虐げられΩの僕は、貢物として冷酷非情な氷血皇帝に嫁いだはずが、どうやら万に一つの「運命の番」だったらしく、過保護に溺愛されています

水凪しおん

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エピローグ:光差す庭で

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 あの戴冠式から、数年の歳月が流れた。
 ガルディア帝国は、カイロスの賢明な治世のもと、かつてないほどの繁栄を謳歌していた。人々はもう、彼を「氷血皇帝」とは呼ばない。敬愛を込めて、「賢帝カイロス」と、そして彼の隣に立つ美しい皇后を「慈愛の皇后」と呼んだ。

 かつて虐げられていたΩ、リエルは、もうどこにもいなかった。
 今の彼は、自信に満ちた穏やかな笑みを絶やさない、美しい皇后として、国民から深く敬愛されている。時折見せる芯の強さと、全てを包み込むような優しさは、多くの人々の心を癒し、支えていた。

 その日、二人はあの思い出の庭園にいた。
 一面に咲き誇る白い花畑は、今や帝国の名所の一つとなっている。
「母上、父上! こちらです!」
 庭園の向こうから、元気な声が聞こえた。
 声の主は、二人の間に生まれた第一子、アルフォンス。父親譲りの黒髪と、母親譲りの青い瞳を持つ、利発で元気なαの男の子だ。
 その後ろを、小さな女の子が一生懸命ついてくる。
「おにいちゃま、まってー!」
 第二子のセレーネ。母親そっくりの銀髪と、父親の金の瞳を受け継いだ、愛らしいΩの女の子だ。

 兄妹が、花畑の中を駆け回る姿を、カイロスとリエルはベンチに座って穏やかに見守っていた。
 カイロスは、隣に座るリエルの肩を優しく抱き寄せる。
「……平和だな」
 ぽつりと呟かれた言葉に、リエルはこくりと頷き、その肩に頭を預けた。
「はい。とても、幸せです」

 カイロスもまた、変わった。
 皇帝としての威厳や冷徹な判断力はそのままに、その内にはリエルという光を得たことによる温かさと慈愛が満ちていた。かつての孤独な影は、もうどこにもない。

「リエル」
 カイロスが、愛おしそうに番の名を呼ぶ。
「ん?」
「お前と出会えて、本当に良かった」
 それは、何万回となく交わされてきた言葉。でも、聞くたびにリエルの心は温かくなる。
「僕もです、カイロス様。あなたが見つけてくださらなければ、僕はきっと、今頃……」
「過去の話はするな」
 カイロスはリエルの言葉を遮ると、その唇を優しく塞いだ。
 白い花々の香りと、麗らかな日差しに包まれて、二人は穏やかなキスを交わす。

 絶望の淵から始まった、偽りの婚礼。
 それは、運命という名の奇跡によって、真実の愛へと変わった。
 大陸最強と謳われた皇帝は、たった一人の番を得て、本当の意味で最強になった。

 家族を見つめるカイロスとリエルの穏やかで幸せに満ちた瞳。
 光差す庭園に響く子供たちの笑い声。
 これは、誰もがひれ伏す最強の番(つがい)が紡いだ、愛と奇跡の物語。
 そして、その幸せな日々は、これからも永遠に続いていく。
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