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第9話「光の在り処」
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自爆装置のカウントダウンが、無慈悲に時を刻み始める。鳴り響く警報と、混乱して逃げ惑う暁光団の構成員たち。その混沌の中心で、ミカエルとリオンは、まるで嵐の目の中の静けさのように、互いの背中を預け合っていた。
「リオン、敵の通信網を全て遮断しろ。外部との連絡を断つんだ」
ミカエルの冷静な指示が飛ぶ。
「はい!」
リオンはミカエルの背中に守られながら、近くにあった端末を操作し始めた。彼の指が、神がかった速さでキーボードを踊る。複雑な暗号で守られた敵の通信システムは、リオンの前では子供の玩具も同然だった。数秒後、アジト内の全ての通信が、完全に沈黙した。
「よくやった! 次は、この施設の全区画のロックを解除。俺の部隊が突入するルートを確保する」
「了解!」
ミカエルがその圧倒的な戦闘能力で、迫り来る敵をなぎ倒していく。彼の動きには一切の無駄がなく、まるで流れる水のように、しなやかで、そして破壊的だった。一方、リオンはその頭脳で、ミカエルという最強の剣を、最も効果的に導く。敵の配置、武器の種類、建物の構造。全ての情報を瞬時に解析し、ミカエルに的確な指示を送り続ける。
「右翼から三人、武装は短剣!」
「了解した」
「その先の通路、天井に監視カメラ。破壊してください!」
「任せろ」
二人の完璧な連携の前に、数で勝るはずの暁光団は、為す術もなく無力化されていった。彼らは、たった二人の人間を相手にしているのではなく、まるで百戦錬磨の一個師団と戦っているかのような錯覚に陥っていた。
「くそっ、化け物め……!」
追い詰められたリーダーと宰相は、最後の切り札を使おうと、研究室の最奥にあるカプセルへと駆け寄った。そこには、彼らが研究の粋を集めて作り上げた、凶暴な改造アルファが眠っていた。
しかし、彼らが起動スイッチを押すよりも早く、リオンの声が響いた。
「無駄ですよ。そのカプセルの動力源は、僕がすでにメインシステムから切り離しておきました」
リオンが、不敵な笑みを浮かべて二人を見つめる。
「……っ!」
万策尽きた宰相は、最後の悪あがきとばかりに、大声で叫んだ。
「ミカエル! 貴様が先帝の隠し子であることは、いずれ私が暴露してやる! お前は皇帝の座どころか、全てを失うことになるのだ!」
その言葉に、ミカエルはしかし、眉一つ動かさなかった。
「その必要はない」
ミカエルは静かに言うと、宰相に視線を向けた。
「お前の悪事の証拠は、全て確保させてもらった。宰相、お前が終わるのだ」
ミカエルがそう言った瞬間、宰相の端末が鳴り響いた。画面に映し出されたのは、現皇帝陛下の、怒りに満ちた表情だった。
『宰相……貴様、朕を裏切っていたのか』
宰相と暁光団の通信記録、非人道的な研究のデータ、そして今回の襲撃における全ての不正の証拠。それは全て、リオンによってリアルタイムで確保され、外部で待機していたフィンを通じて、すでに現皇帝の元へと転送されていたのだ。
全てを失ったことを悟り、宰相とリーダーは、その場に崩れ落ちた。
ほぼ同時に、ミカエルが確保したルートから、彼の率いる精鋭部隊がアジトへと突入し、残党を次々と制圧していく。
暁光団は、こうして壊滅した。
自爆装置のカウントダウンが、残り一分を切っていた。
「行くぞ、リオン!」
ミカエルはリオンの手を強く握ると、脱出ルートへと走り出した。崩れ落ちる瓦礫を抜け、吹き荒れる爆風を背に受けながら、二人は地上へと駆け上がる。
アジトから脱出した瞬間、背後で大規模な爆発が起こり、旧北部離宮は紅蓮の炎に包まれた。駆けつけたミカエルの部隊に保護され、二人は互いの無事を確かめるように、きつく、きつく抱きしめ合った。
「……怖かった……。もう、会えないかと……」
リオンの肩が、微かに震えている。ミカエルは、その柔らかな栗色の髪を優しく撫でた。
「すまない、怖い思いをさせた。だが、もう大丈夫だ。俺が、ずっとそばにいる」
夜明けの光が、帝都を照らし始める。長い夜が明け、帝国の闇は払われた。
