3 / 5
第2話「冷徹なアルファと偽りの誓い」
しおりを挟む
騎士団本部の廊下は、重厚な石の壁と高い天井に囲まれ、歩くたびに冷たい靴音が規則正しく響き渡っていた。
窓から差し込む青白い光が、壁に等間隔で飾られた磨き上げられた銀の甲冑を照らし出し、鋭い反射光を床に落としていた。
ルミナスは案内役の騎士の後ろを歩きながら、胃の底に重い鉛を飲み込んだような感覚に耐えていた。
空気そのものが緊張感で張り詰めており、呼吸をするだけで肺が凍りつくように冷たかった。
大きな樫の木の扉の前に到着すると、案内役の騎士が短く二度ノックをした。
中から低く、しかし驚くほどよく通る声が響いた。
入室を促すその声だけで、ルミナスの背筋にぞくりとした悪寒が走った。
扉が開かれ、ルミナスは足を踏み入れた。
執務室の中は装飾が極端に少なく、冷たいほどに整頓されていた。
巨大なマホガニーの執務机の奥で、数枚の書類に目を通していた男が静かに顔を上げた。
レオンハルト・ヴァン・シュトラウス。
広場の魔力水晶で見た映像とは比べ物にならないほど、本物が放つ威圧感は圧倒的だった。
彼が息をするだけで、部屋の空気が彼を中心に渦を巻いているように錯覚する。
金色の瞳がルミナスの全身を値踏みするように冷たく射抜いた。
「君が、ルミナス・アステリアか」
レオンハルトの声は氷を砕いたように冷たく、感情の起伏が一切感じられなかった。
ルミナスは無意識に後ずさりそうになる足に力を込め、姿勢を正した。
「はい。通信魔術師として推薦を受けました」
ルミナスが静かに答えると、レオンハルトは手に持っていた羽ペンを机に置き、深く椅子に寄りかかった。
彼から微かに漂うのは、凍てつく冬の夜の森を思わせる、アルファ特有の鋭く清冽な香りだった。
ルミナスは事前に通常の三倍の抑制薬を飲んできたため、自身の香りは完全に抑え込まれているはずだったが、それでも本能的な恐怖で指先が震えそうになった。
「君の経歴は調べさせてもらった。没落したアステリア家の生き残りであり、現在は王都の裏通りでいかがわしい仕事を引き受けているそうだな。魔力解析の腕は確かだと聞いている」
レオンハルトは机の上に置かれた調査報告書を指先で弾きながら言った。
「私の技術は、迷宮の奥底からでも通信を繋ぐことができます。それだけは保証します」
ルミナスは声の震えを隠し、まっすぐにレオンハルトの金色の瞳を見つめ返した。
怯えを見せれば、すぐにでも切り捨てられると感じたからだ。
レオンハルトの目がわずかに細められた。
「頼もしい言葉だ。だが、私の求めている条件は通信の技術だけではない。君はあの契約書の内容を理解してここに来たのだろうな」
レオンハルトの視線が、机の中央に置かれた分厚い羊皮紙の束に向けられた。
「偽装結婚の件ですね。理解しています。ですが、なぜそこまで周りくどい方法をとる必要があるのですか」
ルミナスが問いかけると、レオンハルトの整った顔に微かな嫌悪の色が浮かんだ。
「私は、アルファとしての本能や運命などという不確かなものを一切信用していない。特にオメガが発するあの甘い毒のような匂いは、人の理性を奪い、組織を狂わせる。だが、私が騎士団長という立場にいる限り、王家や貴族どもからオメガとの政略結婚を執拗に押し付けられる。今回の迷宮攻略を機に、その煩わしい干渉を完全に断ち切る必要があった」
レオンハルトの言葉には、過去の深い傷を思わせる冷たい怒りが滲んでいた。
「だから、家柄が没落していて誰の干渉も受けず、私が最も安全だと判断できるベータの男を伴侶として登録する。それだけのことだ」
ルミナスは息を呑んだ。
レオンハルトはオメガを心底憎悪している。
もし自分が隠れオメガだと知られれば、ただの契約違反では済まないだろう。
首の皮一枚で繋がっているような恐怖がルミナスを襲ったが、彼に引き返す道はすでになかった。
「迷宮では私の側に常についてもらう。危険な魔物や瘴気が溢れる深層で、ただの雇われ魔術師では騎士団の特別保護対象に指定できない。私の配偶者という身分を与えれば、いかなる規則も飛び越えて君を私の手元で守り、通信を継続させることができる」
レオンハルトは立ち上がり、ゆっくりとした足取りでルミナスの目の前まで歩み寄った。
見上げるほどの長身から見下ろされ、ルミナスは威圧感で息が詰まりそうになった。
「これはビジネスだ、ルミナス。君には莫大な報酬と、安全な居場所を約束する。その代わり、君の命と魔力は迷宮攻略が終わるまで私が完全に管理する。私に従えるか」
差し出された契約書と、インクを含んだ冷たい銀の羽ペン。
ルミナスはためらうことなくペンを受け取った。
羊皮紙に触れる手がかすかに冷たかったが、躊躇いは見せなかった。
紙の上を滑るペンの擦れる音が、静寂な部屋に異様に大きく響いた。
