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第十五話「悪役令息と救国の英雄」
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ダリウス大公の王位簒奪計画という、王国を揺るがす大事件の全貌が明らかになり、法廷は騒然となった。全ての悪事が暴かれた大公とその一派は、その場で捕らえられ、国の歴史からその名を抹消されることとなる。
一方、偽りの罪を着せられていたルキウスは、一転して、国を救った英雄として称賛の的となった。大公の陰謀を未然に防いだ彼の功績は、計り知れない。
国王は、自らの不明を恥じ、ルキウスとアレクシスに深く頭を下げて謝罪した。そして、改めて、ルキウスをアレクシスの伴侶として、正式に王家へ迎え入れることを宣言した。
「悪役令息」と呼ばれ、疎まれていた青年が、国中から「救国の英雄」として敬愛される存在となった瞬間だった。
裁判が終わり、王都が祝賀ムードに沸く中、ルキウスは一人、王宮のバルコニーにいた。数ヶ月前、初めてアレクシスと出会った場所だ。ここから始まった、悪役令息としての二度目の人生。死の運命を回避することだけを考えていたはずが、いつの間にか、国の運命さえも左右する立場になっていた。
(まるで、夢のようだ……)
現実感がなく、ふわふわとした気持ちで夜空を見上げていると、背後に人の気配がした。振り返るまでもなく、それが誰なのかは分かった。
「……アレクシス殿下」
「今は、二人きりだ。アレクシス、と呼んでくれ」
隣に並び立ったアレクシスが、静かに言った。その横顔は、月の光を浴びて、彫刻のように美しかった。
ルキウスは、どうしようもなく、この人が好きだ、と思った。身分も、立場も、運命も関係なく、ただ一人の人間として、アレクシスという男に惹かれている。その事実を、彼はもう、否定することができなかった。
「あの……ありがとうございました。あなたが、いなければ、俺は……」
感謝の言葉を述べようとするルキウスの唇を、アレクシスが、そっと自身の人差し指で塞いだ。
「礼を言うのは、私のほうだ」
アレクシスは、真剣な瞳でルキウスを見つめて、言った。
「お前に、すべてを打ち明けなければならない」
彼の口から語られたのは、意外な真実だった。
政略結婚が決まった当初、アレクシスがルキウスに冷たく接していたのは、彼なりの優しさだったのだという。王位を巡る醜い争いに、何も知らない無垢な婚約者を巻き込みたくなかった。あえて距離を置くことで、彼を守ろうとしていたのだ。
「だが、私の計画は、早々に狂ってしまった」
アレクシスは、自嘲するように、ふっと笑った。
「お前は、私の予想を遥かに超えて、聡明で、優しくて、そして……とても魅力的だった。気づいた時には、もう手遅れだった。私は、本気で、お前に恋をしていたんだ」
それは、ルキウスが夢にも思わなかった告白だった。氷の王太子と呼ばれた男の、初めて見せる、熱のこもった愛情表現。
ルキウスの胸は、喜びと、驚きと、そして少しの罪悪感で、いっぱいになった。
「……俺も、あなたに、話さなければならないことがあります」
覚悟を決めて、ルキウスは、自分が転生者であることを、静かに打ち明けた。過労死した一度目の人生のこと。ここが、BLゲームの世界であること。そして、本来の自分が、彼に断罪される運命の、悪役令息であったことを。
すべてを聞き終えたアレクシスは、驚いた顔をしたが、すぐに穏やかな表情に戻った。
「そうか……。お前は、そんなにも過酷な運命を、一人で背負っていたのか」
彼は、ルキウスを責めなかった。ただ、その苦しみを労わるように、優しく彼の頬に手を添えた。
「だが、一つだけ訂正させろ。私が愛しているのは、ゲームの登場人物ではない。聡明で、優しくて、民を愛し、そして、時々無鉄砲な……ルキウス、お前自身だ」
