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第7話「魔王の告白と古の契約」
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「私のものだ」というアシュトの言葉が、頭の中で何度も繰り返される。
彼の瞳に宿る燃えるような独占欲の色に射抜かれて、俺は身動き一つできなかった。
肩を掴む彼の指先に、力がこもるのがわかる。
「アシュト、様……?」
かろうじて彼の名前を呼ぶと、アシュトはハッとしたように我に返り、俺からそっと手を離した。
「……すまない。少し、取り乱した」
彼は気まずそうに顔をそむける。
先ほどまでの激しい雰囲気は消え、いつもの冷静な彼に戻っていた。
でも、俺の心臓はまだ早鐘のように鳴り響いている。
『私のもの……』
カイさんにすら、言われたことのない言葉。
それは俺という存在そのものを、彼が必要としてくれている証のように思えた。
道具や玩具としてではなく、唯一無二の存在として。
その事実に、胸の奥がじんわりと熱くなる。
同時に、俺自身もアシュトに対してただの恩人以上の感情を抱き始めていることに気づかされた。
彼の孤独に触れたい。その凍てついた心を、俺が温めたい。
そう、強く願っている自分がいた。
城に戻ってからも、俺たちはどちらもあの夜の出来事には触れなかった。
けれど、俺たちの間の空気は明らかに変わっていた。
アシュトは以前よりも頻繁に俺のそばにいるようになり、領地再建の様子を見守る彼の視線には隠しきれないほどの熱がこもっていた。
俺も、そんな彼の視線を意識しないわけにはいかなかった。
作業の合間に彼と目が合うたびに心臓が跳ね、頬が熱くなる。
この気持ちが何なのか、もう俺は気づかないふりをすることはできなかった。
そんな日々が続いていたある日、アシュトに彼の私室へと呼ばれた。
重厚な書物に囲まれた部屋で、彼は真剣な面持ちで俺に向き合った。
「ユキ。お前に、頼みたいことがある」
「俺に、ですか? 俺にできることなら、何でも」
俺がそう答えると、アシュトは意を決したようにまっすぐに俺を見つめて言った。
「私の唯一の領主代行になってほしい」
「領主、代行……?」
予想もしていなかった言葉に、俺は目を丸くした。
領主代行とは、つまりこの魔王領のナンバーツーになるということだ。
人間である俺が、そんな大役を。
「なぜ、俺なんかが……」
「お前しかいない」
アシュトはきっぱりと言い切った。
「お前には、この地を豊かにする力がある。そして何より、民からの信頼がある。だが、それだけではない。私は……私自身の意志で、お前に隣にいてほしいと願っている」
それは、紛れもない告白だった。
彼の声は真摯で、瞳はどこまでもまっすぐだった。
俺の顔が、カッと熱くなる。
「領主代行となるためには、古の契約を結ぶ必要がある。それは私の魔力の一部をお前に分け与え、我々の魂を深く結びつける儀式だ」
「魂を、結びつける……」
「ああ。契約を結べばお前は私の魔力の恩恵を受け、その力をより十全に発揮できるようになるだろう。だが同時に、お前は私に縛られることになる。二度と、私の側を離れることはできなくなる」
アシュトは、俺に選択を委ねるように静かに続けた。
「……それでも、契約に応じてくれるか?」
彼の問いに、迷いはなかった。
カイさんに裏切られ全てを失った俺に、居場所と生きる意味を与えてくれたのはアシュトだ。
彼の側を離れるなんて、考えたこともない。
「はい。俺でよければ、喜んで」
俺がはっきりと答えると、アシュトの表情が安堵したようにふっと和らいだ。
その顔を見て、俺も心の底から嬉しくなった。
「では、儀式を始める。こちらへ」
アシュトに導かれ、部屋の奥にある魔法陣が描かれた床へと進む。
彼が呪文を唱えると、魔法陣が淡い紫色の光を放ち始めた。
「ユキ。儀式は、互いの全てをさらけ出すものだ。驚かないでほしい」
「はい」