「私の技術のすべてを、あなたのために使います」
署名を終えたルミナスがペンを置くと、レオンハルトは感情の読めない瞳でそのサインを見つめた。
「よろしい。明日から君は私の屋敷に移れ。出発は三日後だ」
それだけを告げると、レオンハルトは再び執務机に戻り、ルミナスへの興味を完全に失ったかのように書類に目を落とした。
二人の間に横たわるのは、紙切れ一枚の冷ややかな契約だけだった。
愛も情も存在しない。
ルミナスにとっては、それこそが望ましい関係だった。
距離が近くなればなるほど、自分の秘密が露呈する危険が高まるからだ。
***
部屋を退出したルミナスは、重い扉が背後で閉まった瞬間に小さく息を吐き出した。
手のひらにはじっとりと冷たい汗が滲んでいた。
圧倒的な力を持つアルファの隣で、自らを偽りながら迷宮の奥深くへと足を踏み入れる。
その想像を絶する重圧に、ルミナスは壁に手をついて少しの間だけ目を閉じた。
どれほどの危険が待っていようとも、生き延びて借金を返し、本当の自由を手に入れる。
その強い決意だけが、彼を前へと突き動かしていた。
窓から差し込む青白い光が、壁に等間隔で飾られた磨き上げられた銀の甲冑を照らし出し、鋭い反射光を床に落としていた。
ルミナスは案内役の騎士の後ろを歩きながら、胃の底に重い鉛を飲み込んだような感覚に耐えていた。
空気そのものが緊張感で張り詰めており、呼吸をするだけで肺が凍りつくように冷たかった。
大きな樫の木の扉の前に到着すると、案内役の騎士が短く二度ノックをした。
中から低く、しかし驚くほどよく通る声が響いた。
入室を促すその声だけで、ルミナスの背筋にぞくりとした悪寒が走った。
扉が開かれ、ルミナスは足を踏み入れた。
執務室の中は装飾が極端に少なく、冷たいほどに整頓されていた。
巨大なマホガニーの執務机の奥で、数枚の書類に目を通していた男が静かに顔を上げた。
レオンハルト・ヴァン・シュトラウス。
広場の魔力水晶で見た映像とは比べ物にならないほど、本物が放つ威圧感は圧倒的だった。
彼が息をするだけで、部屋の空気が彼を中心に渦を巻いているように錯覚する。
金色の瞳がルミナスの全身を値踏みするように冷たく射抜いた。
「君が、ルミナス・アステリアか」
レオンハルトの声は氷を砕いたように冷たく、感情の起伏が一切感じられなかった。
ルミナスは無意識に後ずさりそうになる足に力を込め、姿勢を正した。
「はい。通信魔術師として推薦を受けました」
ルミナスが静かに答えると、レオンハルトは手に持っていた羽ペンを机に置き、深く椅子に寄りかかった。
彼から微かに漂うのは、凍てつく冬の夜の森を思わせる、アルファ特有の鋭く清冽な香りだった。
ルミナスは事前に通常の三倍の抑制薬を飲んできたため、自身の香りは完全に抑え込まれているはずだったが、それでも本能的な恐怖で指先が震えそうになった。
「君の経歴は調べさせてもらった。没落したアステリア家の生き残りであり、現在は王都の裏通りでいかがわしい仕事を引き受けているそうだな。魔力解析の腕は確かだと聞いている」
レオンハルトは机の上に置かれた調査報告書を指先で弾きながら言った。
「私の技術は、迷宮の奥底からでも通信を繋ぐことができます。それだけは保証します」
ルミナスは声の震えを隠し、まっすぐにレオンハルトの金色の瞳を見つめ返した。
怯えを見せれば、すぐにでも切り捨てられると感じたからだ。
レオンハルトの目がわずかに細められた。
「頼もしい言葉だ。だが、私の求めている条件は通信の技術だけではない。君はあの契約書の内容を理解してここに来たのだろうな」
レオンハルトの視線が、机の中央に置かれた分厚い羊皮紙の束に向けられた。
「偽装結婚の件ですね。理解しています。ですが、なぜそこまで周りくどい方法をとる必要があるのですか」
ルミナスが問いかけると、レオンハルトの整った顔に微かな嫌悪の色が浮かんだ。
「私は、アルファとしての本能や運命などという不確かなものを一切信用していない。特にオメガが発するあの甘い毒のような匂いは、人の理性を奪い、組織を狂わせる。だが、私が騎士団長という立場にいる限り、王家や貴族どもからオメガとの政略結婚を執拗に押し付けられる。今回の迷宮攻略を機に、その煩わしい干渉を完全に断ち切る必要があった」
レオンハルトの言葉には、過去の深い傷を思わせる冷たい怒りが滲んでいた。
「だから、家柄が没落していて誰の干渉も受けず、私が最も安全だと判断できるベータの男を伴侶として登録する。それだけのことだ」
ルミナスは息を呑んだ。
レオンハルトはオメガを心底憎悪している。
もし自分が隠れオメガだと知られれば、ただの契約違反では済まないだろう。
首の皮一枚で繋がっているような恐怖がルミナスを襲ったが、彼に引き返す道はすでになかった。