その言葉が、ルキウスの心にかけられていた最後の枷を、完全に解き放った。
「……アレクシス」
彼は、溢れる想いを込めて、愛する人の名前を呼んだ。
「俺も……あなたが好きです」
ようやく、素直な気持ちを伝えることができた。二人の視線が絡み合い、どちらからともなく、顔が近づいていく。
バルコニーの柔らかな月の光の下で、二人の唇が、初めて、そっと重なった。それは、長く、困難な道のりを乗り越えた二人への、祝福の口づけだった。
一方、偽りの罪を着せられていたルキウスは、一転して、国を救った英雄として称賛の的となった。大公の陰謀を未然に防いだ彼の功績は、計り知れない。
国王は、自らの不明を恥じ、ルキウスとアレクシスに深く頭を下げて謝罪した。そして、改めて、ルキウスをアレクシスの伴侶として、正式に王家へ迎え入れることを宣言した。
「悪役令息」と呼ばれ、疎まれていた青年が、国中から「救国の英雄」として敬愛される存在となった瞬間だった。
裁判が終わり、王都が祝賀ムードに沸く中、ルキウスは一人、王宮のバルコニーにいた。数ヶ月前、初めてアレクシスと出会った場所だ。ここから始まった、悪役令息としての二度目の人生。死の運命を回避することだけを考えていたはずが、いつの間にか、国の運命さえも左右する立場になっていた。
(まるで、夢のようだ……)
現実感がなく、ふわふわとした気持ちで夜空を見上げていると、背後に人の気配がした。振り返るまでもなく、それが誰なのかは分かった。
「……アレクシス殿下」
「今は、二人きりだ。アレクシス、と呼んでくれ」
隣に並び立ったアレクシスが、静かに言った。その横顔は、月の光を浴びて、彫刻のように美しかった。
ルキウスは、どうしようもなく、この人が好きだ、と思った。身分も、立場も、運命も関係なく、ただ一人の人間として、アレクシスという男に惹かれている。その事実を、彼はもう、否定することができなかった。
「あの……ありがとうございました。あなたが、いなければ、俺は……」
感謝の言葉を述べようとするルキウスの唇を、アレクシスが、そっと自身の人差し指で塞いだ。
「礼を言うのは、私のほうだ」
アレクシスは、真剣な瞳でルキウスを見つめて、言った。
「お前に、すべてを打ち明けなければならない」
彼の口から語られたのは、意外な真実だった。
政略結婚が決まった当初、アレクシスがルキウスに冷たく接していたのは、彼なりの優しさだったのだという。王位を巡る醜い争いに、何も知らない無垢な婚約者を巻き込みたくなかった。あえて距離を置くことで、彼を守ろうとしていたのだ。
「だが、私の計画は、早々に狂ってしまった」
アレクシスは、自嘲するように、ふっと笑った。
「お前は、私の予想を遥かに超えて、聡明で、優しくて、そして……とても魅力的だった。気づいた時には、もう手遅れだった。私は、本気で、お前に恋をしていたんだ」
それは、ルキウスが夢にも思わなかった告白だった。氷の王太子と呼ばれた男の、初めて見せる、熱のこもった愛情表現。
ルキウスの胸は、喜びと、驚きと、そして少しの罪悪感で、いっぱいになった。
「……俺も、あなたに、話さなければならないことがあります」
覚悟を決めて、ルキウスは、自分が転生者であることを、静かに打ち明けた。過労死した一度目の人生のこと。ここが、BLゲームの世界であること。そして、本来の自分が、彼に断罪される運命の、悪役令息であったことを。
すべてを聞き終えたアレクシスは、驚いた顔をしたが、すぐに穏やかな表情に戻った。
「そうか……。お前は、そんなにも過酷な運命を、一人で背負っていたのか」
彼は、ルキウスを責めなかった。ただ、その苦しみを労わるように、優しく彼の頬に手を添えた。
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