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第8話「広がる噂と、新たな来訪者」
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カイと結ばれたあの日から僕たちの関係は新しいステージへと進んだ。
隣にいることが当たり前になり手を繋いだり抱きしめ合ったりすることが日常の一部になった。
カイは相変わらず口数が少ないけれど僕を見るその眼差しには隠しきれないほどの愛情が宿っていて、そのたびに僕の胸は温かいもので満たされる。
もふもふな番犬のクロもそんな僕たちの変化を察しているのか二人の間に割り込んでくることはなくなり、少し離れた場所から穏やかな目で見守ってくれている気がした。
そんな穏やかで幸せな日々が続く中僕たちの生活に少しずつ変化の兆しが現れ始めていた。
きっかけは月に一度やってくる行商人のロロさんだった。
ロロさんは恰幅のいい、人のよさそうなおじさんで、僕が作る珍しい野菜や保存食をいつも喜んで買ってくれる。
その代金で僕たちは塩や布、生活に必要な雑貨を手に入れていた。
「いやあ、ミナトさんの作る作物は王都でも大評判ですよ!」
この日もロロさんは荷車に僕の作った野菜を積み込みながら興奮気味に話してくれた。
「特にあのポーションの材料になる薬草!王宮の錬金術師様が『これほど魔力の含有量が多い薬草は見たことがない』と大絶賛でしてね。今までの倍の値段で買い取らせてほしいと!」
「え、本当ですか!?」
どうやら『神の農具』で育てた作物は味や栄養価だけでなく魔力も豊富に含んでいるらしい。
言われてみれば僕の作る野菜を食べ始めてからカイもクロも以前より毛艶が良くなったというか、なんだか活力がみなぎっている気がする。
「野菜の方も貴族の方々の間で『奇跡の野菜』なんて呼ばれてちょっとしたブームになってるんですよ。おかげで私も大儲けさせてもらってます。はっはっは!」
ロロさんは豪快に笑う。
自分の作ったものが遠い王都でそんな風に評価されているなんてなんだか不思議な気分だ。
嬉しい反面少しだけ不安も覚える。
あまり目立ちすぎるのは僕の望むスローライフとはちょっと違う気がするから。
僕のそんな心配をよそに噂はどんどん広がっていった。
ロロさんが帰った数日後今度は近くの村の村長さんが何人かの村人を連れてやってきた。
「ミナトさん、お願いがあるんじゃ!」
村長さんは僕の前に深々と頭を下げた。
「実はわしらの村の畑も最近どうも元気がなくてのう。もしよかったらミナトさんのその不思議な力でわしらの畑にも恵みを与えてはくれんじゃろうか」
話を聞くと村の畑は痩せた土地が多く作物の育ちがあまり良くないらしい。
僕の畑がありえないほどの豊作なのを見て藁にもすがる思いでやってきたのだという。
困っている人を見過ごすことはできない。
僕はカイと相談し村の畑を手伝うことにした。
僕が『神の農具』で土を耕し生命力を与える光を注ぐ。
すると今まで元気のなかった作物の苗が見る見るうちに生き生きと葉を伸ばし始めた。
その光景に村人たちは歓声を上げ神様でも見るような目で僕のことを見ていた。
「おお…!すごい、本当に奇跡じゃ…!」
「ミナト様、ありがとうございます!」
様付けで呼ばれるのは少し気恥ずかしかったけれどみんなが喜んでくれるのは素直に嬉しかった。
お礼にと村で醸造しているという果実酒や手作りのチーズをたくさん持たせてくれた。
この一件で僕の力は「豊穣の奇跡」として近隣の村々にも知れ渡ることになった。
それからというもの僕たちの小屋にはひっきりなしに来訪者が訪れるようになった。
農作物の育て方について教えを請いに来る者、病気の家族のために魔力のこもった薬草を分けてほしいと頼みに来る者、中には僕の力を一目見ようとやってくる物見遊山の者までいた。
僕とカイはできる範囲で彼らの願いに応じてあげた。
カイは人が増えることをあまり快く思っていなかったようだけど僕が「困っている人を助けたい」と言うと何も言わずに僕の護衛に徹してくれた。
彼の存在が僕に変なちょっかいをかけてくる輩への何よりの牽制になっているのは間違いなかった。
辺境の地は僕の農業の力で少しずつ、でも着実に活気づき始めていた。
痩せた土地は豊かな畑に変わり村には笑顔が増えた。
それは僕が望んでいた静かなスローライフとは少し違うかもしれないけれど誰かの役に立てるという喜びは僕の心を温かく満たしてくれた。
けれど光が強くなれば影もまた濃くなる。
僕たちの評判は僕たちが思うよりもずっと遠くまで、そして僕たちが望まない人々の耳にまで届いてしまっていたのだ。
その日僕たちの前に現れたのは今までの村人たちとは明らかに違う豪奢な服に身を包んだ一団だった。
先頭に立つのはいかにも役人といった風情の細い目をした男。
そしてその隣には――僕の記憶にはないけれど、カイがその顔を見た瞬間険しい表情になった派手な装飾の鎧をまとった騎士風の男がいた。
役人風の男は僕を見下すような目で一瞥すると一枚の羊皮紙を広げた。
「貴殿がこの地で奇跡の作物を育てているというミナト殿ですかな?我々はアステル王国より参った調査団である」
その尊大な口ぶりに僕は思わず身構えた。
隣に立つカイの体からピリピリとした闘気が放たれているのが分かる。
「この土地は本来王国が管理する土地である。そこで得られる利益もまた王国に帰属するのが当然の理。よってその『奇跡の畑』の所有権を我々が正式に接収することに決定した」