「迷宮では私の側に常についてもらう。危険な魔物や瘴気が溢れる深層で、ただの雇われ魔術師では騎士団の特別保護対象に指定できない。私の配偶者という身分を与えれば、いかなる規則も飛び越えて君を私の手元で守り、通信を継続させることができる」
レオンハルトは立ち上がり、ゆっくりとした足取りでルミナスの目の前まで歩み寄った。
見上げるほどの長身から見下ろされ、ルミナスは威圧感で息が詰まりそうになった。
「これはビジネスだ、ルミナス。君には莫大な報酬と、安全な居場所を約束する。その代わり、君の命と魔力は迷宮攻略が終わるまで私が完全に管理する。私に従えるか」
差し出された契約書と、インクを含んだ冷たい銀の羽ペン。
ルミナスはためらうことなくペンを受け取った。
羊皮紙に触れる手がかすかに冷たかったが、躊躇いは見せなかった。
紙の上を滑るペンの擦れる音が、静寂な部屋に異様に大きく響いた。
「私の技術のすべてを、あなたのために使います」
署名を終えたルミナスがペンを置くと、レオンハルトは感情の読めない瞳でそのサインを見つめた。
「よろしい。明日から君は私の屋敷に移れ。出発は三日後だ」
それだけを告げると、レオンハルトは再び執務机に戻り、ルミナスへの興味を完全に失ったかのように書類に目を落とした。
二人の間に横たわるのは、紙切れ一枚の冷ややかな契約だけだった。
愛も情も存在しない。
ルミナスにとっては、それこそが望ましい関係だった。
距離が近くなればなるほど、自分の秘密が露呈する危険が高まるからだ。
***
部屋を退出したルミナスは、重い扉が背後で閉まった瞬間に小さく息を吐き出した。
手のひらにはじっとりと冷たい汗が滲んでいた。
圧倒的な力を持つアルファの隣で、自らを偽りながら迷宮の奥深くへと足を踏み入れる。
その想像を絶する重圧に、ルミナスは壁に手をついて少しの間だけ目を閉じた。
どれほどの危険が待っていようとも、生き延びて借金を返し、本当の自由を手に入れる。
その強い決意だけが、彼を前へと突き動かしていた。
12
あなたにおすすめの小説
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
オメガだと隠して地味なベータとして生きてきた俺が、なぜか学園最強で傲慢な次期公爵様と『運命の番』になって、強制的にペアを組まされる羽目に
水凪しおん
BL
この世界では、性は三つに分かたれる。支配者たるアルファ、それに庇護されるオメガ、そして大多数を占めるベータ。
誇り高き魔法使いユキは、オメガという性を隠し、ベータとして魔法学園の門をくぐった。誰にも見下されず、己の力だけで認められるために。
しかし彼の平穏は、一人の男との最悪の出会いによって打ち砕かれる。
学園の頂点に君臨する、傲慢不遜なアルファ――カイ・フォン・エーレンベルク。
反発しあう二人が模擬戦で激突したその瞬間、伝説の証『運命の印』が彼らの首筋に発現する。
それは、決して抗うことのできない魂の繋がり、『運命の番』の証だった。
「お前は俺の所有物だ」
傲慢に告げるカイと、それに激しく反発するユキ。
強制的にペアを組まされた学園対抗トーナメント『双星杯』を舞台に、二人の歯車は軋みを上げながらも回り出す。
孤独を隠す最強のアルファと、運命に抗う気高きオメガ。
これは、反発しあう二つの魂がやがて唯一無二のパートナーとなり、世界の理をも変える絆を結ぶまでの、愛と戦いの物語。
隠れオメガの整備士は自由になりたい。なのに暴走する最強騎士を身体を張って止めたら、運命の番だとバレて過保護な専属契約を結ばされました
水凪しおん
BL
※オメガバース設定。激しい戦闘描写や、執着攻めによるマーキング描写、軽度の性的な接触の描写がありますので、15歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。
汚染された惑星を浄化する生体兵器『機装(ギア)』。
その搭乗者は優れた能力を持つ『アルファ』に限られ、彼らの精神を安定させる鎮静剤として『オメガ』が存在する世界。
整備士のエリアンは、オメガであることを隠し、ベータと偽って軍の最前線で働いていた。
オメガは道具のように扱われるこの社会で、自由を守るための必死の嘘だった。
だがある日、軍最強のエリートパイロット・クレイドの機装が暴走する事故に遭遇する。
死を覚悟して止めに入ったエリアンだったが、暴走する機体はなぜか彼にだけ反応し、沈静化した。
それは、隠していたオメガのフェロモンが、クレイドと強烈な『共鳴』を起こした瞬間だった。
「見つけた。俺の対になる存在を」
正体がバレたと戦慄するエリアンに対し、冷徹なはずのクレイドが向けたのは、処罰ではなく執着に満ちた熱い視線で……?
