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第13話「銀薔薇の公爵と祝福されしオメガ」
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国王陛下に僕たちの関係が認められてから、王都はまるでお祭り騒ぎだった。
『呪われし公爵を救った、聖なるオメガ』。
僕はいつの間にかそんな風に呼ばれるようになっていて、街を歩けばたくさんの人から「ありがとう」と声をかけられた。少し気恥ずかしいが、悪い気はしない。
そして今日は僕とアシュレイ公爵の、正式な番の儀式が行われる日だ。
王都の大聖堂には数えきれないほどの人々が集まっている。国王陛下をはじめ貴族たちも平民たちも、みんなが僕たちの門出を祝福しに来てくれたのだ。
僕はアシュレイ公爵とお揃いの真っ白な礼服に身を包んでいる。鏡に映る自分の姿はまだどこか見慣れない。
「緊張しているのか、リアム」
隣に立つアシュレイ公爵が僕の手にそっと触れた。
「はい、少しだけ。だってなんだか夢みたいで……」
僕が貧しい村で薬草を摘んでいた頃には、想像もできなかった未来。
僕がこの国の偉大な公爵様と番になるなんて。
「夢ではない。これは俺たちが二人で掴み取った現実だ」
彼はそう言うと僕の手を優しく握った。
やがて大聖堂の荘厳な鐘の音が鳴り響き、巨大な扉が開かれる。
僕たちはゆっくりとバージンロードを歩き始めた。
両脇に並ぶ人々からの温かい拍手と祝福の言葉。ステンドグラスから差し込む光が僕たちをきらきらと照らし出す。
祭壇の前では神官様が厳かな表情で僕たちを待っていた。
神官様の前に立ち、互いに向き合う。
間近で見るアシュレイ公爵は息を呑むほど美しかった。銀色の髪は光を浴びて輝き、紫水晶の瞳は深い愛情の色をたたえて僕を見つめている。
「汝、アシュレイ・フォン・ヴァインベルクは、リアムを生涯の番とし、健やかなる時も病める時も、富める時も貧しき時も、彼を愛し敬い慈しむことを誓いますか」
「誓います」
アシュレイ公爵の迷いのない声が、大聖堂に響き渡った。
「汝、リアム・リンドベルは、アシュレイを生涯の番とし、健やかなる時も病める時も、富める時も貧しき時も、彼を愛し敬い慈しむことを誓いますか」
「……はい、誓います」
僕の声は少しだけ震えてしまった。でも僕の精一杯の、真心のこもった誓いだった。
神官様が僕たちに誓いの証を交わすように促した。
アシュレイ公爵が僕の左手の薬指に、銀色の指輪をそっとはめてくれた。指輪にはヴァインベルク家の銀薔薇とリンドベル家の聖鳥が寄り添うように刻まれている。
僕も彼の指に同じデザインの指輪をはめる。
彼の大きな手に触れると確かな温もりが伝わってきた。
「では、誓いの口づけを」
アシュレイ公爵が僕の顔にかかったベールをそっと持ち上げる。
彼の顔がゆっくりと近づいてくる。
僕たちの唇が重なった瞬間、大聖堂は割れんばかりの歓声と拍手に包まれた。
儀式が終わり大聖堂の外へ出ると、空には晴れやかな青空が広がっていた。
集まった人々が僕たちに向かって、色とりどりの花びらを投げる。
ひらひらと舞う花びらの中で、アシュレイ公爵は僕を抱きしめた。
「リアム。愛している」
「僕もです、アシュレイ様。あなたを愛しています」
僕たちはどちらからともなく、もう一度キスを交わした。
たくさんの人に見られているのは恥ずかしいが、それ以上に幸せな気持ちでいっぱいだった。
遠くから僕たちの姿を見ている人影がいくつかあった。
穏やかな笑みを浮かべるギルバートさん。
少しだけ寂しそうに、でも祝福するように微笑む村の仲間たち。
そして少し離れた場所には罪を償い、今は修道院で静かに暮らしているエレオノーラさんの姿もあった。彼女は僕たちに向かって小さく手を振ってくれた。
僕たちの物語は決して平坦な道ではなかった。
たくさんの困難があって、何度もくじけそうになった。
でも二人で手を取り合って乗り越えてきた。
氷のように冷たいと思っていた公爵様は、誰よりも情が深く優しい人だった。
無力だと思っていた僕の力は、愛する人を、そして国を救う力になった。
身分も性別も過去の宿命も、僕たちの愛の前では何の意味も持たなかった。
「リアム、屋敷に帰るぞ。俺たちの家に」
「はい、アシュレイ」
僕は初めて彼のことを名前で呼んだ。
彼は一瞬驚いたように目を見開いた後、これまでで一番幸せそうに笑った。
銀薔薇の公爵と、祝福されしオメガ。
僕たちの物語はここからが本当の始まりだ。
きっとこの先も色々なことがあるだろう。
でもこの人の隣にいられるなら、僕はどんな未来も怖くない。
愛する人と共に歩む光に満ちた道を、僕は今確かに感じていた。
『呪われし公爵を救った、聖なるオメガ』。
僕はいつの間にかそんな風に呼ばれるようになっていて、街を歩けばたくさんの人から「ありがとう」と声をかけられた。少し気恥ずかしいが、悪い気はしない。
そして今日は僕とアシュレイ公爵の、正式な番の儀式が行われる日だ。
王都の大聖堂には数えきれないほどの人々が集まっている。国王陛下をはじめ貴族たちも平民たちも、みんなが僕たちの門出を祝福しに来てくれたのだ。
僕はアシュレイ公爵とお揃いの真っ白な礼服に身を包んでいる。鏡に映る自分の姿はまだどこか見慣れない。
「緊張しているのか、リアム」
隣に立つアシュレイ公爵が僕の手にそっと触れた。
「はい、少しだけ。だってなんだか夢みたいで……」
僕が貧しい村で薬草を摘んでいた頃には、想像もできなかった未来。
僕がこの国の偉大な公爵様と番になるなんて。
「夢ではない。これは俺たちが二人で掴み取った現実だ」
彼はそう言うと僕の手を優しく握った。
やがて大聖堂の荘厳な鐘の音が鳴り響き、巨大な扉が開かれる。
僕たちはゆっくりとバージンロードを歩き始めた。
両脇に並ぶ人々からの温かい拍手と祝福の言葉。ステンドグラスから差し込む光が僕たちをきらきらと照らし出す。
祭壇の前では神官様が厳かな表情で僕たちを待っていた。
神官様の前に立ち、互いに向き合う。
間近で見るアシュレイ公爵は息を呑むほど美しかった。銀色の髪は光を浴びて輝き、紫水晶の瞳は深い愛情の色をたたえて僕を見つめている。
「汝、アシュレイ・フォン・ヴァインベルクは、リアムを生涯の番とし、健やかなる時も病める時も、富める時も貧しき時も、彼を愛し敬い慈しむことを誓いますか」
「誓います」
アシュレイ公爵の迷いのない声が、大聖堂に響き渡った。
「汝、リアム・リンドベルは、アシュレイを生涯の番とし、健やかなる時も病める時も、富める時も貧しき時も、彼を愛し敬い慈しむことを誓いますか」
「……はい、誓います」
僕の声は少しだけ震えてしまった。でも僕の精一杯の、真心のこもった誓いだった。
神官様が僕たちに誓いの証を交わすように促した。
アシュレイ公爵が僕の左手の薬指に、銀色の指輪をそっとはめてくれた。指輪にはヴァインベルク家の銀薔薇とリンドベル家の聖鳥が寄り添うように刻まれている。
僕も彼の指に同じデザインの指輪をはめる。
彼の大きな手に触れると確かな温もりが伝わってきた。
「では、誓いの口づけを」
アシュレイ公爵が僕の顔にかかったベールをそっと持ち上げる。
彼の顔がゆっくりと近づいてくる。
僕たちの唇が重なった瞬間、大聖堂は割れんばかりの歓声と拍手に包まれた。
儀式が終わり大聖堂の外へ出ると、空には晴れやかな青空が広がっていた。
集まった人々が僕たちに向かって、色とりどりの花びらを投げる。
ひらひらと舞う花びらの中で、アシュレイ公爵は僕を抱きしめた。
「リアム。愛している」
「僕もです、アシュレイ様。あなたを愛しています」
僕たちはどちらからともなく、もう一度キスを交わした。
たくさんの人に見られているのは恥ずかしいが、それ以上に幸せな気持ちでいっぱいだった。
遠くから僕たちの姿を見ている人影がいくつかあった。
穏やかな笑みを浮かべるギルバートさん。
少しだけ寂しそうに、でも祝福するように微笑む村の仲間たち。
そして少し離れた場所には罪を償い、今は修道院で静かに暮らしているエレオノーラさんの姿もあった。彼女は僕たちに向かって小さく手を振ってくれた。
僕たちの物語は決して平坦な道ではなかった。
たくさんの困難があって、何度もくじけそうになった。
でも二人で手を取り合って乗り越えてきた。
氷のように冷たいと思っていた公爵様は、誰よりも情が深く優しい人だった。
無力だと思っていた僕の力は、愛する人を、そして国を救う力になった。
身分も性別も過去の宿命も、僕たちの愛の前では何の意味も持たなかった。
「リアム、屋敷に帰るぞ。俺たちの家に」
「はい、アシュレイ」
僕は初めて彼のことを名前で呼んだ。
彼は一瞬驚いたように目を見開いた後、これまでで一番幸せそうに笑った。
銀薔薇の公爵と、祝福されしオメガ。
僕たちの物語はここからが本当の始まりだ。
きっとこの先も色々なことがあるだろう。
でもこの人の隣にいられるなら、僕はどんな未来も怖くない。
愛する人と共に歩む光に満ちた道を、僕は今確かに感じていた。
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