俺がうなずくと、アシュトは俺の前に膝をつき、俺の服の合わせにそっと手をかけた。
彼の冷たい指先が肌に触れ、びくりと体が震える。
「力を、受け入れる準備はいいか」
「……はい」
彼の真剣な眼差しに、俺は覚悟を決める。
彼が俺の肌に直接唇を寄せると、そこから膨大な魔力が奔流のように俺の体の中へと流れ込んできた。
「あっ……ぅ……!」
経験したことのない感覚に、思わず声が漏れる。
それは熱く、甘く、そして少しだけ痛みを伴う、抗いがたい快感だった。
全身の細胞が彼の魔力で満たされ、作り変えられていくような感覚。
儀式が進むにつれて、俺たちの意識は深く混じり合っていく。
彼の永い孤独、世界の理不尽さに対する諦観、そして俺という存在を見つけた時の微かな希望。
彼の感情が、言葉を介さずに直接俺の心に流れ込んでくる。
俺もまた、自分の全てを彼にさらけ出していた。
カイさんへの淡い恋心、裏切られた時の絶望、そしてアシュトに出会ってからの感謝と、日に日に大きくなる愛情。
「……ユキ」
耳元で、アシュトが俺の名前をかすれた声で呼ぶ。
彼の瞳は普段の冷静さが嘘のように、欲望と愛情で潤んでいた。
「愛している」
その言葉と共に、俺たちは深く唇を重ねた。
流れ込んでくる魔力が、愛情の形となって俺を満たしていく。
ああ、俺もだ。俺も、この人が好きだ。
魂が結びつくとは、こういうことなのか。
もはやどちらが自分で、どちらが彼なのか、境界線が曖昧になっていく。
ただ、確かなのは俺たちは今、完全に一つになっているということだけ。
長い儀式が終わる頃には、俺は彼の腕の中でぐったりと意識を失いかけていた。
魔法陣の光が消え、部屋に静寂が戻る。
【魔王アシュトとの主従契約が完了しました】
【称号『魔王の伴侶』を獲得しました】
【スキル《慈愛の手》が《慈愛の奇跡》に進化しました】
脳内に響くシステムメッセージを最後に、俺の意識は完全に途切れた。
アシュトの腕に抱かれながら、俺は満たされた気持ちで深い眠りへと落ちていった。
もう二度と、孤独ではない。
その確信だけが、温かい光のように俺の心を照らしていた。
彼の瞳に宿る燃えるような独占欲の色に射抜かれて、俺は身動き一つできなかった。
肩を掴む彼の指先に、力がこもるのがわかる。
「アシュト、様……?」
かろうじて彼の名前を呼ぶと、アシュトはハッとしたように我に返り、俺からそっと手を離した。
「……すまない。少し、取り乱した」
彼は気まずそうに顔をそむける。
先ほどまでの激しい雰囲気は消え、いつもの冷静な彼に戻っていた。
でも、俺の心臓はまだ早鐘のように鳴り響いている。
『私のもの……』
カイさんにすら、言われたことのない言葉。
それは俺という存在そのものを、彼が必要としてくれている証のように思えた。
道具や玩具としてではなく、唯一無二の存在として。
その事実に、胸の奥がじんわりと熱くなる。
同時に、俺自身もアシュトに対してただの恩人以上の感情を抱き始めていることに気づかされた。
彼の孤独に触れたい。その凍てついた心を、俺が温めたい。
そう、強く願っている自分がいた。
城に戻ってからも、俺たちはどちらもあの夜の出来事には触れなかった。
けれど、俺たちの間の空気は明らかに変わっていた。
アシュトは以前よりも頻繁に俺のそばにいるようになり、領地再建の様子を見守る彼の視線には隠しきれないほどの熱がこもっていた。
俺も、そんな彼の視線を意識しないわけにはいかなかった。
作業の合間に彼と目が合うたびに心臓が跳ね、頬が熱くなる。
この気持ちが何なのか、もう俺は気づかないふりをすることはできなかった。
そんな日々が続いていたある日、アシュトに彼の私室へと呼ばれた。
重厚な書物に囲まれた部屋で、彼は真剣な面持ちで俺に向き合った。
「ユキ。お前に、頼みたいことがある」
「俺に、ですか? 俺にできることなら、何でも」
俺がそう答えると、アシュトは意を決したようにまっすぐに俺を見つめて言った。
「私の唯一の領主代行になってほしい」
