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第11話「祝福の光と、未来への誓い」
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ゼイド・ヴァルモニカ騎士団長と、その番であるフィン・アーチャーの婚姻の儀が執り行われるという報せは、瞬く間に王都を駆け巡った。
平民出身、後天性オメガ、そして男性。異例ずくめの相手との婚姻に、貴族社会からは案の定反対の声が上がった。国の英雄の血に卑しい血が混じることを、彼らは良しとしなかったのだ。
しかしそんな反対意見は、ゼイドにとって取るに足らない雑音でしかなかった。彼は国王に直接謁見し、フィンの功績と彼が自身の唯一無二の番であることを力強く説いた。フィンの改革によって国軍が大きな利益を得ていたこともあり、国王は最終的に二人の婚姻を正式に認可した。それどころかフィンに対して、その功績を称え一代限りの準貴族の爵位を授けることまで決定したのだ。
「フィン・アーチャーに、男爵位を授ける。今後も、ヴァルモニカ卿を支え、国のために尽力することを期待する」
国王の言葉に、フィンは信じられない思いでその場に平伏した。自分が、貴族に?前世では一介のサラリーマン、今世でもしがない平民兵士だった自分が。人生とは、本当に何が起こるか分からないものだ。
隣に立つゼイドが、誇らしげにフィンの肩を抱いた。その眼差しは、「当然だろう?」と語っているようだった。
婚姻の儀は王都の大聖堂で、国の重鎮たちが列席する中、厳かに執り行われた。純白の儀礼服に身を包んだフィンの姿は、性別を超越した神々しいまでの美しさを放っていた。少し膨らみ始めたお腹を、フィンは愛おしそうに撫でる。
ゼイドもまた純白の軍服を身にまとい、その隣に立っていた。普段の冷徹な雰囲気は鳴りを潜め、その表情はただひたすらに幸福と喜びに満ち溢れている。
神官の前で永遠の愛を誓い、指輪を交換する。ゼイドがフィンの顔を覆うベールをそっと上げ、誓いの口づけを落とした。その瞬間、大聖堂は割れんばかりの拍手と祝福の声に包まれた。
かつてフィンを蔑んでいた貴族たちも、今や国王の裁可とフィンの功績を前にしては祝福の言葉を述べるしかなかった。フィンは、少しだけいわゆる『ざまぁ』展開だな、と前世の記憶を思い出して苦笑した。
披露宴は、王宮の広大な庭園で盛大に催された。美しい音楽が流れ、豪華な食事が並ぶ。フィンは少し目眩を覚えながらもゼイドに支えられ、次々と訪れる祝賀の客に笑顔で応対した。
「フィン様、この度は誠におめでとうございます!貴方様が考案された衛生管理法のおかげで、我が領地の病人が激減いたしました!」
「男爵様!貴方様の兵站システムは、まさに画期的です!ぜひ、我が商会にもご教授願いたい!」
かつては遠い存在だった貴族や大商人たちが、こぞって自分に敬意を払い教えを乞うてくる。その光景に、フィンはまだ現実味が湧かなかった。
そんな喧騒の中、ふと懐かしい顔を見つけた。辺境の砦で苦楽を共にした、カイやダリオの生き残りの仲間たちだった。彼らはこの日のために、王都まで駆けつけてくれたのだ。
「フィン!いや、フィン様!おめでとうございます!」
「本当に、あんたはすげえよ!俺たちの誇りだ!」
彼らの気安い祝福に、フィンの心は温かくなった。自分は、決して一人ではなかった。
宴もたけなわの頃、フィンはゼイドに連れられて少し離れたバルコニーで涼んでいた。夜風が、火照った頬に心地よい。
「疲れただろう、フィン。もう部屋に戻ろうか」
「いえ、大丈夫です。……夢みたいで」
フィンがそうつぶやくと、ゼイドはフィンの膨らんだお腹に優しく手を当てた。
「夢ではない。これが、俺たちの現実だ」
「はい……」
「フィン。改めて言わせてくれ。俺と番になってくれて、ありがとう。俺の子供を宿してくれて、ありがとう。お前がいなければ、俺は氷の鬼神のまま、心を持たない人形として生きていたことだろう。お前が、俺に愛を教えてくれた」
瑠璃色の瞳が、真摯にフィンを見つめる。その瞳に映る自分は、確かに幸せそうに笑っていた。
「俺の方こそ、ありがとうございます、ゼイド様。あなたが見つけてくれなければ、俺は今頃どこかで一人で死んでいたかもしれません。あなたが、俺に生きる意味と愛される喜びを教えてくれました」
二人はどちらからともなく唇を寄せ、静かに口づけを交わした。
これから先、様々な困難が待ち受けているかもしれない。しかしこの人と、そしてもうすぐ生まれてくるこの子と一緒なら、どんなことでも乗り越えていける。
