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第11話:優しい姉の涙
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シリウスの秘密を知った翌日、俺の元に実家から一通の手紙が届いた。
差出人は、父から。その内容は、俺を動揺させるには十分すぎるものだった。
『エリアーナが病に倒れた。ここ数日、ずっと部屋に閉じこもり、食事もろくに取っていない。原因は分からないが、しきりにお前の名を呼んでいる。一度、顔を見せに帰ってきてはくれないか』
姉さんが、病気で倒れた?
俺の頭は混乱した。ゲームの知識では、悪役令嬢エリアーナは健康そのもので、病弱な設定などどこにもなかったはずだ。むしろ、ヒロインをいじめるために、元気に走り回っていたぐらいだ。
(何かの間違いじゃないのか? それとも、これも新しい破滅フラグ……?)
しかし、手紙の切迫した様子から、ただ事ではないことだけは伝わってくる。
俺はシリウスに事情を話し、一日だけ実家に戻る許可をもらった。彼は何も言わず、「気をつけて行け」とだけ言って、馬車を用意してくれた。
久しぶりに帰ったヴァイス家の屋敷は、どこか静まり返っているように感じた。出迎えてくれた両親も、心なしか疲れているように見える。
俺はすぐに姉の部屋へと向かった。
「姉上、アレンです」
ノックをしても、中から返事はない。俺は意を決して、扉を開けた。
薄暗い部屋のベッドの上で、姉のエリアーナが体を丸めて横たわっていた。カーテンが閉め切られ、部屋の空気は淀んでいる。
「姉上……?」
俺が近づくと、彼女はゆっくりと顔を上げた。その顔を見て、俺は息を呑んだ。
蜂蜜色の髪は艶を失い、頬はこけ、紫色の瞳は虚ろに濁っている。俺の知る、気高くて美しい姉の姿はどこにもなかった。
「……アレン……? 夢……?」
か細い声で呟く姉に、俺は胸が締め付けられるような痛みを感じた。
「夢じゃありません。俺です、アレンです」
俺がベッドのそばに座ると、エリアーナは震える手を伸ばし、そっと俺の頬に触れた。その手は、氷のように冷たかった。
「アレン……どうして……? 私、あなたに何かしてしまった……?」
その瞳から、ぽろり、と涙が一粒こぼれ落ちた。
「あなたが、私を嫌いになったと思って……! あなたに冷たくされてから、胸が苦しくて、何も喉を通らなくて……!」
次から次へと溢れ出す涙と共に語られたのは、彼女の悲痛な想いだった。
悪役令嬢だと思っていた姉は、ただ、弟に嫌われたと思い込み、そのショックで心を病んでしまっていたのだ。
俺の、せいだ。
俺が、破滅フラグを回避するためだなんて自分勝手な理由で、彼女を一方的に突き放したから。俺の軽率な行動が、心優しい姉を、こんなにも深く傷つけていたのだ。
ゲームの知識? 破滅フラグ? そんなもの、この現実で苦しんでいる姉の前では、何の意味も持たない。
「ごめんなさい……姉さん……ごめんなさい……!」
俺はエリアーナの冷たい手を握りしめ、ただひたすらに謝った。罪悪感で、胸が張り裂けそうだった。俺は、とんでもない間違いを犯していたのかもしれない。
差出人は、父から。その内容は、俺を動揺させるには十分すぎるものだった。
『エリアーナが病に倒れた。ここ数日、ずっと部屋に閉じこもり、食事もろくに取っていない。原因は分からないが、しきりにお前の名を呼んでいる。一度、顔を見せに帰ってきてはくれないか』
姉さんが、病気で倒れた?
俺の頭は混乱した。ゲームの知識では、悪役令嬢エリアーナは健康そのもので、病弱な設定などどこにもなかったはずだ。むしろ、ヒロインをいじめるために、元気に走り回っていたぐらいだ。
(何かの間違いじゃないのか? それとも、これも新しい破滅フラグ……?)
しかし、手紙の切迫した様子から、ただ事ではないことだけは伝わってくる。
俺はシリウスに事情を話し、一日だけ実家に戻る許可をもらった。彼は何も言わず、「気をつけて行け」とだけ言って、馬車を用意してくれた。
久しぶりに帰ったヴァイス家の屋敷は、どこか静まり返っているように感じた。出迎えてくれた両親も、心なしか疲れているように見える。
俺はすぐに姉の部屋へと向かった。
「姉上、アレンです」
ノックをしても、中から返事はない。俺は意を決して、扉を開けた。
薄暗い部屋のベッドの上で、姉のエリアーナが体を丸めて横たわっていた。カーテンが閉め切られ、部屋の空気は淀んでいる。
「姉上……?」
俺が近づくと、彼女はゆっくりと顔を上げた。その顔を見て、俺は息を呑んだ。
蜂蜜色の髪は艶を失い、頬はこけ、紫色の瞳は虚ろに濁っている。俺の知る、気高くて美しい姉の姿はどこにもなかった。
「……アレン……? 夢……?」
か細い声で呟く姉に、俺は胸が締め付けられるような痛みを感じた。
「夢じゃありません。俺です、アレンです」
俺がベッドのそばに座ると、エリアーナは震える手を伸ばし、そっと俺の頬に触れた。その手は、氷のように冷たかった。
「アレン……どうして……? 私、あなたに何かしてしまった……?」
その瞳から、ぽろり、と涙が一粒こぼれ落ちた。
「あなたが、私を嫌いになったと思って……! あなたに冷たくされてから、胸が苦しくて、何も喉を通らなくて……!」
次から次へと溢れ出す涙と共に語られたのは、彼女の悲痛な想いだった。
悪役令嬢だと思っていた姉は、ただ、弟に嫌われたと思い込み、そのショックで心を病んでしまっていたのだ。
俺の、せいだ。
俺が、破滅フラグを回避するためだなんて自分勝手な理由で、彼女を一方的に突き放したから。俺の軽率な行動が、心優しい姉を、こんなにも深く傷つけていたのだ。
ゲームの知識? 破滅フラグ? そんなもの、この現実で苦しんでいる姉の前では、何の意味も持たない。
「ごめんなさい……姉さん……ごめんなさい……!」
俺はエリアーナの冷たい手を握りしめ、ただひたすらに謝った。罪悪感で、胸が張り裂けそうだった。俺は、とんでもない間違いを犯していたのかもしれない。
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