破滅フラグ回避のため冷酷公爵から逃げたい悪役令息(勘違い)ですが、実は運命の番らしくて過保護な溺愛から逃げられません

水凪しおん

文字の大きさ
2 / 23

第1話:悲劇の始まりは乙女ゲームの世界か!?

しおりを挟む
 ガツン、と鈍い衝撃と共に、前世の記憶が唐突に蘇った。
 ここは、俺が死ぬ間際にプレイしていた乙女ゲーム『星屑のラプソディ』の世界だ。そして俺は、ゲームの悪役令嬢エリアーナ・フォン・ヴァイスの弟、アレン・フォン・ヴァイスに転生してしまったらしい。
「……最悪だ」
 豪華な天蓋付きベッドの上で、俺は頭を抱えた。
 アレン・フォン・ヴァイス。彼はゲーム本編において、モブキャラ同然の存在だ。しかし、彼が所属するヴァイス家は違う。姉であるエリアーナは、ゲームのヒロインを執拗にいじめ抜き、最終的には攻略対象である王子や公爵の手によって、家ごと断罪される運命にあるのだ。絵に描いたような悪役令嬢である。
 つまり、このままでは俺も姉に巻き込まれて破滅エンドまっしぐら。冗談じゃない。交通事故で一度死んだと思ったら、二度目の人生は断頭台行きなんて、あんまりな仕打ちだ。
「絶対に回避してみせる、破滅フラグ……!」
 俺は固く拳を握りしめた。幸い、今の俺はまだ八歳。ゲームの舞台である王立学園に入学するまで、まだ時間はある。
 破滅回避計画、その一。まずは諸悪の根源、姉エリアーナとの関係を清算することだ。彼女の悪事に加担していると見なされれば、連座は免れない。ならば、今のうちから徹底的に距離を置き、俺は姉の味方ではないと周囲にアピールする必要がある。
「アレン、どうしたの? お顔の色が悪いわ」
 扉の向こうから、心配そうな声が聞こえた。声の主は、間違いなく姉エリアーナだ。ゲームのスチルで見た通りの、蜂蜜色の髪に紫色の瞳を持つ、人形のように美しい少女。これが、数年後にはヒロインをいびり倒す悪役令嬢になるのか。
「……別に、なんでもありません」
 俺は前世の記憶を総動員して、出来る限り冷たい声を作った。ベッドから降り、姉の顔を見ようともせず、背を向ける。
「アレン? ねえ、どうしてこっちを向いてくれないの?」
 戸惑ったような姉の声が背中に突き刺さる。心が少しだけ痛んだが、これも生き残るためだ。心を鬼にするんだ、俺。
「あなたに関わられるのは迷惑です、姉上。僕に構わないでください」
「なっ……!?」
 エリアーナが息を呑む気配がした。俺は振り返らない。きっと今頃、鬼のような形相で俺を睨んでいるに違いない。これでいい。これで、俺があの性悪な悪役令嬢とは違うと、使用人たちにも伝わるはずだ。
 しかし、俺の予想に反して、背後から聞こえてきたのは小さな嗚咽だった。
「ひっく……あ、アレンに、嫌われちゃった……」
 え、泣いてる? なんで?
 思わず振り返ると、そこには大きな瞳からぽろぽろと涙をこぼす姉の姿があった。俺の知る、強気で意地悪な悪役令嬢の姿とは似ても似つかない。
「姉上……?」
「わ、私のこと、嫌いにならないで……! アレンのためなら、私、なんだってするから……!」
 しゃくりあげながら訴える姉に、俺は完全に混乱していた。なんだこの状況は。ゲームのシナリオと違う。もしかして、俺の冷たい態度が、悪役令嬢の新たな虐待スイッチを入れてしまったのだろうか。
 そうだ、きっとそうだ。俺のせいで、新たな破滅フラグが立ってしまったに違いない。
「……っ、うるさいです! あっちへ行ってください!」
 パニックになった俺は、それだけ言い残して部屋を飛び出した。後ろで姉の泣き声が大きくなった気がしたが、もうどうすることもできない。
 こうして、俺の波乱に満ちた破滅回避計画は、初日から盛大にこじれることになった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

すべてはあなたを守るため

高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです

ドジで惨殺されそうな悪役の僕、平穏と領地を守ろうとしたら暴虐だったはずの領主様に迫られている気がする……僕がいらないなら詰め寄らないでくれ!

