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第12話「世界で一番温かい食卓」
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皇帝の番として、そして帝国の料理番としてリオは満ち足りた幸せな毎日を送っていた。
リオの作る料理と聖獣グリフォンの完全な復活による強大な加護によって、アレスの治める帝国はかつてないほどの繁栄の時代を迎えていた。作物は豊かに実り民は健やかで、国中が明るい希望に満ち溢れている。
賢帝として国を巧みに治めるアレス。その隣にはいつも太陽のようなリオの穏やかな笑顔があった。
ある日の夕食。二人が囲む食卓は皇帝の食事とは思えないほど質素なものだった。
メニューはリオが作ったキノコとベーコンの入ったクリームスープと、焼きたてのライ麦パン、そして色とりどりの温野菜サラダだけ。
「今日は質素だな」
アレスが少し意地悪そうに笑いながら言う。
「たまにはこういうのもいいでしょう? 胃を休ませてあげないと」
リオもくすくすと笑いながら答える。
豪華な食材が並んでいるわけではない。珍しいご馳走があるわけでもない。でもこの食卓にはどんなご馳走にも代えることのできない、愛情と温もりが満ちていた。
スープを一口飲んだアレスが、ほうと満足げなため息をつく。
「……ああ、美味い。疲れた体に染み渡るようだ」
「よかったです。アレス様、おかわりはいかがですか?」
「ああ、もらおうか。言っただろう、君の料理は世界一だと」
そんな何気ない会話。穏やかな時間。それが二人にとっては何よりの幸せだった。
食事を終えると二人はバルコニーに出て夜空を眺める。煌めく星空の下、繁栄した帝国の街の灯りがまるで地上の天の川のように広がっていた。
「綺麗ですね」
「ああ。君が来てからこの国の夜は、より一層輝きを増したように思う」
アレスがリオの肩を優しく抱き寄せる。その胸に寄り添いながら、リオはこの幸せが永遠に続けばいいと心から願った。
ふと夜空を大きな影が横切った。聖獣グリフォンだ。主である二人を見つけると祝福するように一声高く鳴き、夜の散歩へと飛び去って行った。
あの絶望の雨の日から全てが始まった。無価値だと捨てられ生きる希望さえ失いかけた俺が、今こんなにも幸せな場所にいる。
「アレス様」
「なんだ?」
「俺を見つけてくれて、ありがとうございます」
振り向いたリオの瞳には感謝の涙が光っていた。アレスはその涙を優しく指で拭うと、愛しい番の唇にそっと口づけを落とした。
聖獣グリフォンに見守られながらアレスとリオは、この温かい食卓を、そして愛する帝国の輝かしい未来を共に守っていくことを心に誓うのだった。
二人の物語はここからが本当の始まりだ。
リオの作る料理と聖獣グリフォンの完全な復活による強大な加護によって、アレスの治める帝国はかつてないほどの繁栄の時代を迎えていた。作物は豊かに実り民は健やかで、国中が明るい希望に満ち溢れている。
賢帝として国を巧みに治めるアレス。その隣にはいつも太陽のようなリオの穏やかな笑顔があった。
ある日の夕食。二人が囲む食卓は皇帝の食事とは思えないほど質素なものだった。
メニューはリオが作ったキノコとベーコンの入ったクリームスープと、焼きたてのライ麦パン、そして色とりどりの温野菜サラダだけ。
「今日は質素だな」
アレスが少し意地悪そうに笑いながら言う。
「たまにはこういうのもいいでしょう? 胃を休ませてあげないと」
リオもくすくすと笑いながら答える。
豪華な食材が並んでいるわけではない。珍しいご馳走があるわけでもない。でもこの食卓にはどんなご馳走にも代えることのできない、愛情と温もりが満ちていた。
スープを一口飲んだアレスが、ほうと満足げなため息をつく。
「……ああ、美味い。疲れた体に染み渡るようだ」
「よかったです。アレス様、おかわりはいかがですか?」
「ああ、もらおうか。言っただろう、君の料理は世界一だと」
そんな何気ない会話。穏やかな時間。それが二人にとっては何よりの幸せだった。
食事を終えると二人はバルコニーに出て夜空を眺める。煌めく星空の下、繁栄した帝国の街の灯りがまるで地上の天の川のように広がっていた。
「綺麗ですね」
「ああ。君が来てからこの国の夜は、より一層輝きを増したように思う」
アレスがリオの肩を優しく抱き寄せる。その胸に寄り添いながら、リオはこの幸せが永遠に続けばいいと心から願った。
ふと夜空を大きな影が横切った。聖獣グリフォンだ。主である二人を見つけると祝福するように一声高く鳴き、夜の散歩へと飛び去って行った。
あの絶望の雨の日から全てが始まった。無価値だと捨てられ生きる希望さえ失いかけた俺が、今こんなにも幸せな場所にいる。
「アレス様」
「なんだ?」
「俺を見つけてくれて、ありがとうございます」
振り向いたリオの瞳には感謝の涙が光っていた。アレスはその涙を優しく指で拭うと、愛しい番の唇にそっと口づけを落とした。
聖獣グリフォンに見守られながらアレスとリオは、この温かい食卓を、そして愛する帝国の輝かしい未来を共に守っていくことを心に誓うのだった。
二人の物語はここからが本当の始まりだ。
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