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第6話「愚者たちの後悔と、完璧なるざまぁ」
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『スタンピード討伐におけるグランヴェル公爵の功を称え、併せて公爵の伴侶を紹介する場を設ける』
王家から届いた召喚状には、そう記されていた。一見すればもっともらしい理由だが、その裏にあるエドワード王子の浅はかな企みを、ルシウス様は完全に見抜いていた。
「奴は、君の噂を聞きつけたのだろう。そして、惜しくなった。実に愚かだ」
吐き捨てるように言うルシウス様の瞳には、冷たい怒りの炎が揺らめいていた。
「行きたくなければ、断ることもできる。私がどうとでもしよう」
「いえ、行きます」
僕は首を横に振った。逃げてばかりではいられない。僕はもう、王子に怯える無力な人形ではないのだから。グランヴェル公爵の伴侶として、堂々と彼らの前に立とう。それに、僕の隣には、この世界で一番強くて優しい人がいる。
「…そうか。分かった。ならば、私が君を完璧に守り抜こう」
僕の決意を汲み取ったルシウス様は、そう言って僕の手を強く握りしめた。
数日後、僕たちは王宮の謁見の間にいた。
玉座に座る国王の隣には、エドワード王子と、聖女リリアナが並んでいる。久しぶりに見る二人の顔。しかし、その表情は以前とは全く違っていた。
僕たちの姿を認めたエドワード王子は、焦ったように立ち上がると、卑屈な笑みを浮かべて近づいてきた。
「やあ、アレン。息災だったかな。その…以前のことは、私が間違っていた。君の本当の価値を見抜けなかった私が、愚かだったんだ。どうか、もう一度、私の元へ戻ってきてはくれないだろうか」
見え透いた復縁の申し出。彼は、僕が何らかの稀有な力を持ち、公爵家がそれを理由に僕を娶ったのだと思い込んでいるのだろう。その力を、再び自分のものにしたいのだ。
僕は、冷めた視線を彼に向ける。この男は、結局何も変わっていない。僕自身ではなく、僕の持つ力(だと思っているもの)にしか興味がないのだ。
僕が何か言うより早く、僕の前に進み出たルシウス様が、全てを凍てつかせるような氷の声でそれを遮った。
「――戯言は、そこまでにしていただけるか、王子殿下」
その声の冷たさに、エドワード王子はびくりと肩を震わせる。
「アレンは、私の伴侶だ。グランヴェル公爵家の至宝であり、未来の当主の伴侶。貴殿のような方が、気安く触れることすら許されない存在だということを、お忘れなく」
ルシウス様の圧倒的な威圧感に、エドワード王子は顔を青くして後ずさる。
だが、ルシウス様の追及は、それで終わりではなかった。
彼は懐から数枚の羊皮紙を取り出し、国王の前に差し出した。
「陛下。此度は、王子殿下の断罪にお付き合いいただき、感謝いたします」
「なっ…何を言って…」
「ここに、聖女リリアナの力が魔道具による偽りであることの証拠と、彼女が信者から集めた献金を不正に着服していたという証言が、全て揃っております」
ルシウス様が諜報部に命じて、極秘に調査させていたのだ。羊皮紙に目を通した国王の顔が、みるみるうちに怒りで赤く染まっていく。
「リリアナ! これは真か!」
「そ、そんな…! 私は、何も…!」
リリアナは顔面蒼白で否定するが、突きつけられた完璧な証拠の前には、どんな言い訳も通用しない。彼女の聖女としての名声は、その瞬間に地に落ちた。全ての悪事が白日の下に晒され、リリアナはその場で衛兵に取り押さえられる。
そして、エドワード王子もまた、リリアナの不正を見逃し、国を欺いていた監督不行き届きの責任、そして、僕に対する不当な婚約破棄がグランヴェル公爵家への侮辱と見なされたことの責任を、国王から厳しく追及された。
結果、彼は王位継承権を剥奪され、国境に近い辺境の地への追放が決定した。
「そんな…馬鹿な…私が、追放…?」
絶望の表情で呆然と呟き、衛兵に両脇を抱えられて連行されていく二人。僕は、その姿を静かに見送った。同情も、憐れみも感じなかった。ただ、これで全て終わったのだと、そう思った。
