13 / 16
第12話「命の果実」
しおりを挟む
植物のドームの中は、外の喧騒が嘘のように静まり返っていた。
淡い緑色の燐光が周囲を照らし、甘い花の香りが漂っている。
ルカは草を編んで作られた即席のベッドに横たわり、激しい痛みに耐えていた。
「うぅ……っ、痛い……!」
「ルカ、しっかりしろ! 息を吸え!」
アレクセイはルカの手を握りしめ、必死に声をかけている。
彼の魔力がルカに流れ込み、痛みを和らげようとするが、出産の激痛を完全に取り除くことはできない。
通常の出産とは違う。これは魔力の塊を体外へ排出する儀式のようなものだ。
「殿下、もう無理……魔力が、持たない……」
「弱音を吐くな! お前は強い騎士だろう! 俺の番だろう!」
アレクセイは焦っていた。
ルカの生命力が、子供と共に体外へ流出しようとしている。
このままでは、子供が生まれた瞬間にルカが尽きてしまうかもしれない。
「俺の命を使え! 全部持っていけ!」
アレクセイは自分の魔力回路を全開にし、限界を超えた魔力をルカへと注ぎ込んだ。
黄金の光がドーム内を満たす。
アルファとオメガ、そしてその結晶である子供。
三つの魔力が共鳴し、奇跡的な循環を生み出す。
「――んあぁぁぁぁっ!!」
ルカの絶叫と共に、眩い光が弾けた。
痛みが引いていく。代わりに、温かい何かが両腕の中に滑り込んでくる感覚があった。
光が収まると、そこには元気な産声があった。
「オギャア! オギャア!」
「……生まれた……」
アレクセイが震える声でつぶやく。
彼の手には、光り輝く赤子が抱かれていた。
人間の姿をしているが、その肌は真珠のように輝き、髪はルカと同じ銀色、瞳はアレクセイと同じ碧眼。
そして驚くべきことに、その手には小さな「双葉」のようなものが握られていた(いや、魔力の発現だろうか)。
「ルカ、見てくれ。男の子だ。……俺たちの子だ」
アレクセイは涙を流しながら、赤子をルカの胸に置いた。
ルカは朦朧とする意識の中で、我が子の重みを感じた。
温かい。愛おしい。
さっきまでの痛みが嘘のように、幸福感が満ちてくる。
「か、わいい……」
「ああ、世界一だ」
その時、ドームの外から歓声が聞こえてきた。
「魔物が逃げていくぞ!」
「勝った! 我々の勝利だ!」
赤子の誕生と同時に放出された強大な浄化の魔力が、砦周辺の魔物たちを恐れさせ、退散させたのだ。
この子は、生まれた瞬間に戦いを終わらせてしまった。
まさに救世主の誕生だった。
ドームの植物がゆっくりと枯れ、外の世界と繋がる。
そこには、朝日が昇ろうとしていた。
ボロボロになりながらも生き残った兵士たちが、瓦礫の中で歓声を上げている。
その中心で、アレクセイはルカと赤子を抱き抱え、立ち上がった。
「見よ! 新たな生命の誕生だ! そして、我々の未来だ!」
アレクセイが高らかに宣言すると、兵士たちは一斉にひれ伏し、涙ながらに祝福の言葉を叫んだ。
ルカは恥ずかしさで顔を隠そうとしたが、アレクセイがそれを許さず、誇らしげにキスを落とした。
こうして、伝説に残る「砦の出産」は幕を閉じたのである。
淡い緑色の燐光が周囲を照らし、甘い花の香りが漂っている。
ルカは草を編んで作られた即席のベッドに横たわり、激しい痛みに耐えていた。
「うぅ……っ、痛い……!」
「ルカ、しっかりしろ! 息を吸え!」
アレクセイはルカの手を握りしめ、必死に声をかけている。
彼の魔力がルカに流れ込み、痛みを和らげようとするが、出産の激痛を完全に取り除くことはできない。
通常の出産とは違う。これは魔力の塊を体外へ排出する儀式のようなものだ。
「殿下、もう無理……魔力が、持たない……」
「弱音を吐くな! お前は強い騎士だろう! 俺の番だろう!」
アレクセイは焦っていた。
ルカの生命力が、子供と共に体外へ流出しようとしている。
このままでは、子供が生まれた瞬間にルカが尽きてしまうかもしれない。
「俺の命を使え! 全部持っていけ!」
アレクセイは自分の魔力回路を全開にし、限界を超えた魔力をルカへと注ぎ込んだ。
黄金の光がドーム内を満たす。
アルファとオメガ、そしてその結晶である子供。
三つの魔力が共鳴し、奇跡的な循環を生み出す。
「――んあぁぁぁぁっ!!」
ルカの絶叫と共に、眩い光が弾けた。
