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第20話「永遠の誓い、夜明けの光」
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俺とカイザー殿下の結婚式は、それから三月後、帝都が最も美しい花々に彩られる季節に執り行われることになった。
その日、帝都アーレンスブルクは、国中から集まった人々で、かつてないほどの祝祭ムードに包まれていた。
俺は、皇城の一室で、式の準備を整えていた。
鏡に映る自分の姿は、まるで別人のようだった。
銀糸で精緻な刺繍が施された、純白の礼服。
髪には、皇妃の証である小さなティアラが輝いている。
隣国の追放者で、泥まみれになって畑を耕していた男とは、到底思えない。
「レオン様、本当にお美しい……」
侍女たちが、うっとりとしたため息をつく。
少し、落ち着かない。
本当に、俺がこの場所にいていいのだろうか。
そんな弱気が、ふと心をよぎる。
コンコン、と扉がノックされた。
入ってきたのは、同じように純白の軍服に身を包んだ、カイザー殿下だった。
彼は侍女たちに目配せして下がらせると、俺の元へと歩み寄ってきた。
「……綺麗だ、レオン」
彼の金の瞳が、熱っぽく俺を映している。
そのまっすぐな視線に、俺の不安はかき消されていった。
「カイ……」
俺は、彼のことを今でも、時々こう呼んでしまう。
カイザー殿下は、その呼び方を何よりも喜んでくれた。
「緊張しているのか?」
「……少しだけ」
「大丈夫だ。俺がついている」
彼は、俺の手を優しく握りしめた。
その温もりが、俺に勇気をくれる。
「行こう。皆が、俺たちを待っている」
彼に導かれ、俺たちは帝都で最も格式の高い、大聖堂へと向かった。
大聖堂の重厚な扉が開かれると、その先には、目もくらむような光景が広がっていた。
天井まで届くステンドグラスから、色とりどりの光が差し込み、まるで神の祝福のように俺たちを照らしている。
参列席は、帝国中の、いや、大陸中の王侯貴族で埋め尽くされていた。
その中央に敷かれた真紅のバージンロードを、俺たちは二人、並んで歩いていく。
厳かなパイプオルガンの音色が、聖堂内に響き渡る。
祭壇の前で、俺たちは向き合った。
神官が、誓いの言葉を述べていく。
「汝、カイザー・フォン・エーデルシュタインは、レオンを生涯の伴侶とし、健やかなる時も、病める時も、富める時も、貧しき時も、彼を愛し、敬い、慈しむことを誓いますか」
「誓う」
カイザー殿下の力強い声が、聖堂に響く。
「汝、レオンは、カイザー・フォン・エーデルシュタインを生涯の伴侶とし、健やかなる時も、病める時も、富める時も、貧しき時も、彼を愛し、敬い、支えることを誓いますか」
俺は、目の前の、愛する人の顔を見つめた。
彼と出会ってからの日々が、走馬灯のように頭を駆け巡る。
絶望の淵にいた俺を救い上げてくれた、温かい手。
俺の全てを受け入れ、守ると言ってくれた、力強い言葉。
この人となら、どんな困難も乗り越えていける。
「……誓います」
俺の声は、震えていなかった。
誓いの口づけを交わした瞬間、聖堂内は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。
民衆の祝福を受けながら、俺たちは大聖堂を後にする。
空はどこまでも青く澄み渡り、柔らかな光が世界を照らしていた。
まるで、俺たちの未来を象徴しているかのように。
バルコニーから、帝都の民衆に向かって手を振る。
その人々の波の中に、俺は見慣れた顔を見つけたような気がした。
ヨハンや、グライフェンの村人たちの、幻の笑顔。
『みんな、ありがとう。俺は、幸せになるよ』
心の中で、そう呟いた。
悪役令息の物語は、ここで終わった。
これからは、エーデルシュタイン帝国の皇妃レオンとして、愛する夫と共に、新しい物語を紡いでいくのだ。
それは、きっと光に満ちた、幸福な物語になるだろう。