全ての騒動が終わり、ルシウス様は僕の方へ向き直ると、優しく僕の手を握る。
「さあ、私たちの家に帰ろう、アレン」
その言葉が、僕には何よりも嬉しかった。
王家から届いた召喚状には、そう記されていた。一見すればもっともらしい理由だが、その裏にあるエドワード王子の浅はかな企みを、ルシウス様は完全に見抜いていた。
「奴は、君の噂を聞きつけたのだろう。そして、惜しくなった。実に愚かだ」
吐き捨てるように言うルシウス様の瞳には、冷たい怒りの炎が揺らめいていた。
「行きたくなければ、断ることもできる。私がどうとでもしよう」
「いえ、行きます」
僕は首を横に振った。逃げてばかりではいられない。僕はもう、王子に怯える無力な人形ではないのだから。グランヴェル公爵の伴侶として、堂々と彼らの前に立とう。それに、僕の隣には、この世界で一番強くて優しい人がいる。
「…そうか。分かった。ならば、私が君を完璧に守り抜こう」
僕の決意を汲み取ったルシウス様は、そう言って僕の手を強く握りしめた。
数日後、僕たちは王宮の謁見の間にいた。
玉座に座る国王の隣には、エドワード王子と、聖女リリアナが並んでいる。久しぶりに見る二人の顔。しかし、その表情は以前とは全く違っていた。
僕たちの姿を認めたエドワード王子は、焦ったように立ち上がると、卑屈な笑みを浮かべて近づいてきた。
「やあ、アレン。息災だったかな。その…以前のことは、私が間違っていた。君の本当の価値を見抜けなかった私が、愚かだったんだ。どうか、もう一度、私の元へ戻ってきてはくれないだろうか」
見え透いた復縁の申し出。彼は、僕が何らかの稀有な力を持ち、公爵家がそれを理由に僕を娶ったのだと思い込んでいるのだろう。その力を、再び自分のものにしたいのだ。
僕は、冷めた視線を彼に向ける。この男は、結局何も変わっていない。僕自身ではなく、僕の持つ力(だと思っているもの)にしか興味がないのだ。
僕が何か言うより早く、僕の前に進み出たルシウス様が、全てを凍てつかせるような氷の声でそれを遮った。
「――戯言は、そこまでにしていただけるか、王子殿下」
その声の冷たさに、エドワード王子はびくりと肩を震わせる。
「アレンは、私の伴侶だ。グランヴェル公爵家の至宝であり、未来の当主の伴侶。貴殿のような方が、気安く触れることすら許されない存在だということを、お忘れなく」
ルシウス様の圧倒的な威圧感に、エドワード王子は顔を青くして後ずさる。
だが、ルシウス様の追及は、それで終わりではなかった。
彼は懐から数枚の羊皮紙を取り出し、国王の前に差し出した。
「陛下。此度は、王子殿下の断罪にお付き合いいただき、感謝いたします」
「なっ…何を言って…」
「ここに、聖女リリアナの力が魔道具による偽りであることの証拠と、彼女が信者から集めた献金を不正に着服していたという証言が、全て揃っております」
ルシウス様が諜報部に命じて、極秘に調査させていたのだ。羊皮紙に目を通した国王の顔が、みるみるうちに怒りで赤く染まっていく。
「リリアナ! これは真か!」
「そ、そんな…! 私は、何も…!」
リリアナは顔面蒼白で否定するが、突きつけられた完璧な証拠の前には、どんな言い訳も通用しない。彼女の聖女としての名声は、その瞬間に地に落ちた。全ての悪事が白日の下に晒され、リリアナはその場で衛兵に取り押さえられる。
そして、エドワード王子もまた、リリアナの不正を見逃し、国を欺いていた監督不行き届きの責任、そして、僕に対する不当な婚約破棄がグランヴェル公爵家への侮辱と見なされたことの責任を、国王から厳しく追及された。
結果、彼は王位継承権を剥奪され、国境に近い辺境の地への追放が決定した。
「そんな…馬鹿な…私が、追放…?」
絶望の表情で呆然と呟き、衛兵に両脇を抱えられて連行されていく二人。僕は、その姿を静かに見送った。同情も、憐れみも感じなかった。ただ、これで全て終わったのだと、そう思った。
全ての騒動が終わり、ルシウス様は僕の方へ向き直ると、優しく僕の手を握る。
「さあ、私たちの家に帰ろう、アレン」
その言葉が、僕には何よりも嬉しかった。
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