男は一方的にそう宣言した。
それは僕がカイとそしてクロと一から築き上げてきたこの穏やかな暮らしを根こそぎ奪い去ろうとする冷酷な通告だった。
隣にいることが当たり前になり手を繋いだり抱きしめ合ったりすることが日常の一部になった。
カイは相変わらず口数が少ないけれど僕を見るその眼差しには隠しきれないほどの愛情が宿っていて、そのたびに僕の胸は温かいもので満たされる。
もふもふな番犬のクロもそんな僕たちの変化を察しているのか二人の間に割り込んでくることはなくなり、少し離れた場所から穏やかな目で見守ってくれている気がした。
そんな穏やかで幸せな日々が続く中僕たちの生活に少しずつ変化の兆しが現れ始めていた。
きっかけは月に一度やってくる行商人のロロさんだった。
ロロさんは恰幅のいい、人のよさそうなおじさんで、僕が作る珍しい野菜や保存食をいつも喜んで買ってくれる。
その代金で僕たちは塩や布、生活に必要な雑貨を手に入れていた。
「いやあ、ミナトさんの作る作物は王都でも大評判ですよ!」
この日もロロさんは荷車に僕の作った野菜を積み込みながら興奮気味に話してくれた。
「特にあのポーションの材料になる薬草!王宮の錬金術師様が『これほど魔力の含有量が多い薬草は見たことがない』と大絶賛でしてね。今までの倍の値段で買い取らせてほしいと!」
「え、本当ですか!?」
どうやら『神の農具』で育てた作物は味や栄養価だけでなく魔力も豊富に含んでいるらしい。
言われてみれば僕の作る野菜を食べ始めてからカイもクロも以前より毛艶が良くなったというか、なんだか活力がみなぎっている気がする。
「野菜の方も貴族の方々の間で『奇跡の野菜』なんて呼ばれてちょっとしたブームになってるんですよ。おかげで私も大儲けさせてもらってます。はっはっは!」
ロロさんは豪快に笑う。
自分の作ったものが遠い王都でそんな風に評価されているなんてなんだか不思議な気分だ。
嬉しい反面少しだけ不安も覚える。
あまり目立ちすぎるのは僕の望むスローライフとはちょっと違う気がするから。
僕のそんな心配をよそに噂はどんどん広がっていった。
ロロさんが帰った数日後今度は近くの村の村長さんが何人かの村人を連れてやってきた。
「ミナトさん、お願いがあるんじゃ!」
村長さんは僕の前に深々と頭を下げた。
「実はわしらの村の畑も最近どうも元気がなくてのう。もしよかったらミナトさんのその不思議な力でわしらの畑にも恵みを与えてはくれんじゃろうか」
話を聞くと村の畑は痩せた土地が多く作物の育ちがあまり良くないらしい。
僕の畑がありえないほどの豊作なのを見て藁にもすがる思いでやってきたのだという。
困っている人を見過ごすことはできない。
僕はカイと相談し村の畑を手伝うことにした。
僕が『神の農具』で土を耕し生命力を与える光を注ぐ。
すると今まで元気のなかった作物の苗が見る見るうちに生き生きと葉を伸ばし始めた。
その光景に村人たちは歓声を上げ神様でも見るような目で僕のことを見ていた。
「おお…!すごい、本当に奇跡じゃ…!」
「ミナト様、ありがとうございます!」
様付けで呼ばれるのは少し気恥ずかしかったけれどみんなが喜んでくれるのは素直に嬉しかった。
お礼にと村で醸造しているという果実酒や手作りのチーズをたくさん持たせてくれた。
この一件で僕の力は「豊穣の奇跡」として近隣の村々にも知れ渡ることになった。
それからというもの僕たちの小屋にはひっきりなしに来訪者が訪れるようになった。
農作物の育て方について教えを請いに来る者、病気の家族のために魔力のこもった薬草を分けてほしいと頼みに来る者、中には僕の力を一目見ようとやってくる物見遊山の者までいた。
僕とカイはできる範囲で彼らの願いに応じてあげた。
カイは人が増えることをあまり快く思っていなかったようだけど僕が「困っている人を助けたい」と言うと何も言わずに僕の護衛に徹してくれた。
彼の存在が僕に変なちょっかいをかけてくる輩への何よりの牽制になっているのは間違いなかった。
辺境の地は僕の農業の力で少しずつ、でも着実に活気づき始めていた。
痩せた土地は豊かな畑に変わり村には笑顔が増えた。
それは僕が望んでいた静かなスローライフとは少し違うかもしれないけれど誰かの役に立てるという喜びは僕の心を温かく満たしてくれた。
けれど光が強くなれば影もまた濃くなる。
僕たちの評判は僕たちが思うよりもずっと遠くまで、そして僕たちが望まない人々の耳にまで届いてしまっていたのだ。
その日僕たちの前に現れたのは今までの村人たちとは明らかに違う豪奢な服に身を包んだ一団だった。
先頭に立つのはいかにも役人といった風情の細い目をした男。
そしてその隣には――僕の記憶にはないけれど、カイがその顔を見た瞬間険しい表情になった派手な装飾の鎧をまとった騎士風の男がいた。
役人風の男は僕を見下すような目で一瞥すると一枚の羊皮紙を広げた。
「貴殿がこの地で奇跡の作物を育てているというミナト殿ですかな?我々はアステル王国より参った調査団である」
その尊大な口ぶりに僕は思わず身構えた。
隣に立つカイの体からピリピリとした闘気が放たれているのが分かる。
「この土地は本来王国が管理する土地である。そこで得られる利益もまた王国に帰属するのが当然の理。よってその『奇跡の畑』の所有権を我々が正式に接収することに決定した」
男は一方的にそう宣言した。
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