孤独なエリート騎士×身分を隠した健気な整備士。
星の命運と本能が交錯する、近未来SFオメガバース!
虐げられΩは冷酷公爵に買われるが、実は最強の浄化能力者で運命の番でした
水凪しおん
BL
貧しい村で育った隠れオメガのリアム。彼の運命は、冷酷無比と噂される『銀薔薇の公爵』アシュレイと出会ったことで、激しく動き出す。
強大な魔力の呪いに苦しむ公爵にとって、リアムの持つ不思議な『浄化』の力は唯一の希望だった。道具として屋敷に囚われたリアムだったが、氷の仮面に隠された公爵の孤独と優しさに触れるうち、抗いがたい絆が芽生え始める。
「お前は、俺だけのものだ」
これは、身分も性も、運命さえも乗り越えていく、不器用で一途な二人の成り上がりロマンス。惹かれ合う魂が、やがて世界の理をも変える奇跡を紡ぎ出す――。
繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました
こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。毎日18時50分公開予定です
捨てられΩの癒やしの薬草、呪いで苦しむ最強騎士団長を救ったら、いつの間にか胃袋も心も掴んで番にされていました
水凪しおん
BL
孤独と絶望を癒やす、運命の愛の物語。
人里離れた森の奥、青年アレンは不思議な「浄化の力」を持ち、薬草を育てながらひっそりと暮らしていた。その力を気味悪がられ、人を避けるように生きてきた彼の前に、ある嵐の夜、血まみれの男が現れる。
男の名はカイゼル。「黒き猛虎」と敵国から恐れられる、無敗の騎士団長。しかし彼は、戦場で受けた呪いにより、αの本能を制御できず、狂おしい発作に身を焼かれていた。
記憶を失ったふりをしてアレンの元に留まるカイゼル。アレンの作る薬草茶が、野菜スープが、そして彼自身の存在が、カイゼルの荒れ狂う魂を鎮めていく唯一の癒やしだと気づいた時、その想いは激しい執着と独占欲へ変わる。
「お前がいなければ、俺は正気を保てない」
やがて明かされる真実、迫りくる呪いの脅威。臆病だった青年は、愛する人を救うため、その身に宿る力のすべてを捧げることを決意する。
呪いが解けた時、二人は真の番となる。孤独だった魂が寄り添い、狂おしいほどの愛を注ぎ合う、ファンタジック・ラブストーリー。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
塩対応の同室αが実は俺の番を狙っていた
雪兎
BL
あらすじ
全寮制の名門学園に入学したΩの俺は、入寮初日から最悪の同室相手に当たった。
相手は学年でも有名な優等生α。
成績優秀、運動もできる、顔もいい。なのに——
めちゃくちゃ塩対応。
挨拶しても「……ああ」。
話しかけても「別に」。
距離も近づけないし、なぜか妙に警戒されている気がする。
(俺、そんなに嫌われてる……?)
同室なのに会話は最低限。
むしろ避けられている気さえある。
けれどある日、発情期トラブルで倒れた俺を助けてくれたのは、
その塩対応αだった。
しかも普段とは違い、必死な顔で言われる。
「……他のαに近づくな」
「お前は俺の……」
そこで言葉を飲み込む彼。
それ以来、少しずつ態度が変わり始める。
距離は相変わらず近くない。
口数も少ない。
だけど――
他のαが近づくと、さりげなく間に入る。
発情期が近いと察すると、さりげなく世話を焼く。
そして時々、独占欲を隠しきれない視線。
実は彼はずっと前から知っていた。
俺が、
自分の運命の番かもしれないΩだということを。
だからこそ距離を取っていた。
触れたら、もう止まれなくなるから。
だけど同室生活の中で、
少しずつ、確実に距離は変わっていく。
塩対応の裏に隠されていたのは――
重すぎるほどの独占欲だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる