るんだ。間食にはプロテインバーだな。あと、水分摂取は1日2~3リットル。喉が渇いたらもう遅い。常に持っておけ」
滝のように流れ出る筋トレ知識。拓海はどんどん押し流されていく感覚だった。
(……先生、すげぇ、熱量……いや、暑苦しい……)
横を見ると、裕也が少し距離を取っていた。
「ま、まあ……覚えておきます」
「うむ。だが、無理はするな。続けることが何より大事だからな」
言い終えて去っていく佐々木先生の背中は、阿修羅像のようにどっしりと、そして神々しかった。
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