婚約破棄されて追放された僕、実は森羅万象に愛される【寵愛者】でした。冷酷なはずの公爵様から、身も心も蕩けるほど溺愛されています

水凪しおん

文字の大きさ
7 / 13

第6話「愚者たちの後悔と、完璧なるざまぁ」

しおりを挟む
『スタンピード討伐におけるグランヴェル公爵の功を称え、併せて公爵の伴侶を紹介する場を設ける』
 王家から届いた召喚状には、そう記されていた。一見すればもっともらしい理由だが、その裏にあるエドワード王子の浅はかな企みを、ルシウス様は完全に見抜いていた。
「奴は、君の噂を聞きつけたのだろう。そして、惜しくなった。実に愚かだ」
 吐き捨てるように言うルシウス様の瞳には、冷たい怒りの炎が揺らめいていた。
「行きたくなければ、断ることもできる。私がどうとでもしよう」
「いえ、行きます」
 僕は首を横に振った。逃げてばかりではいられない。僕はもう、王子に怯える無力な人形ではないのだから。グランヴェル公爵の伴侶として、堂々と彼らの前に立とう。それに、僕の隣には、この世界で一番強くて優しい人がいる。
「…そうか。分かった。ならば、私が君を完璧に守り抜こう」
 僕の決意を汲み取ったルシウス様は、そう言って僕の手を強く握りしめた。

 数日後、僕たちは王宮の謁見の間にいた。
 玉座に座る国王の隣には、エドワード王子と、聖女リリアナが並んでいる。久しぶりに見る二人の顔。しかし、その表情は以前とは全く違っていた。
 僕たちの姿を認めたエドワード王子は、焦ったように立ち上がると、卑屈な笑みを浮かべて近づいてきた。
「やあ、アレン。息災だったかな。その…以前のことは、私が間違っていた。君の本当の価値を見抜けなかった私が、愚かだったんだ。どうか、もう一度、私の元へ戻ってきてはくれないだろうか」
 見え透いた復縁の申し出。彼は、僕が何らかの稀有な力を持ち、公爵家がそれを理由に僕を娶ったのだと思い込んでいるのだろう。その力を、再び自分のものにしたいのだ。
 僕は、冷めた視線を彼に向ける。この男は、結局何も変わっていない。僕自身ではなく、僕の持つ力(だと思っているもの)にしか興味がないのだ。
 僕が何か言うより早く、僕の前に進み出たルシウス様が、全てを凍てつかせるような氷の声でそれを遮った。
「――戯言は、そこまでにしていただけるか、王子殿下」
 その声の冷たさに、エドワード王子はびくりと肩を震わせる。
「アレンは、私の伴侶だ。グランヴェル公爵家の至宝であり、未来の当主の伴侶。貴殿のような方が、気安く触れることすら許されない存在だということを、お忘れなく」
 ルシウス様の圧倒的な威圧感に、エドワード王子は顔を青くして後ずさる。
 だが、ルシウス様の追及は、それで終わりではなかった。
 彼は懐から数枚の羊皮紙を取り出し、国王の前に差し出した。
「陛下。此度は、王子殿下の断罪にお付き合いいただき、感謝いたします」
「なっ…何を言って…」
「ここに、聖女リリアナの力が魔道具による偽りであることの証拠と、彼女が信者から集めた献金を不正に着服していたという証言が、全て揃っております」
 ルシウス様が諜報部に命じて、極秘に調査させていたのだ。羊皮紙に目を通した国王の顔が、みるみるうちに怒りで赤く染まっていく。
「リリアナ! これは真か!」
「そ、そんな…! 私は、何も…!」
 リリアナは顔面蒼白で否定するが、突きつけられた完璧な証拠の前には、どんな言い訳も通用しない。彼女の聖女としての名声は、その瞬間に地に落ちた。全ての悪事が白日の下に晒され、リリアナはその場で衛兵に取り押さえられる。
 そして、エドワード王子もまた、リリアナの不正を見逃し、国を欺いていた監督不行き届きの責任、そして、僕に対する不当な婚約破棄がグランヴェル公爵家への侮辱と見なされたことの責任を、国王から厳しく追及された。
 結果、彼は王位継承権を剥奪され、国境に近い辺境の地への追放が決定した。
「そんな…馬鹿な…私が、追放…?」
 絶望の表情で呆然と呟き、衛兵に両脇を抱えられて連行されていく二人。僕は、その姿を静かに見送った。同情も、憐れみも感じなかった。ただ、これで全て終わったのだと、そう思った。
 全ての騒動が終わり、ルシウス様は僕の方へ向き直ると、優しく僕の手を握る。
「さあ、私たちの家に帰ろう、アレン」
 その言葉が、僕には何よりも嬉しかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最強賢者のスローライフ 〜転生先は獣人だらけの辺境村でした〜

なの
BL
社畜として働き詰め、過労死した結城智也。次に目覚めたのは、獣人だらけの辺境村だった。 藁葺き屋根、素朴な食事、狼獣人のイケメンに介抱されて、気づけば賢者としてのチート能力まで付与済み!? 「静かに暮らしたいだけなんですけど!?」 ……そんな願いも虚しく、井戸掘り、畑改良、魔法インフラ整備に巻き込まれていく。 スローライフ(のはず)なのに、なぜか労働が止まらない。 それでも、優しい獣人たちとの日々に、心が少しずつほどけていく……。 チート×獣耳×ほの甘BL。 転生先、意外と住み心地いいかもしれない。

