異世界転生した社畜、瀕死でオメガ覚醒。氷の鬼神な騎士団長に見初められ、執着溺愛ライフを送る

水凪しおん

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第8話「氷の制裁、灼熱の独占欲」

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「……俺の宝に、その汚い手で触れようとしたのか」

 ゼイドの声は、氷河が軋む音のように低く冷たかった。彼の周りでは冷気が渦を巻き、図書室の空気が肌を刺すように痛い。瑠璃色の瞳はもはや怒りを通り越し、絶対的な無へと変わっていた。それが彼の怒りが頂点に達した証拠だと、フィンは本能で理解した。

 フィンに手を出そうとした貴族の男たちは、目の前の光景が信じられないといった様子で、凍りついた自分たちの手とゼイドの顔を交互に見ていた。

「な……なんだ、これは……!手が……!」

「ヴァルモニカ卿!こ、これは何かの間違いで……!」

 彼らは狼狽し、見苦しい言い訳を口にする。だがゼイドの耳には届いていなかった。彼はゆっくりと、しかし確かな足取りで男たちへと歩み寄る。その一歩一歩が、まるで断頭台への階段のように男たちの顔から血の気を奪っていく。

 ゼイドはリーダー格の男の目の前で立ち止まると、その凍りついた手を、まるで興味深い芸術品でも眺めるかのように見つめた。

「美しいだろう?俺の魔力で創り出した氷だ。永遠に溶けることはない」

「ひっ……!お、お許しを……!」

「許し?ああ、許してやろう。ただし……」

 ゼイドはそう言うと、凍った男の腕を何の躊躇もなく握り砕いた。パリン、と軽い音がして、氷の腕は粉々になって床に散らばる。男の口から、声にならない絶叫が迸った。

「俺の宝に触れた指は、もういらないな」

 冷酷に言い放つゼイドの姿は、まさしく「氷の鬼神」そのものだった。取り巻きの男たちは腰を抜かしてその場にへたり込み、失禁する者までいた。彼らは自分たちが手を出そうとした相手が、どれほど恐ろしい存在の逆鱗に触れてしまったのかを、骨の髄まで思い知らされたのだ。

 ゼイドはもはや虫けら同然の彼らに一瞥もくれず、フィンの元へと踵を返した。そして恐怖で震えるフィンの身体を、その腕の中に強く、強く抱きしめた。

「すまない、フィン。俺がそばを離れたばかりに……怖い思いをさせた」

 その声は先ほどの冷酷さが嘘のように、罪悪感と後悔に震えていた。フィンの身体に回された腕も、かすかに震えている。彼は本気でフィンを失う恐怖を感じていたのだ。

「ゼイド、様……」

「怪我はないか?どこか触られたりしなかったか?」

 ゼイドはフィンの身体を隅々まで確かめるように見つめる。その必死な様子に、フィンの心は締め付けられた。怖い思いはした。だがそれ以上に、自分のためにここまで怒り心を痛めてくれる存在がいるという事実が、フィンの胸を熱くした。

「大丈夫です……あなたが、来てくれたから」

 フィンがそう言うと、ゼイドは安堵のため息を漏らし、再びフィンを強く抱きしめた。

「もう二度と、お前を一人にはしない。俺の目の届かない場所へは行かせない」

 それは甘い愛の言葉であると同時に、重い束縛の誓いでもあった。フィンは、それに頷くことしかできなかった。

 その夜、ゼイドはフィンを片時も離さなかった。ベッドの中でもまるで失うことを恐れるかのように、何度もフィンの名を呼びその身体を貪るように求めた。彼の行為は普段の優しさとは違い、どこか焦りと独占欲に満ちていた。まるで自分の匂いを上書きするように、フィンの身体の隅々にまで己の存在を刻みつけようとしているかのようだった。

「フィン……お前は俺だけのものだ……誰にも渡さない……」

 喘ぎながら、ゼイドは何度もそう繰り返した。フィンは彼の灼熱を受け入れながら、その背中に腕を回した。この人は、強いだけではない。自分を失うことを、心から恐れている。その弱さが、フィンの心を揺さぶった。

 守られているだけではいけない。俺も、この人の隣に立つにふさわしい存在になりたい。

 激しい情交の最中、フィンの心に初めてそんな強い意志が芽生えていた。前世ではただ流されるままに生きてきた。今世でもスローライフを夢見て、波風立てずに生きることだけを考えていた。

 だが、今は違う。守りたいものができた。この、自分を愛してくれる不器用で一途な鬼神のために。

 夜が明ける頃、疲れ果てて眠るゼイドの寝顔を見ながら、フィンは静かに決意を固めていた。もう、ただ守られるだけの弱い存在ではいられない。自分の持つ知識と力で、彼の隣に立ち彼を支えよう。

 フィンの中で、何かが確かに変わった瞬間だった。
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