処刑されたくない悪役宰相、破滅フラグ回避のため孤独なラスボス竜を懐柔したら番として溺愛される

水凪しおん

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第17話「届いた声、そして別離」

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 絶望的な破壊が吹き荒れる王都の上空。
 俺の必死の叫びが、果たして理性を失った巨大な黒竜に届くのか。
 もはや何の光も宿っていないように見える、その虚ろな瞳。
 だが、俺は信じていた。
 彼の魂はまだ、闇に飲まれてなどいないはずだ。
 ――ダリウス! 戻ってきてくれ!
 嵐と轟音を突き抜け、懐かしい声が彼の魂に直接響き渡った。
 それは彼が何よりも焦がれていた、唯一無二の番の声だった。
(クリストフ……?)
 声のする方へ、竜はゆっくりと首を巡らせる。
 そこには小さな飛竜艇で、必死に自分に呼びかける、愛しい銀髪の青年の姿があった。
 クリストフの命がけの叫びは、確かにダリウスの理性の奥深くに届いていた。
 それは闇を切り裂く一筋の光となり、彼の意識を現実へと引き戻していく。
 黒竜の巨大な体がびくりと大きく痙攣した。
 そして天を衝くような最後の咆哮を上げると、その体から力が抜け、人の姿へと戻りながら空から落下していく。

「ダリウス!」

 俺は飛竜艇を急降下させ、意識を失って落ちていく彼の体をなんとか受け止めた。
 小型の飛竜艇は俺とダリウスの二人を乗せて、きしむような音を立てている。
 暴走は寸でのところで食い止められた。
 王都の広場に不時着した俺たちの周りを、聖騎士団がすぐに取り囲む。

「だ、大丈夫か、クリストフ……」

 俺の腕の中でダリウスはかろうじて目を開け、掠れた声で言った。
 魔力を使い果たし、彼は衰弱しきっていた。

「ああ、俺は大丈夫だ。よく頑張ったな、ダリウス」

 俺が彼の頭を撫でると、彼は安心したようにそっと目を閉じた。
 だが、その混乱の隙を突かれた。
 俺たちが着陸した広場の影から、黒装束の男たちが数人、高速で飛び出してきたのだ。
 黒幕の組織の残党だ。
 聖騎士団が反応するよりも早く、彼らは俺の腕からダリウスを奪い、俺の体に短剣を突きつけた。
 いや、違う。
 狙いは衰弱したダリウスではなかった。

「ぐっ……!」

 一人の男が俺の腕を背後に捻り上げ、身動きを封じる。
 そしてリーダー格の男が勝ち誇ったように告げた。

「魔竜公の暴走は止められたが、我らの目的はまだ終わっていない。宰相閣下、もう一度、我々と共に来てもらおうか」

「くそっ……!」

 抵抗しようにも体が動かない。
 駆けつけようとしたセドリックたちも、俺を人質に取られては手が出せないでいた。

「クリストフ……!」

 意識が朦朧としながらも、ダリウスが俺の名を呼ぶ。
 その悲痛な声が俺の胸に突き刺さった。

「心配するな。必ず、戻る……」

 俺は彼にそう言い聞かせるようにつぶやいた。
 黒幕の組織は俺の身柄を確保すると、煙玉を使ってその場から一瞬で姿を消した。
 やっと再会できたと思ったのに。
 やっと彼の心を取り戻せたと思ったのに。
 俺たちは再び引き裂かれてしまった。
 遠のく意識の中、ダリウスはただ繰り返し、愛する者の名を呼び続けることしかできなかった。
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