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第8話「反撃の狼煙」
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旧北部離宮は、帝国の華やかな歴史から忘れ去られたように、静まり返っていた。しかし、その地下には、およそ似つかわしくない、最新鋭の研究施設が広がっていた。暁光団のアジトだ。ミカエルは部隊を離宮の周囲に待機させると、ただ一人、闇に紛れて施設内部への潜入を果たした。彼の研ぎ澄まされた五感と、軍で鍛え上げられた戦闘技術が、複雑な警備網をいとも容易く突破していく。
地下深く、最も厳重に警備された一室。ガラス張りの部屋の中央で、リオンは意識を取り戻した。身体は特殊な拘束具で椅子に固定され、頭には無数のケーブルが接続されている。彼の能力を、強制的に引き出そうというのだろう。
「目が覚めたかね、歌姫(ディーヴァ)」
部屋の外から、ねっとりとした声が聞こえた。そこに立っていたのは、暁光団のリーダーを名乗る、痩せぎすの男と、そして―――帝国の宰相だった。
「宰相閣下……!」
「久しいな、ミカエル部長の愛し子よ。いや、元気に育ったものだ。君のその稀有な才能は、我らが新しい帝国を築く上で、大いに役立ってもらう」
宰相は、ゆがんだ笑みを浮かべて言った。
「私の父も、私の夫も、帝国に全てを奪われた。先代皇帝……あの偽善者のせいで、私の家は没落し、路頭に迷ったのだ。この帝国への復讐こそが、我が悲願!」
リーダーの男が、憎しみに満ちた声で叫ぶ。彼の家は、かつて先代皇帝の政策によって、不正の罪を問われ、爵位を剥奪された貴族の末裔だった。逆恨みも甚だしい。
「君の能力で、帝国の防衛システムを無力化し、我らが開発したフェロモン兵器で、アルファ共を支配する。素晴らしい計画だと思わんかね?」
宰相が勝ち誇ったように言った、その時だった。
突如、施設の照明が明滅し、けたたましい警報が鳴り響いた。
「な、何事だ!」
「侵入者です! 警備システムが、次々と破られています!」
部下の報告に、宰相とリーダーの顔色が変わる。
次の瞬間、研究室の強化ガラスが、内側からの衝撃で凄まじい音を立てて砕け散った。ガラスの破片が舞う中、悠然と姿を現したのは、漆黒の戦闘服に身を包んだミカエルだった。その手には、特殊合金製のナイフが握られている。
「リオンッ!」
「ミカエルさん……!」
絶望の淵にいたリオンの目に、希望の光が宿る。ミカエルは、本当に助けに来てくれた。
「貴様、どうやってここに……!」
驚愕するリーダーを前に、ミカエルは冷たく言い放った。
「俺の番に、指一本でも触れた罪、その命で償ってもらう」
その言葉を皮切りに、ミカエルは獣のような速さで敵に襲いかかった。屈強な兵士たちが、彼の前では枯れ木を折るように、次々と無力化されていく。
しかし、敵の数も多い。宰相とリーダーは、兵士たちを盾にしながら、部屋の奥へと後退していく。
「ミカエルさん、気をつけて!」
椅子に拘束されたまま、リオンは叫んだ。このままでは、ミカエルが消耗してしまう。自分も、戦わなければ。
リオンは目を閉じ、意識を集中させた。頭に繋がれたケーブル。それは、彼の脳と、この施設のメインシステムを繋ぐ、インターフェースでもある。敵はそれを利用してリオンを操ろうとしたが、それは大きな間違いだった。
(僕の能力は、誰にも支配されない……!)