「領主、代行……?」
予想もしていなかった言葉に、俺は目を丸くした。
領主代行とは、つまりこの魔王領のナンバーツーになるということだ。
人間である俺が、そんな大役を。
「なぜ、俺なんかが……」
「お前しかいない」
アシュトはきっぱりと言い切った。
「お前には、この地を豊かにする力がある。そして何より、民からの信頼がある。だが、それだけではない。私は……私自身の意志で、お前に隣にいてほしいと願っている」
それは、紛れもない告白だった。
彼の声は真摯で、瞳はどこまでもまっすぐだった。
俺の顔が、カッと熱くなる。
「領主代行となるためには、古の契約を結ぶ必要がある。それは私の魔力の一部をお前に分け与え、我々の魂を深く結びつける儀式だ」
「魂を、結びつける……」
「ああ。契約を結べばお前は私の魔力の恩恵を受け、その力をより十全に発揮できるようになるだろう。だが同時に、お前は私に縛られることになる。二度と、私の側を離れることはできなくなる」
アシュトは、俺に選択を委ねるように静かに続けた。
「……それでも、契約に応じてくれるか?」
彼の問いに、迷いはなかった。
カイさんに裏切られ全てを失った俺に、居場所と生きる意味を与えてくれたのはアシュトだ。
彼の側を離れるなんて、考えたこともない。
「はい。俺でよければ、喜んで」
俺がはっきりと答えると、アシュトの表情が安堵したようにふっと和らいだ。
その顔を見て、俺も心の底から嬉しくなった。
「では、儀式を始める。こちらへ」
アシュトに導かれ、部屋の奥にある魔法陣が描かれた床へと進む。
彼が呪文を唱えると、魔法陣が淡い紫色の光を放ち始めた。
「ユキ。儀式は、互いの全てをさらけ出すものだ。驚かないでほしい」
「はい」
俺がうなずくと、アシュトは俺の前に膝をつき、俺の服の合わせにそっと手をかけた。
彼の冷たい指先が肌に触れ、びくりと体が震える。
「力を、受け入れる準備はいいか」
「……はい」
彼の真剣な眼差しに、俺は覚悟を決める。
彼が俺の肌に直接唇を寄せると、そこから膨大な魔力が奔流のように俺の体の中へと流れ込んできた。
「あっ……ぅ……!」
経験したことのない感覚に、思わず声が漏れる。
それは熱く、甘く、そして少しだけ痛みを伴う、抗いがたい快感だった。
全身の細胞が彼の魔力で満たされ、作り変えられていくような感覚。
儀式が進むにつれて、俺たちの意識は深く混じり合っていく。
彼の永い孤独、世界の理不尽さに対する諦観、そして俺という存在を見つけた時の微かな希望。
彼の感情が、言葉を介さずに直接俺の心に流れ込んでくる。
俺もまた、自分の全てを彼にさらけ出していた。
カイさんへの淡い恋心、裏切られた時の絶望、そしてアシュトに出会ってからの感謝と、日に日に大きくなる愛情。
「……ユキ」
耳元で、アシュトが俺の名前をかすれた声で呼ぶ。
彼の瞳は普段の冷静さが嘘のように、欲望と愛情で潤んでいた。
「愛している」
その言葉と共に、俺たちは深く唇を重ねた。
流れ込んでくる魔力が、愛情の形となって俺を満たしていく。
ああ、俺もだ。俺も、この人が好きだ。
魂が結びつくとは、こういうことなのか。
もはやどちらが自分で、どちらが彼なのか、境界線が曖昧になっていく。
ただ、確かなのは俺たちは今、完全に一つになっているということだけ。
長い儀式が終わる頃には、俺は彼の腕の中でぐったりと意識を失いかけていた。
魔法陣の光が消え、部屋に静寂が戻る。
【魔王アシュトとの主従契約が完了しました】
【称号『魔王の伴侶』を獲得しました】
【スキル《慈愛の手》が《慈愛の奇跡》に進化しました】
脳内に響くシステムメッセージを最後に、俺の意識は完全に途切れた。
アシュトの腕に抱かれながら、俺は満たされた気持ちで深い眠りへと落ちていった。
もう二度と、孤独ではない。
その確信だけが、温かい光のように俺の心を照らしていた。
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