虐げられ追放された悪役令息Ω、実は氷の皇太子αの運命の番で、めちゃくちゃに溺愛されています

水凪しおん

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番外編 第一話「氷の皇太子が恋に落ちた日(ゼノン視点)」

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 長年、俺の世界は灰色だった。
 原因不明の不眠症は、常に俺の思考を鈍らせ、感情を摩耗させた。帝国皇太子という立場は、孤独を加速させた。誰もが俺を恐れ、あるいは利用しようとするばかりで、心を許せる者など一人もいなかった。
『氷の皇太子』。その異名は、俺が自ら望んでまとった、心を閉ざすための鎧だった。

 あの日、隣国の夜会に出席したのも、ただの義務だった。退屈な挨拶と、中身のない会話。早く終わらせて、効果のない薬を飲んで眠れない夜を過ごすだけ。そう思っていた。
 その瞬間までは。
 会場の一角で、いさかいが起きた。どうでもいい、と無視しようとした。
 だが、次の瞬間、俺の全身を、今まで感じたことのない衝撃が貫いた。
 甘い。熟れた果実のような、心をとろかすような、むせ返るほどの甘い香り。
 俺の、アルファとしての本能が、生まれて初めて歓喜の声を上げた。
『――見つけた』
 香りの発生源へと、足が勝手に動く。
 そこにいたのは、銀の髪を持つ、儚げな少年だった。その空色の瞳は、恐怖と絶望に濡れていた。
 誰もが彼を非難し、蔑んでいた。
 許せない。
 俺の、魂の片割れ。探し続けていた、ただ一人の運命の番(つがい)。
 俺の宝物を、愚かな虫けらどもが傷つけている。
 その事実に、俺の中で何かが切れた。

「――私の番に、何をしている」

 気付けば、言葉が口から出ていた。
 驚愕に目を見開く少年。その顔を見て、俺の心は決まった。
 絶対に、この手に入れる。
 誰にも渡さない。
 この腕の中に抱え込んで、世界中の誰よりも甘やかし、愛し抜いてやろう。
 彼を腕に抱き上げたときの、あの体の軽さと、震えるほどの愛おしさ。
 俺の灰色の世界に、エリオットという名の鮮やかな色が灯った瞬間。
 そう、あの日、あの瞬間から、俺の執着と独占欲、そして、生まれて初めての恋は、始まっていたのだ。
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