隠れオメガの騎士は、極北の砦で秘密の野菜を作りたい~抑制剤が切れたら、冷徹王子に胃袋ごと溺愛されました~

水凪しおん

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番外編「王都の土とイチゴの誘惑」

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 王都での生活にも慣れてきた頃。
 ルカにはある悩みがあった。
 それは、アレクセイの過保護がいまだに抜けないことだ。

「ルカ、クワを持つな。俺がやる」
「ルカ、水が重い。俺がやる」
「ルカ、日差しが強い。俺の影に入れ」

 農業にいそしむルカの横で、アレクセイは常に甲斐甲斐しく、そして邪魔くさいほどに世話を焼いてくる。
 おかげで作業は遅々として進まないが、周囲のメイドや護衛たちは「ご馳走様です」と温かい目で見守っていた。

 ある日、ルカは温室で特別栽培していたイチゴの収穫を行っていた。
 真っ赤に熟れた大粒のイチゴ。甘い香りが充満している。

「これ、初物は殿下に食べていただこう」

 ルカは一番大きなイチゴを摘み、執務室で書類仕事と格闘しているアレクセイの元へ向かった。

「殿下、差し入れです」

 扉を開けると、アレクセイは顔を上げ、瞬時に表情を崩した。

「ルカか。待っていたぞ」

「仕事の邪魔をしてすみません。ほら、イチゴが採れたんです」

 ルカが差し出したイチゴを、アレクセイはじっと見つめ、それからルカの顔を見た。
 そして、不敵な笑みを浮かべる。

「口移しなら食べる」

「はぁ!? な、何言ってるんですか!」

「両手が塞がっているんだ。ほら、書類で」

 アレクセイはわざとらしくペンと紙を持ち上げて見せる。
 どう見ても嘘だ。片手は空く。
 だが、この男に理屈は通用しない。

「……分かりましたよ。一回だけですよ」

 ルカはため息をつき、イチゴを口に咥えた。
 甘酸っぱい果汁が広がる。
 恐る恐る顔を近づけると、アレクセイが待ってましたとばかりに身を乗り出し、ルカの後頭部を押さえてキスをした。

 チュッ、と音がして、イチゴがアレクセイの口へと移動する。
 だが、彼はそれで満足せず、そのまま深いキスへと移行した。
 イチゴの甘さと、アレクセイの舌の熱さが混じり合う。

「んっ、ふぁ……っ!」

 ようやく唇が離れた時、ルカは酸欠でフラフラになっていた。

「……美味いな。極上の味だ」

 アレクセイは唇を舐め、満足げに笑う。
「仕事が終わったら、残りのイチゴもすべてこの方法でいただくとしよう」

「ぜ、絶対にお断りです!」

 ルカは顔を真っ赤にして部屋を飛び出した。
 背後から聞こえるアレクセイの楽しげな笑い声を聞きながら、ルカは思う。
 このスパダリ王子の執着愛からは、一生逃れられそうにない、と。
 でも、それが嫌ではない自分がいることも、認めざるを得ないのだった。
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