痛みが引いていく。代わりに、温かい何かが両腕の中に滑り込んでくる感覚があった。
光が収まると、そこには元気な産声があった。
「オギャア! オギャア!」
「……生まれた……」
アレクセイが震える声でつぶやく。
彼の手には、光り輝く赤子が抱かれていた。
人間の姿をしているが、その肌は真珠のように輝き、髪はルカと同じ銀色、瞳はアレクセイと同じ碧眼。
そして驚くべきことに、その手には小さな「双葉」のようなものが握られていた(いや、魔力の発現だろうか)。
「ルカ、見てくれ。男の子だ。……俺たちの子だ」
アレクセイは涙を流しながら、赤子をルカの胸に置いた。
ルカは朦朧とする意識の中で、我が子の重みを感じた。
温かい。愛おしい。
さっきまでの痛みが嘘のように、幸福感が満ちてくる。
「か、わいい……」
「ああ、世界一だ」
その時、ドームの外から歓声が聞こえてきた。
「魔物が逃げていくぞ!」
「勝った! 我々の勝利だ!」
赤子の誕生と同時に放出された強大な浄化の魔力が、砦周辺の魔物たちを恐れさせ、退散させたのだ。
この子は、生まれた瞬間に戦いを終わらせてしまった。
まさに救世主の誕生だった。
ドームの植物がゆっくりと枯れ、外の世界と繋がる。
そこには、朝日が昇ろうとしていた。
ボロボロになりながらも生き残った兵士たちが、瓦礫の中で歓声を上げている。
その中心で、アレクセイはルカと赤子を抱き抱え、立ち上がった。
「見よ! 新たな生命の誕生だ! そして、我々の未来だ!」
アレクセイが高らかに宣言すると、兵士たちは一斉にひれ伏し、涙ながらに祝福の言葉を叫んだ。
ルカは恥ずかしさで顔を隠そうとしたが、アレクセイがそれを許さず、誇らしげにキスを落とした。
こうして、伝説に残る「砦の出産」は幕を閉じたのである。
129
あなたにおすすめの小説
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
『偽物の番』だと捨てられた不憫な第三王子、隣国の冷徹皇帝に拾われて真実の愛を教え込まれる
レイ
BL
「出来損ない」と捨てられた場所は、私の居場所ではありませんでした。
ラングリス王国の第三王子・フィオーレは、王族の証である『聖種の紋様』が現れなかったことで「偽物の番」と罵られ、雪降る国境へと追放される。
死を覚悟した彼の前に現れたのは、隣国アイゼン帝国の「冷徹皇帝」ヴォルフラムだった。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜
あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。
行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。
異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?
聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています
八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。
そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。
記憶喪失のフリをしたあざといスパイですが、全部お見通しの皇帝陛下に「嘘の婚約者」として閉じ込められています
たら昆布
BL
処刑寸前のスパイが事故にあった後、記憶喪失のフリをして皇帝の婚約者だと偽る話
余命半年の俺を、手酷く振ったはずの元カレ二人が手を組んで逃がしてくれません
ユッキー
BL
半年以内に俺は一人寂しく死ぬ。そんな未来を視た。きっと誰も悲しむ人は居ないだろう。そう思っていたから何も怖くなかった。なのにそんな俺の元に過去手酷く振り、今では世界的スターとなった元カレ二人がやってきた。彼らは全てを知っていた。俺がどうして彼らを振ったのか、そして俺の余命も。
全てを諦めた主人公と、主人公を諦めきれないイケメンサッカー選手とシンガーソングライターの再会が導く未来は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる