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第10話「初めての告白と、甘い口づけ」
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若者たちが森から逃げ去った後も、フェンリルは俺を抱きしめたまま、しばらく離さなかった。
彼の胸に顔をうずめていると、とくん、とくん、と力強く、そして少しだけ速い鼓動が聞こえてくる。彼もまた、興奮しているのだと分かった。
俺は戸惑いながらも、その温もりが心地よくて、しばらく身を委ねていた。
やがて、少しだけ落ち着きを取り戻し、ゆっくりと顔を上げる。
間近で見る、人型となった彼の顔は、息を呑むほどに美しかった。
月光を溶かし込んだような銀の髪、星の光を宿したような金色の瞳。神が作り上げた最高傑作とは、きっとこういう顔立ちのことを言うのだろう。
「すごい……。本当に、人の姿に……なれたんですね」
見惚れながらそう言うと、フェンリルは愛しそうに目を細め、俺の髪を優しい手つきで撫でた。
狼の時にはできなかった、繊細な手つきだった。
「お前を守るためだ。そして……お前に、触れたかった」
その言葉に、どきり、と心臓が跳ねる。
フェンリルは、俺の瞳をまっすぐに見つめ、今まで聞いたことがないくらい、真剣で、はっきりとした声で告げた。
「ユキ。好きだ」
あまりにも、真っ直ぐすぎる告白。
何の飾りもない、純粋な想いが込められたその一言は、俺の心の奥深くまで、すとんと落ちてきた。
「俺のそばから、二度と離れるな。お前は、俺の番だ」
番(つがい)。
それは、生涯を共にする、唯一無二のパートナーを意味する言葉。
顔に、一気に熱が集まる。心臓は、破裂しそうなくらいにうるさく鳴り響き、彼の顔をまともに見ることができない。
俺は、真っ赤になった顔で俯くことしかできなかった。
けれど、その心は、今までに感じたことがないほどの、幸福感で満たされていた。
ずっと心の奥にしまい込んでいた想いが、通じ合ったのだ。
俺だけが、彼を特別に思っていたわけではなかった。彼もまた、俺を――。
「……俺も」
俯いたまま、か細い、蚊の鳴くような声で答える。
「俺も、好きです、フェンリル」
精一杯の勇気を振り絞ってそう伝えると、フェンリルは本当に嬉しそうに、ふわりと微笑んだ。
彼が笑った顔を、俺は初めて見た。それは、満開の花が咲き誇るような、眩しい笑顔だった。
彼はゆっくりと、俺の顎に指を添え、顔を上向かせる。
そして、その美しい顔が、徐々に近づいてきた。
金色の瞳が、すぐそこにある。彼の熱い吐息が、俺の唇にかかる。
俺は、そっと目を閉じた。
次の瞬間、唇に、驚くほど柔らかくて、温かい感触が触れた。
それは、初めての口づけだった。
優しく、啄むような、それでいて彼の深い愛情が伝わってくる、甘い口づけ。
数千年の孤独と、一人の青年の優しさが、確かに結ばれた瞬間だった。
長いようで、短い口づけ。
唇が離れた後も、俺たちはしばらくの間、互いの額をくっつけたまま、見つめ合っていた。
「ユキ……」
愛しそうに俺の名前を呼ぶ声。
「フェンリル……」
俺も、彼の名を呼ぶ。人型になった彼の名前を、初めて呼んだ。
もう、寂しくない。孤独じゃない。
俺たちには、お互いがいる。
森の木々が、祝福するようにざわめき、月が、優しく二人を照らしていた。
それは、これから始まる永遠の愛を誓う、甘くて優しい口づけだった。
彼の胸に顔をうずめていると、とくん、とくん、と力強く、そして少しだけ速い鼓動が聞こえてくる。彼もまた、興奮しているのだと分かった。
俺は戸惑いながらも、その温もりが心地よくて、しばらく身を委ねていた。
やがて、少しだけ落ち着きを取り戻し、ゆっくりと顔を上げる。
間近で見る、人型となった彼の顔は、息を呑むほどに美しかった。
月光を溶かし込んだような銀の髪、星の光を宿したような金色の瞳。神が作り上げた最高傑作とは、きっとこういう顔立ちのことを言うのだろう。
「すごい……。本当に、人の姿に……なれたんですね」
見惚れながらそう言うと、フェンリルは愛しそうに目を細め、俺の髪を優しい手つきで撫でた。
狼の時にはできなかった、繊細な手つきだった。
「お前を守るためだ。そして……お前に、触れたかった」
その言葉に、どきり、と心臓が跳ねる。
フェンリルは、俺の瞳をまっすぐに見つめ、今まで聞いたことがないくらい、真剣で、はっきりとした声で告げた。
「ユキ。好きだ」
あまりにも、真っ直ぐすぎる告白。
何の飾りもない、純粋な想いが込められたその一言は、俺の心の奥深くまで、すとんと落ちてきた。
「俺のそばから、二度と離れるな。お前は、俺の番だ」
番(つがい)。
それは、生涯を共にする、唯一無二のパートナーを意味する言葉。
顔に、一気に熱が集まる。心臓は、破裂しそうなくらいにうるさく鳴り響き、彼の顔をまともに見ることができない。
俺は、真っ赤になった顔で俯くことしかできなかった。
けれど、その心は、今までに感じたことがないほどの、幸福感で満たされていた。
ずっと心の奥にしまい込んでいた想いが、通じ合ったのだ。
俺だけが、彼を特別に思っていたわけではなかった。彼もまた、俺を――。
「……俺も」
俯いたまま、か細い、蚊の鳴くような声で答える。
「俺も、好きです、フェンリル」
精一杯の勇気を振り絞ってそう伝えると、フェンリルは本当に嬉しそうに、ふわりと微笑んだ。
彼が笑った顔を、俺は初めて見た。それは、満開の花が咲き誇るような、眩しい笑顔だった。
彼はゆっくりと、俺の顎に指を添え、顔を上向かせる。
そして、その美しい顔が、徐々に近づいてきた。
金色の瞳が、すぐそこにある。彼の熱い吐息が、俺の唇にかかる。
俺は、そっと目を閉じた。
次の瞬間、唇に、驚くほど柔らかくて、温かい感触が触れた。
それは、初めての口づけだった。
優しく、啄むような、それでいて彼の深い愛情が伝わってくる、甘い口づけ。
数千年の孤独と、一人の青年の優しさが、確かに結ばれた瞬間だった。
長いようで、短い口づけ。
唇が離れた後も、俺たちはしばらくの間、互いの額をくっつけたまま、見つめ合っていた。
「ユキ……」
愛しそうに俺の名前を呼ぶ声。
「フェンリル……」
俺も、彼の名を呼ぶ。人型になった彼の名前を、初めて呼んだ。
もう、寂しくない。孤独じゃない。
俺たちには、お互いがいる。
森の木々が、祝福するようにざわめき、月が、優しく二人を照らしていた。
それは、これから始まる永遠の愛を誓う、甘くて優しい口づけだった。
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