迷路を跳ぶ狐
BL
いつもドジで、今日もお仕えする領主様に怒鳴られていた僕。自分が、ゲームの世界に悪役として転生していることに気づいた。このままだと、この領地は惨事が起こる。けれど、選択肢を間違えば、領地は助かっても王国が潰れる。そんな未来が怖くて動き出した僕だけど、すでに領地も王城も策略だらけ。その上、冷酷だったはずの領主様は、やけに僕との距離が近くて……僕は平穏が欲しいだけなのに! 僕のこと、いらないんじゃなかったの!? 惨劇が怖いので先に城を守りましょう!

つまみ食いしたら死にそうになりました なぜか王族と親密に…毒を食べただけですけど

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
私は貧しい家に生まれた お母さんが作ってくれたパイを始めて食べて食の楽しさを知った メイドとして働くことになれて少しすると美味しそうなパイが出される 王妃様への食事だと分かっていても食べたかった そんなパイに手を出したが最後、私は王族に気に入られるようになってしまった 私はつまみ食いしただけなんですけど…

前世が俺の友人で、いまだに俺のことが好きだって本当ですか

Bee
BL
半年前に別れた元恋人だった男の結婚式で、ユウジはそこではじめて二股をかけられていたことを知る。8年も一緒にいた相手に裏切られていたことを知り、ショックを受けたユウジは式場を飛び出してしまう。 無我夢中で車を走らせて、気がつくとユウジは見知らぬ場所にいることに気がつく。そこはまるで天国のようで、そばには7年前に死んだ友人の黒木が。黒木はユウジのことが好きだったと言い出して―― 最初は主人公が別れた男の結婚式に参加しているところから始まります。 死んだ友人との再会と、その友人の生まれ変わりと思われる青年との出会いへと話が続きます。 生まれ変わり(?)21歳大学生×きれいめな48歳おっさんの話です。 ※軽い性的表現あり 短編から長編に変更しています

【完結】運命なんかに勝てるわけがない

BL
オメガである笹野二葉《ささのふたば》はアルファの一ノ瀬直隆《いちのせなおたか》と友情を育めていると思っていた。同期の中でも親しく、バース性を気にせず付き合える仲だったはず。ところが目を覚ますと事後。「マジか⋯」いやいやいや。俺たちはそういう仲じゃないだろ?ということで、二葉はあくまでも親友の立場を貫こうとするが⋯アルファの執着を甘くみちゃいけないよ。 逃さないα✕怖がりなΩのほのぼのオメガバース/ラブコメです。

沈黙のΩ、冷血宰相に拾われて溺愛されました

ホワイトヴァイス
BL
声を奪われ、競売にかけられたΩ《オメガ》――ノア。 落札したのは、冷血と呼ばれる宰相アルマン・ヴァルナティス。 “番契約”を偽装した取引から始まったふたりの関係は、 やがて国を揺るがす“真実”へとつながっていく。 喋れぬΩと、血を信じない宰相。 ただの契約だったはずの絆が、 互いの傷と孤独を少しずつ融かしていく。 だが、王都の夜に潜む副宰相ルシアンの影が、 彼らの「嘘」を暴こうとしていた――。 沈黙が祈りに変わるとき、 血の支配が終わりを告げ、 “番”の意味が書き換えられる。 冷血宰相×沈黙のΩ、 偽りの契約から始まる救済と革命の物語。

オメガはオメガらしく生きろなんて耐えられない

子犬一 はぁて
BL
「オメガはオメガらしく生きろ」 家を追われオメガ寮で育ったΩは、見合いの席で名家の年上αに身請けされる。 無骨だが優しく、Ωとしてではなく一人の人間として扱ってくれる彼に初めて恋をした。 しかし幸せな日々は突然終わり、二人は別れることになる。 5年後、雪の夜。彼と再会する。 「もう離さない」 再び抱きしめられたら、僕はもうこの人の傍にいることが自分の幸せなんだと気づいた。 彼は温かい手のひらを持つ人だった。 身分差×年上アルファ×溺愛再会BL短編。

この世界で、君だけが平民だなんて嘘だろ?

春夜夢
BL
魔導学園で最下層の平民としてひっそり生きていた少年・リオ。 だがある日、最上位貴族の美貌と力を併せ持つ生徒会長・ユリウスに助けられ、 なぜか「俺の世話係になれ」と命じられる。 以来、リオの生活は一変―― 豪華な寮部屋、執事並みの手当、異常なまでの過保護、 さらには「他の男に触られるな」などと謎の制限まで!? 「俺のこと、何だと思ってるんですか……」 「……可愛いと思ってる」 それって、“貴族と平民”の距離感ですか? 不器用な最上級貴族×平民育ちの天才少年 ――鈍感すれ違い×じれじれ甘やかし全開の、王道学園BL、開幕!

処理中です...