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エピローグ「至宝のいる楽園」
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あれから、五年という月日が流れた。
魔王領は、かつての荒廃した姿が嘘のように大陸で最も豊かで平和な国として知られるようになっていた。
人間との交流も盛んになり、今では多くの人間が観光や交易のためにこの地を訪れている。
種族の壁を越え、誰もが笑い合える国。
それは、俺が夢見ていた理想郷そのものだった。
俺は、アシュトの唯一無二の伴侶として、そしてこの国の共同統治者として彼と共に民を導いていた。
もちろん、今でも畑仕事を手伝ったり、厨房に立って料理を振る舞ったりすることもある。
民と同じ目線で、彼らの声に耳を傾ける。それが、俺のやり方だった。
「ユキ様! 見てください、こんなに大きなカボチャが採れましたよ!」
「わあ、すごい! 今夜はパンプキンスープにしようかな」
町を歩けば、誰もが親しげに声をかけてくれる。
この笑顔を守ることが、俺の幸せであり使命だった。
城に戻ると、アシュトが執務室で待っていた。
五年経っても彼の美しさは変わらない。
いや、穏やかな表情をすることが増えたせいか、以前よりもさらに魅力的になったように思う。
「おかえり、ユキ」
「ただいま戻りました、アシュト」
いつの間にか、俺は彼のことを名前で呼ぶようになっていた。
俺が駆け寄ると、彼は優しく抱きしめてくれる。これが、俺たちの日常だ。
「人間たちの国から、新たな貿易協定の申し出があった。どう思う?」
「そうですね。一度、内容を詳しく見てみないと……」
俺たちは、公私ともに最高のパートナーだった。
互いに意見を交わし、支え合いながらこの国を治めている。
仕事が一区切りつくと、俺たちは二人であの思い出の丘へ向かった。
五年前、初めて二人でピクニックをしたお気に入りの場所だ。
大きな木の下に座り、眼下に広がる美しい領地を眺める。
黄金色に輝く麦畑、活気あふれる町、そして遠くにはキラキラと輝く湖。
全てが、俺たちのかけがえのない宝物だ。
「信じられるか、ユキ。かつてこの場所が、不毛の大地だったとは」
アシュトが、感慨深げにつぶやいた。
「ええ。でも、ここまで来られたのはアシュトと、ここに住むみんなのおかげです」
「……お前のおかげだ」
彼は、俺の手をそっと握りしめた。
「お前という至宝が、私の凍てついた世界に光と色彩を与えてくれた。感謝してもしきれない」
「俺の方こそ、感謝しています。あなたと出会えなければ、俺は今頃、絶望の底で消えていたでしょうから」
俺たちは、互いを見つめ合い微笑み合った。
あの日、勇者に裏切られ全てを失ったと思った。
でも、あの絶望があったからこそ俺はアシュトと出会い、本当の居場所を見つけることができた。
人生とは、何が幸いするか分からないものだ。
空が、夕焼けで茜色に染まり始める。
美しいグラデーションが、世界を優しく包み込んでいく。
「アシュト」
「なんだ?」
「俺、幸せです」
飾らない、心からの言葉だった。
アシュトは何も言わずに、俺の唇にそっと口づけた。
夕日よりも温かく、どんな言葉よりも雄弁な深い愛情が伝わってくるキスだった。
「私もだ、ユキ。お前がいる、この楽園が私の全てだ」
永い孤独を生きた魔王と、居場所を失った心優しき青年。
二人が出会って紡いだ物語は、これからも続いていく。
この、光と愛に満ちた楽園で、永遠に。
魔王領は、かつての荒廃した姿が嘘のように大陸で最も豊かで平和な国として知られるようになっていた。
人間との交流も盛んになり、今では多くの人間が観光や交易のためにこの地を訪れている。
種族の壁を越え、誰もが笑い合える国。
それは、俺が夢見ていた理想郷そのものだった。
俺は、アシュトの唯一無二の伴侶として、そしてこの国の共同統治者として彼と共に民を導いていた。
もちろん、今でも畑仕事を手伝ったり、厨房に立って料理を振る舞ったりすることもある。
民と同じ目線で、彼らの声に耳を傾ける。それが、俺のやり方だった。
「ユキ様! 見てください、こんなに大きなカボチャが採れましたよ!」
「わあ、すごい! 今夜はパンプキンスープにしようかな」
町を歩けば、誰もが親しげに声をかけてくれる。
この笑顔を守ることが、俺の幸せであり使命だった。
城に戻ると、アシュトが執務室で待っていた。
五年経っても彼の美しさは変わらない。
いや、穏やかな表情をすることが増えたせいか、以前よりもさらに魅力的になったように思う。
「おかえり、ユキ」
「ただいま戻りました、アシュト」
いつの間にか、俺は彼のことを名前で呼ぶようになっていた。
俺が駆け寄ると、彼は優しく抱きしめてくれる。これが、俺たちの日常だ。
「人間たちの国から、新たな貿易協定の申し出があった。どう思う?」
「そうですね。一度、内容を詳しく見てみないと……」
俺たちは、公私ともに最高のパートナーだった。
互いに意見を交わし、支え合いながらこの国を治めている。
仕事が一区切りつくと、俺たちは二人であの思い出の丘へ向かった。
五年前、初めて二人でピクニックをしたお気に入りの場所だ。
大きな木の下に座り、眼下に広がる美しい領地を眺める。
黄金色に輝く麦畑、活気あふれる町、そして遠くにはキラキラと輝く湖。
全てが、俺たちのかけがえのない宝物だ。
「信じられるか、ユキ。かつてこの場所が、不毛の大地だったとは」
アシュトが、感慨深げにつぶやいた。
「ええ。でも、ここまで来られたのはアシュトと、ここに住むみんなのおかげです」
「……お前のおかげだ」
彼は、俺の手をそっと握りしめた。
「お前という至宝が、私の凍てついた世界に光と色彩を与えてくれた。感謝してもしきれない」
「俺の方こそ、感謝しています。あなたと出会えなければ、俺は今頃、絶望の底で消えていたでしょうから」
俺たちは、互いを見つめ合い微笑み合った。
あの日、勇者に裏切られ全てを失ったと思った。
でも、あの絶望があったからこそ俺はアシュトと出会い、本当の居場所を見つけることができた。
人生とは、何が幸いするか分からないものだ。
空が、夕焼けで茜色に染まり始める。
美しいグラデーションが、世界を優しく包み込んでいく。
「アシュト」
「なんだ?」
「俺、幸せです」
飾らない、心からの言葉だった。
アシュトは何も言わずに、俺の唇にそっと口づけた。
夕日よりも温かく、どんな言葉よりも雄弁な深い愛情が伝わってくるキスだった。
「私もだ、ユキ。お前がいる、この楽園が私の全てだ」
永い孤独を生きた魔王と、居場所を失った心優しき青年。
二人が出会って紡いだ物語は、これからも続いていく。
この、光と愛に満ちた楽園で、永遠に。
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