互いの体温を感じながら、二人は確信していた。光の在り処は、いつだって、互いの隣にあるのだと。
帝国の未来も、そして二人の未来も、この夜明けの光のように、明るく照らされていくのだろう。そう、固く信じることができた。
「リオン、敵の通信網を全て遮断しろ。外部との連絡を断つんだ」
ミカエルの冷静な指示が飛ぶ。
「はい!」
リオンはミカエルの背中に守られながら、近くにあった端末を操作し始めた。彼の指が、神がかった速さでキーボードを踊る。複雑な暗号で守られた敵の通信システムは、リオンの前では子供の玩具も同然だった。数秒後、アジト内の全ての通信が、完全に沈黙した。
「よくやった! 次は、この施設の全区画のロックを解除。俺の部隊が突入するルートを確保する」
「了解!」
ミカエルがその圧倒的な戦闘能力で、迫り来る敵をなぎ倒していく。彼の動きには一切の無駄がなく、まるで流れる水のように、しなやかで、そして破壊的だった。一方、リオンはその頭脳で、ミカエルという最強の剣を、最も効果的に導く。敵の配置、武器の種類、建物の構造。全ての情報を瞬時に解析し、ミカエルに的確な指示を送り続ける。
「右翼から三人、武装は短剣!」
「了解した」
「その先の通路、天井に監視カメラ。破壊してください!」
「任せろ」
二人の完璧な連携の前に、数で勝るはずの暁光団は、為す術もなく無力化されていった。彼らは、たった二人の人間を相手にしているのではなく、まるで百戦錬磨の一個師団と戦っているかのような錯覚に陥っていた。
「くそっ、化け物め……!」
追い詰められたリーダーと宰相は、最後の切り札を使おうと、研究室の最奥にあるカプセルへと駆け寄った。そこには、彼らが研究の粋を集めて作り上げた、凶暴な改造アルファが眠っていた。
しかし、彼らが起動スイッチを押すよりも早く、リオンの声が響いた。
「無駄ですよ。そのカプセルの動力源は、僕がすでにメインシステムから切り離しておきました」
リオンが、不敵な笑みを浮かべて二人を見つめる。
「……っ!」
万策尽きた宰相は、最後の悪あがきとばかりに、大声で叫んだ。
「ミカエル! 貴様が先帝の隠し子であることは、いずれ私が暴露してやる! お前は皇帝の座どころか、全てを失うことになるのだ!」
その言葉に、ミカエルはしかし、眉一つ動かさなかった。
「その必要はない」
ミカエルは静かに言うと、宰相に視線を向けた。
「お前の悪事の証拠は、全て確保させてもらった。宰相、お前が終わるのだ」
ミカエルがそう言った瞬間、宰相の端末が鳴り響いた。画面に映し出されたのは、現皇帝陛下の、怒りに満ちた表情だった。
『宰相……貴様、朕を裏切っていたのか』
宰相と暁光団の通信記録、非人道的な研究のデータ、そして今回の襲撃における全ての不正の証拠。それは全て、リオンによってリアルタイムで確保され、外部で待機していたフィンを通じて、すでに現皇帝の元へと転送されていたのだ。
全てを失ったことを悟り、宰相とリーダーは、その場に崩れ落ちた。
ほぼ同時に、ミカエルが確保したルートから、彼の率いる精鋭部隊がアジトへと突入し、残党を次々と制圧していく。
暁光団は、こうして壊滅した。
自爆装置のカウントダウンが、残り一分を切っていた。
「行くぞ、リオン!」
ミカエルはリオンの手を強く握ると、脱出ルートへと走り出した。崩れ落ちる瓦礫を抜け、吹き荒れる爆風を背に受けながら、二人は地上へと駆け上がる。
アジトから脱出した瞬間、背後で大規模な爆発が起こり、旧北部離宮は紅蓮の炎に包まれた。駆けつけたミカエルの部隊に保護され、二人は互いの無事を確かめるように、きつく、きつく抱きしめ合った。
「……怖かった……。もう、会えないかと……」
リオンの肩が、微かに震えている。ミカエルは、その柔らかな栗色の髪を優しく撫でた。
「すまない、怖い思いをさせた。だが、もう大丈夫だ。俺が、ずっとそばにいる」
夜明けの光が、帝都を照らし始める。長い夜が明け、帝国の闇は払われた。
互いの体温を感じながら、二人は確信していた。光の在り処は、いつだって、互いの隣にあるのだと。
帝国の未来も、そして二人の未来も、この夜明けの光のように、明るく照らされていくのだろう。そう、固く信じることができた。
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