異世界に勇者として召喚された俺、ラスボスの魔王に敗北したら城に囚われ執着と独占欲まみれの甘い生活が始まりました

水凪しおん
BL
ごく普通の日本人だった俺、ハルキは、事故であっけなく死んだ――と思ったら、剣と魔法の異世界で『勇者』として目覚めた。 世界の命運を背負い、魔王討伐へと向かった俺を待っていたのは、圧倒的な力を持つ美しき魔王ゼノン。 「見つけた、俺の運命」 敗北した俺に彼が告げたのは、死の宣告ではなく、甘い所有宣言だった。 冷徹なはずの魔王は、俺を城に囚え、身も心も蕩けるほどに溺愛し始める。 食事も、着替えも、眠る時でさえ彼の腕の中。 その執着と独占欲に戸惑いながらも、時折見せる彼の孤独な瞳に、俺の心は抗いがたく惹かれていく。 敵同士から始まる、歪で甘い主従関係。 世界を敵に回しても手に入れたい、唯一の愛の物語。

オメガだと隠して魔王討伐隊に入ったら、最強アルファ達に溺愛されています

水凪しおん
BL
前世は、どこにでもいる普通の大学生だった。車に轢かれ、次に目覚めた時、俺はミルクティー色の髪を持つ少年『サナ』として、剣と魔法の異世界にいた。 そこで知らされたのは、衝撃の事実。この世界には男女の他に『アルファ』『ベータ』『オメガ』という第二の性が存在し、俺はその中で最も希少で、男性でありながら子を宿すことができる『オメガ』だという。 アルファに守られ、番になるのが幸せ? そんな決められた道は歩きたくない。俺は、俺自身の力で生きていく。そう決意し、平凡な『ベータ』と身分を偽った俺の前に現れたのは、太陽のように眩しい聖騎士カイル。彼は俺のささやかな機転を「稀代の戦術眼」と絶賛し、半ば強引に魔王討伐隊へと引き入れた。 しかし、そこは最強のアルファたちの巣窟だった! リーダーのカイルに加え、皮肉屋の天才魔法使いリアム、寡黙な獣人暗殺者ジン。三人の強烈なアルファフェロモンに日々当てられ、俺の身体は甘く疼き始める。 隠し通したい秘密と、抗いがたい本能。偽りのベータとして、俺はこの英雄たちの中で生き残れるのか? これは運命に抗う一人のオメガが、本当の居場所と愛を見つけるまでの物語。

婚約破棄された悪役令息は隣国の王子に持ち帰りされる

kouta
BL
婚約破棄された直後に前世の記憶を思い出したノア。 かつて遊んだことがある乙女ゲームの世界に転生したと察した彼は「あ、そういえば俺この後逆上して主人公に斬りかかった挙句にボコされて処刑されるんだったわ」と自分の運命を思い出す。 そしてメンタルがアラフォーとなった彼には最早婚約者は顔が良いだけの二股クズにしか見えず、あっさりと婚約破棄を快諾する。 「まぁ言うてこの年で婚約破棄されたとなると独身確定か……いっそのこと出家して、転生者らしくギルドなんか登録しちゃって俺TUEEE!でもやってみっか!」とポジティブに自分の身の振り方を考えていたノアだったが、それまでまるで接点のなかったキラキライケメンがグイグイ攻めてきて……「あれ? もしかして俺口説かれてます?」 おまけに婚約破棄したはずの二股男もなんかやたらと絡んでくるんですが……俺の冒険者ライフはいつ始まるんですか??(※始まりません)

2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。

ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。 異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。 二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。 しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。 再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

過労死で異世界転生したら、勇者の魂を持つ僕が魔王の城で目覚めた。なぜか「魂の半身」と呼ばれ異常なまでに溺愛されてる件

水凪しおん
BL
ブラック企業で過労死した俺、雪斗(ユキト)が次に目覚めたのは、なんと異世界の魔王の城だった。 赤ん坊の姿で転生した俺は、自分がこの世界を滅ぼす魔王を討つための「勇者の魂」を持つと知る。 目の前にいるのは、冷酷非情と噂の魔王ゼノン。 「ああ、終わった……食べられるんだ」 絶望する俺を前に、しかし魔王はうっとりと目を細め、こう囁いた。 「ようやく会えた、我が魂の半身よ」 それから始まったのは、地獄のような日々――ではなく、至れり尽くせりの甘やかし生活!? 最高級の食事、ふわふわの寝具、傅役(もりやく)までつけられ、魔王自らが甲斐甲斐しくお菓子を食べさせてくる始末。 この溺愛は、俺を油断させて力を奪うための罠に違いない! そう信じて疑わない俺の勘違いをよそに、魔王の独占欲と愛情はどんどんエスカレートしていき……。 永い孤独を生きてきた最強魔王と、自己肯定感ゼロの元社畜勇者。 敵対するはずの運命が交わる時、世界を揺るがす壮大な愛の物語が始まる。

処理中です...