最強のオメガ勇者ですが、規格外のアルファ魔王に捕まって極上の溺愛魔力供給を受けています。〜絶対に屈しないはずが〜

水凪しおん

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第14話「星空の下の誓い」

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 人間界への道中、一行は国境近くの森で野営をすることになった。
 夜の森は静寂に包まれ、焚き火の爆ぜる音だけが響いている。
 兵士たちは交代で見張りを立て、レオとベリアルは少し離れた場所で二人きりの時間を過ごしていた。

 「懐かしいな……旅をしていた頃は、毎晩こうして野宿していた」

 レオは焼き串をかじりながら、夜空を見上げた。
 満天の星。それは魔界で見る紫色の空とは違う、慣れ親しんだ故郷の空だった。

 「余にとっては新鮮だ。魔王ともあろう者が、地べたに寝転がるとはな」

 ベリアルはワイングラスを揺らしながら、草の上に優雅に座っている。
 その巨体は、森の木々と同化しているようで、不思議と威圧感はない。

 「不服か? 豪華なベッドじゃなくて」

 「まさか。お前と共にいるなら、荒れ地もまた王宮だ」

 ベリアルは気障な台詞をサラリと言ってのけ、レオを引き寄せて膝の上に乗せた。
 子供扱いされるのは癪だが、この温もりには抗えない。
 夜風は冷たいが、魔王の体温は灼熱のストーブのようだ。

 「ベリアル。明日には王都に着く」

 「ああ」

 「もし……交渉が決裂したら、王を殺すのか?」

 レオの声がわずかに震える。
 ベリアルはレオの髪を撫でながら、静かに答えた。

 「余は殺戮を好まない。だが、害をなす者を放置するほど甘くもない。王が民を捨て、我らを滅ぼそうとするなら、王としての責務を果たさせるまでだ」

 「責務?」

 「王の仕事は、民を生かすことだ。それができない王は、ただの奪い取る者に過ぎない。排除されるのが世の理だ」

 淡々とした口調だが、そこには確固たる王者の哲学があった。
 レオは自分の胸に手を当てた。
 自分はどうしたい?
 かつて忠誠を誓った王だ。できれば血を見たくはない。
 だが、あの王は変わってしまった。禁呪兵器を使い、自国の環境すら犠牲にしようとする狂気。
 それを止めることができるのは、きっと自分たちだけだ。

 「俺がやるよ」

 レオは言った。

 「王を討つ必要があるなら、俺がやる。それが、かつて臣下だった俺の最後の忠義だ」

 汚れ役を魔王に押し付けたくない。
 人間同士の始末は、人間がつけなければならない。
 ベリアルは驚いたようにレオを見つめ、やがて優しく微笑んだ。

 「お前は優しいな、レオ。そして強い」

 ベリアルがレオの頬を包み込む。

 「だが、一人で背負うな。余の剣はお前のためにある。お前が手を汚すというなら、余も共にその血を浴びよう」

 「ベリアル……」

 「我々は番だ。罪も罰も、栄光も、すべてを分かち合う。そうだろう?」

 レオの瞳から涙がこぼれ落ちた。
 一人で戦ってきたつもりだった。勇者という孤独な称号を背負って。
 でも、今は違う。
 隣に、自分よりも大きな背中がある。
 自分を丸ごと受け止め、肯定してくれる存在がいる。

 「ああ……そうだな。俺たちは、一心同体だ」

 レオはベリアルの首に抱きついた。
 星空の下、二人の影が一つになる。
 言葉はいらなかった。
 ただ触れ合い、体温を伝え合うだけで、互いの魂が癒やされていくのを感じた。

 「愛してる、ベリアル」

 「余もだ、レオ」

 その夜、二人は焚き火のそばで寄り添って眠った。
 明日に控えた決戦への不安など、微塵も感じさせないほど安らかな寝顔だった。
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