隠れオメガの騎士は、極北の砦で秘密の野菜を作りたい~抑制剤が切れたら、冷徹王子に胃袋ごと溺愛されました~

水凪しおん

文字の大きさ
14 / 16

第13話「帰還と新たな芽吹き」

しおりを挟む
 戦後処理と体力の回復を待ち、一ヶ月後。
 ルカたちは王都へ凱旋することになった。
 その行列は、出征時とは比べ物にならないほど華やかで、そして奇妙なものだった。
 馬車の荷台には、ルカの畑で収穫された大量の巨大野菜が積まれ、兵士たちはそれを誇らしげに掲げているのだから。

「なんだ、あれは? カブか? あんなにデカいのか?」
「野菜の魔人が攻めてきたのかと思ったぞ」

 沿道の市民たちは度肝を抜かれたが、すぐにそれが「救国の野菜」であることを知り、大歓声で出迎えた。
 食糧難にあえいでいた王都にとって、これらの種と栽培技術(ルカの魔力付きではないが、品種改良にはなる)は、何よりの土産だった。

 王宮に到着すると、国王夫妻が出迎えてくれた。
 最初は「騎士団員とデキちゃった婚」に対して難色を示していた国王も、孫の顔を見た瞬間にデレデレになり、「国を救った英雄」としてのルカを正式に王族として迎え入れることを認めた。

「ルカ、これからはここが新しい『巣』だ」

 アレクセイに案内されたのは、王宮の離宮にある広大な庭園だった。
 かつてはバラ園だった場所が、綺麗に整地され、ふかふかの黒土が入れられている。

「殿下、これ……」

「バラもいいが、実用的な方がお前らしいだろう? ここで、好きなだけ野菜を作れ。……もちろん、俺と一緒にだがな」

 アレクセイはルカの腰を抱き、耳元で囁く。
「夜の『巣作り』も、忘れるなよ?」

 ルカは真っ赤になって肘鉄を食らわせようとしたが、アレクセイにかわされ、逆に深く口づけられた。

 それから数年。
 エルドラド王国の食糧事情は劇的に改善した。
「フェンネル式農法」と呼ばれる栽培技術が広まり、飢える民はいなくなった。
 その中心には、常に泥だらけの「農耕王子妃」ルカと、それを溺愛しつつ手伝う「最強のスパダリ農夫」アレクセイの姿があった。
 そして、彼らの足元には、スコップを振り回して元気に走り回る小さな王子の姿も。

 ルカは幸せだった。
 大好きな土があり、愛する人がいて、大切な家族がいる。
 これ以上の「巣」は、世界のどこを探してもないだろう。
 青空の下、ルカは大きく伸びをして、目の前の豊かな実りに微笑みかけた。

「さて、今日はジャガイモの収穫ですね!」

「ああ。張り切っていこうか、ルカ」

 二人の愛は、大地に根を張り、これからも永遠に実り続けるのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

『偽物の番』だと捨てられた不憫な第三王子、隣国の冷徹皇帝に拾われて真実の愛を教え込まれる

レイ
BL
「出来損ない」と捨てられた場所は、私の居場所ではありませんでした。 ラングリス王国の第三王子・フィオーレは、王族の証である『聖種の紋様』が現れなかったことで「偽物の番」と罵られ、雪降る国境へと追放される。 死を覚悟した彼の前に現れたのは、隣国アイゼン帝国の「冷徹皇帝」ヴォルフラムだった。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜

あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。 行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。 異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

記憶喪失のフリをしたあざといスパイですが、全部お見通しの皇帝陛下に「嘘の婚約者」として閉じ込められています

たら昆布
BL
処刑寸前のスパイが事故にあった後、記憶喪失のフリをして皇帝の婚約者だと偽る話

狂わせたのは君なのに

一寸光陰
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。 完結保証 番外編あり

処理中です...