リオンは、自らの意思で、その類稀なる情報処理能力を解放した。膨大な情報が、彼の脳内を駆け巡る。施設のシステム構造、警備配置、動力源、その全てを、瞬時に把握する。
そして、彼は、システムの最も深い階層―――自爆装置の制御システムに、ハッキングを敢行した。
『……警告。当施設は、10分後に自動的に爆破されます。職員は、直ちに退避してください……』
無機質なアナウンスが、アジト全体に響き渡った。
「なっ……馬鹿な! システムが乗っ取られただと!?」
リーダーが絶叫する。宰相も、予想外の事態に狼狽を隠せない。
施設内が、大混乱に陥った。その隙を、ミカエルが見逃すはずがなかった。
彼は、混乱に乗じてリオンの元へと駆け寄ると、拘束具を一瞬で破壊し、彼をその腕に抱きしめた。
「よくやった、リオン。さすが、俺の番だ」
「ミカエルさんこそ、無茶しないでください……!」
短い再会を喜ぶ間もなく、ミカエルはリオンを背後に庇い、反撃の体勢を取った。
「さあ、第二ラウンドと行こうか」
ミカエルの口元に、不敵な笑みが浮かぶ。
一人は、帝国の誇る最強のアルファ。
もう一人は、世界最高の頭脳を持つオメガ。
最強の二人が、今、背中を合わせる。絶望的な状況は、反撃の狼煙によって、逆転の舞台へと変わった。帝国の闇を照らす光の反撃が、今、始まる。
地下深く、最も厳重に警備された一室。ガラス張りの部屋の中央で、リオンは意識を取り戻した。身体は特殊な拘束具で椅子に固定され、頭には無数のケーブルが接続されている。彼の能力を、強制的に引き出そうというのだろう。
「目が覚めたかね、歌姫(ディーヴァ)」
部屋の外から、ねっとりとした声が聞こえた。そこに立っていたのは、暁光団のリーダーを名乗る、痩せぎすの男と、そして―――帝国の宰相だった。
「宰相閣下……!」
「久しいな、ミカエル部長の愛し子よ。いや、元気に育ったものだ。君のその稀有な才能は、我らが新しい帝国を築く上で、大いに役立ってもらう」
宰相は、ゆがんだ笑みを浮かべて言った。
「私の父も、私の夫も、帝国に全てを奪われた。先代皇帝……あの偽善者のせいで、私の家は没落し、路頭に迷ったのだ。この帝国への復讐こそが、我が悲願!」
リーダーの男が、憎しみに満ちた声で叫ぶ。彼の家は、かつて先代皇帝の政策によって、不正の罪を問われ、爵位を剥奪された貴族の末裔だった。逆恨みも甚だしい。
「君の能力で、帝国の防衛システムを無力化し、我らが開発したフェロモン兵器で、アルファ共を支配する。素晴らしい計画だと思わんかね?」
宰相が勝ち誇ったように言った、その時だった。
突如、施設の照明が明滅し、けたたましい警報が鳴り響いた。
「な、何事だ!」
「侵入者です! 警備システムが、次々と破られています!」
部下の報告に、宰相とリーダーの顔色が変わる。
次の瞬間、研究室の強化ガラスが、内側からの衝撃で凄まじい音を立てて砕け散った。ガラスの破片が舞う中、悠然と姿を現したのは、漆黒の戦闘服に身を包んだミカエルだった。その手には、特殊合金製のナイフが握られている。
「リオンッ!」
「ミカエルさん……!」
絶望の淵にいたリオンの目に、希望の光が宿る。ミカエルは、本当に助けに来てくれた。
「貴様、どうやってここに……!」
驚愕するリーダーを前に、ミカエルは冷たく言い放った。
「俺の番に、指一本でも触れた罪、その命で償ってもらう」
その言葉を皮切りに、ミカエルは獣のような速さで敵に襲いかかった。屈強な兵士たちが、彼の前では枯れ木を折るように、次々と無力化されていく。
しかし、敵の数も多い。宰相とリーダーは、兵士たちを盾にしながら、部屋の奥へと後退していく。
「ミカエルさん、気をつけて!」
椅子に拘束されたまま、リオンは叫んだ。このままでは、ミカエルが消耗してしまう。自分も、戦わなければ。
リオンは目を閉じ、意識を集中させた。頭に繋がれたケーブル。それは、彼の脳と、この施設のメインシステムを繋ぐ、インターフェースでもある。敵はそれを利用してリオンを操ろうとしたが、それは大きな間違いだった。
(僕の能力は、誰にも支配されない……!)
リオンは、自らの意思で、その類稀なる情報処理能力を解放した。膨大な情報が、彼の脳内を駆け巡る。施設のシステム構造、警備配置、動力源、その全てを、瞬時に把握する。
そして、彼は、システムの最も深い階層―――自爆装置の制御システムに、ハッキングを敢行した。
『……警告。当施設は、10分後に自動的に爆破されます。職員は、直ちに退避してください……』
無機質なアナウンスが、アジト全体に響き渡った。
「なっ……馬鹿な! システムが乗っ取られただと!?」
リーダーが絶叫する。宰相も、予想外の事態に狼狽を隠せない。
施設内が、大混乱に陥った。その隙を、ミカエルが見逃すはずがなかった。
彼は、混乱に乗じてリオンの元へと駆け寄ると、拘束具を一瞬で破壊し、彼をその腕に抱きしめた。
「よくやった、リオン。さすが、俺の番だ」
「ミカエルさんこそ、無茶しないでください……!」
短い再会を喜ぶ間もなく、ミカエルはリオンを背後に庇い、反撃の体勢を取った。
「さあ、第二ラウンドと行こうか」
ミカエルの口元に、不敵な笑みが浮かぶ。
一人は、帝国の誇る最強のアルファ。
もう一人は、世界最高の頭脳を持つオメガ。
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