フィンはバルコニーから見下ろす、祝福の光に満ちた庭園を眺めながら、未来への誓いを新たにするのだった。
平民出身、後天性オメガ、そして男性。異例ずくめの相手との婚姻に、貴族社会からは案の定反対の声が上がった。国の英雄の血に卑しい血が混じることを、彼らは良しとしなかったのだ。
しかしそんな反対意見は、ゼイドにとって取るに足らない雑音でしかなかった。彼は国王に直接謁見し、フィンの功績と彼が自身の唯一無二の番であることを力強く説いた。フィンの改革によって国軍が大きな利益を得ていたこともあり、国王は最終的に二人の婚姻を正式に認可した。それどころかフィンに対して、その功績を称え一代限りの準貴族の爵位を授けることまで決定したのだ。
「フィン・アーチャーに、男爵位を授ける。今後も、ヴァルモニカ卿を支え、国のために尽力することを期待する」
国王の言葉に、フィンは信じられない思いでその場に平伏した。自分が、貴族に?前世では一介のサラリーマン、今世でもしがない平民兵士だった自分が。人生とは、本当に何が起こるか分からないものだ。
隣に立つゼイドが、誇らしげにフィンの肩を抱いた。その眼差しは、「当然だろう?」と語っているようだった。
婚姻の儀は王都の大聖堂で、国の重鎮たちが列席する中、厳かに執り行われた。純白の儀礼服に身を包んだフィンの姿は、性別を超越した神々しいまでの美しさを放っていた。少し膨らみ始めたお腹を、フィンは愛おしそうに撫でる。
ゼイドもまた純白の軍服を身にまとい、その隣に立っていた。普段の冷徹な雰囲気は鳴りを潜め、その表情はただひたすらに幸福と喜びに満ち溢れている。
神官の前で永遠の愛を誓い、指輪を交換する。ゼイドがフィンの顔を覆うベールをそっと上げ、誓いの口づけを落とした。その瞬間、大聖堂は割れんばかりの拍手と祝福の声に包まれた。
かつてフィンを蔑んでいた貴族たちも、今や国王の裁可とフィンの功績を前にしては祝福の言葉を述べるしかなかった。フィンは、少しだけいわゆる『ざまぁ』展開だな、と前世の記憶を思い出して苦笑した。
披露宴は、王宮の広大な庭園で盛大に催された。美しい音楽が流れ、豪華な食事が並ぶ。フィンは少し目眩を覚えながらもゼイドに支えられ、次々と訪れる祝賀の客に笑顔で応対した。
「フィン様、この度は誠におめでとうございます!貴方様が考案された衛生管理法のおかげで、我が領地の病人が激減いたしました!」
「男爵様!貴方様の兵站システムは、まさに画期的です!ぜひ、我が商会にもご教授願いたい!」
かつては遠い存在だった貴族や大商人たちが、こぞって自分に敬意を払い教えを乞うてくる。その光景に、フィンはまだ現実味が湧かなかった。
そんな喧騒の中、ふと懐かしい顔を見つけた。辺境の砦で苦楽を共にした、カイやダリオの生き残りの仲間たちだった。彼らはこの日のために、王都まで駆けつけてくれたのだ。
「フィン!いや、フィン様!おめでとうございます!」
「本当に、あんたはすげえよ!俺たちの誇りだ!」
彼らの気安い祝福に、フィンの心は温かくなった。自分は、決して一人ではなかった。
宴もたけなわの頃、フィンはゼイドに連れられて少し離れたバルコニーで涼んでいた。夜風が、火照った頬に心地よい。
「疲れただろう、フィン。もう部屋に戻ろうか」
「いえ、大丈夫です。……夢みたいで」
フィンがそうつぶやくと、ゼイドはフィンの膨らんだお腹に優しく手を当てた。
「夢ではない。これが、俺たちの現実だ」
「はい……」
「フィン。改めて言わせてくれ。俺と番になってくれて、ありがとう。俺の子供を宿してくれて、ありがとう。お前がいなければ、俺は氷の鬼神のまま、心を持たない人形として生きていたことだろう。お前が、俺に愛を教えてくれた」
瑠璃色の瞳が、真摯にフィンを見つめる。その瞳に映る自分は、確かに幸せそうに笑っていた。
「俺の方こそ、ありがとうございます、ゼイド様。あなたが見つけてくれなければ、俺は今頃どこかで一人で死んでいたかもしれません。あなたが、俺に生きる意味と愛される喜びを教えてくれました」
二人はどちらからともなく唇を寄せ、静かに口づけを交わした。
これから先、様々な困難が待ち受けているかもしれない。しかしこの人と、そしてもうすぐ生まれてくるこの子と一緒なら、どんなことでも乗り越えていける。
フィンはバルコニーから見下ろす、祝福の光に満ちた庭園を眺めながら、未来への誓いを新たにするのだった。
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