俺は、隣に立つカイザー殿下の手を、強く、強く握り返した。
永遠の愛を誓った二人の前には、輝かしい夜明けの光が差し込んでいた。
その日、帝都アーレンスブルクは、国中から集まった人々で、かつてないほどの祝祭ムードに包まれていた。
俺は、皇城の一室で、式の準備を整えていた。
鏡に映る自分の姿は、まるで別人のようだった。
銀糸で精緻な刺繍が施された、純白の礼服。
髪には、皇妃の証である小さなティアラが輝いている。
隣国の追放者で、泥まみれになって畑を耕していた男とは、到底思えない。
「レオン様、本当にお美しい……」
侍女たちが、うっとりとしたため息をつく。
少し、落ち着かない。
本当に、俺がこの場所にいていいのだろうか。
そんな弱気が、ふと心をよぎる。
コンコン、と扉がノックされた。
入ってきたのは、同じように純白の軍服に身を包んだ、カイザー殿下だった。
彼は侍女たちに目配せして下がらせると、俺の元へと歩み寄ってきた。
「……綺麗だ、レオン」
彼の金の瞳が、熱っぽく俺を映している。
そのまっすぐな視線に、俺の不安はかき消されていった。
「カイ……」
俺は、彼のことを今でも、時々こう呼んでしまう。
カイザー殿下は、その呼び方を何よりも喜んでくれた。
「緊張しているのか?」
「……少しだけ」
「大丈夫だ。俺がついている」
彼は、俺の手を優しく握りしめた。
その温もりが、俺に勇気をくれる。
「行こう。皆が、俺たちを待っている」
彼に導かれ、俺たちは帝都で最も格式の高い、大聖堂へと向かった。
大聖堂の重厚な扉が開かれると、その先には、目もくらむような光景が広がっていた。
天井まで届くステンドグラスから、色とりどりの光が差し込み、まるで神の祝福のように俺たちを照らしている。
参列席は、帝国中の、いや、大陸中の王侯貴族で埋め尽くされていた。
その中央に敷かれた真紅のバージンロードを、俺たちは二人、並んで歩いていく。
厳かなパイプオルガンの音色が、聖堂内に響き渡る。
祭壇の前で、俺たちは向き合った。
神官が、誓いの言葉を述べていく。
「汝、カイザー・フォン・エーデルシュタインは、レオンを生涯の伴侶とし、健やかなる時も、病める時も、富める時も、貧しき時も、彼を愛し、敬い、慈しむことを誓いますか」
「誓う」
カイザー殿下の力強い声が、聖堂に響く。
「汝、レオンは、カイザー・フォン・エーデルシュタインを生涯の伴侶とし、健やかなる時も、病める時も、富める時も、貧しき時も、彼を愛し、敬い、支えることを誓いますか」
俺は、目の前の、愛する人の顔を見つめた。
彼と出会ってからの日々が、走馬灯のように頭を駆け巡る。
絶望の淵にいた俺を救い上げてくれた、温かい手。
俺の全てを受け入れ、守ると言ってくれた、力強い言葉。
この人となら、どんな困難も乗り越えていける。
「……誓います」
俺の声は、震えていなかった。
誓いの口づけを交わした瞬間、聖堂内は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。
民衆の祝福を受けながら、俺たちは大聖堂を後にする。
空はどこまでも青く澄み渡り、柔らかな光が世界を照らしていた。
まるで、俺たちの未来を象徴しているかのように。
バルコニーから、帝都の民衆に向かって手を振る。
その人々の波の中に、俺は見慣れた顔を見つけたような気がした。
ヨハンや、グライフェンの村人たちの、幻の笑顔。
『みんな、ありがとう。俺は、幸せになるよ』
心の中で、そう呟いた。
悪役令息の物語は、ここで終わった。
これからは、エーデルシュタイン帝国の皇妃レオンとして、愛する夫と共に、新しい物語を紡いでいくのだ。
それは、きっと光に満ちた、幸福な物語になるだろう。
俺は、隣に立つカイザー殿下の手を、強く、強く握り返した。
永遠の愛を誓った二人の前には、輝かしい夜明けの光が差し込んでいた。
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