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第8話「旅の始まりと王国の影」
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レイルから分け与えられた魔力は、カイルの内に宿り、黒い石のペンダントとなって胸元で静かな光を放っていた。それはレイルの守護の証であり、二人の絆の象徴でもあった。
旅の準備はすぐに整った。カイルは城で見つけた丈夫な服とブーツを身に着け、保存食と水、そして薬草を鞄に詰めた。
「行ってきます、レイルさん」
城の門の前で、カイルは振り返る。
「……ああ」
玉座から動けないレイルは、ただ短く応えるだけだったが、その赤い瞳には心配の色が滲んでいた。
「すぐに一つ目を持って帰ってきますから。待っていてください」
カイルは力強く頷くと、今度こそ森の外へと一歩を踏み出した。
レイルの守護は絶大だった。以前はカイルを避けていただけの魔物たちが、今はペンダントの魔力を感じ取るや否や、恐れおののいて道を空ける。カイルは初めて、魔の森を恐れることなく歩くことができた。
森を抜けると、目の前には広大な平原が広がっていた。追放された時には絶望の色しか見えなかった世界が、今は希望に満ちて輝いて見える。
「まずは、一番近い『浄化の泉』へ行こう」
カイルは古文書の記憶を頼りに、北の方角へと歩き出した。
レイルを救いたいという強い目的が、カイルの心を支えていた。そして、胸元で温もりを放つペンダントが、一人ではないと教えてくれる。カイルの足取りは、驚くほど軽やかだった。
***
一方、その頃。カイルが追放された王国では、異変が起きていた。
聖女リリアンナの力が、日に日に弱まっていたのだ。
彼女の奇跡の力は、人々を癒し、土地を豊かにする源として、王国の安寧を支えていた。しかし最近では、彼女が祈りを捧げても、作物の実りは悪く、病人の治りも遅くなっていた。
「聖女様、近頃ご無理をなされているのでは?」
側近たちの心配そうな声に、リリアンナは笑顔で「大丈夫ですわ」と答えながらも、内心では激しい焦りに駆られていた。
誰も知らないことだが、彼女の聖女としての力は、彼女自身のものではない。それは、王家の宝物庫に眠る、ある古代の呪具によって生み出された偽りの力だった。
そしてその呪具は、遠く魔の森に封じられた魔王レイルの「悲しみの呪縛」から漏れ出す魔力を、少しずつ搾取することで奇跡を起こしていたのだ。
そして、カイルが持っていた『呪物鑑定』スキルは、その呪具の正体を見抜く可能性があった。だからこそ、リリアンナは婚約者であったカイルを、無実の罪を着せてまで追放する必要があったのだ。
力の衰えは、魔王の呪いに何らかの変化が起きていることを示唆していた。
「まさか……あの男、まだ生きているというの……?」
リリアンナは苛立たしげに扇子を握りしめる。
彼女の背後には、その力を利用して権力を握ろうとする宰相をはじめとした貴族たちの影があった。
「聖女様、ご心配には及びません。万が一、あの忌まわしい追放者が生き延びていたとしても、すぐに対処できるよう、手は打ってあります」
宰相の不気味な笑みが、薄暗い部屋に響く。
カイルの知らないところで、王国の黒い影が、静かに、そして確実に動き始めていた。
旅の準備はすぐに整った。カイルは城で見つけた丈夫な服とブーツを身に着け、保存食と水、そして薬草を鞄に詰めた。
「行ってきます、レイルさん」
城の門の前で、カイルは振り返る。
「……ああ」
玉座から動けないレイルは、ただ短く応えるだけだったが、その赤い瞳には心配の色が滲んでいた。
「すぐに一つ目を持って帰ってきますから。待っていてください」
カイルは力強く頷くと、今度こそ森の外へと一歩を踏み出した。
レイルの守護は絶大だった。以前はカイルを避けていただけの魔物たちが、今はペンダントの魔力を感じ取るや否や、恐れおののいて道を空ける。カイルは初めて、魔の森を恐れることなく歩くことができた。
森を抜けると、目の前には広大な平原が広がっていた。追放された時には絶望の色しか見えなかった世界が、今は希望に満ちて輝いて見える。
「まずは、一番近い『浄化の泉』へ行こう」
カイルは古文書の記憶を頼りに、北の方角へと歩き出した。
レイルを救いたいという強い目的が、カイルの心を支えていた。そして、胸元で温もりを放つペンダントが、一人ではないと教えてくれる。カイルの足取りは、驚くほど軽やかだった。
***
一方、その頃。カイルが追放された王国では、異変が起きていた。
聖女リリアンナの力が、日に日に弱まっていたのだ。
彼女の奇跡の力は、人々を癒し、土地を豊かにする源として、王国の安寧を支えていた。しかし最近では、彼女が祈りを捧げても、作物の実りは悪く、病人の治りも遅くなっていた。
「聖女様、近頃ご無理をなされているのでは?」
側近たちの心配そうな声に、リリアンナは笑顔で「大丈夫ですわ」と答えながらも、内心では激しい焦りに駆られていた。
誰も知らないことだが、彼女の聖女としての力は、彼女自身のものではない。それは、王家の宝物庫に眠る、ある古代の呪具によって生み出された偽りの力だった。
そしてその呪具は、遠く魔の森に封じられた魔王レイルの「悲しみの呪縛」から漏れ出す魔力を、少しずつ搾取することで奇跡を起こしていたのだ。
そして、カイルが持っていた『呪物鑑定』スキルは、その呪具の正体を見抜く可能性があった。だからこそ、リリアンナは婚約者であったカイルを、無実の罪を着せてまで追放する必要があったのだ。
力の衰えは、魔王の呪いに何らかの変化が起きていることを示唆していた。
「まさか……あの男、まだ生きているというの……?」
リリアンナは苛立たしげに扇子を握りしめる。
彼女の背後には、その力を利用して権力を握ろうとする宰相をはじめとした貴族たちの影があった。
「聖女様、ご心配には及びません。万が一、あの忌まわしい追放者が生き延びていたとしても、すぐに対処できるよう、手は打ってあります」
宰相の不気味な笑みが、薄暗い部屋に響く。
カイルの知らないところで、王国の黒い影が、静かに、そして確実に動き始めていた。
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